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No.??? 魔女の絵画
File:14 圧倒的質量
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何が起こった?ジョセフが生きているだけではない。奴に右腕を吹き飛ばされた。しかも右腕の断面に尋常ではない冷気が纏わりついている。炎で腕を作り出せない。再生させられない。
「心臓を狙ったんだが……やっぱ上手く行かねぇな」
「……何をした?」
「その新陳代謝が無駄に活発な脳味噌で考えてろよ」
次の瞬間、私の体はまたも何かに弾き飛ばされた。まるで自分と同程度の直径を持つ鉄球に押されているような重さ。そしてそれが、ピンポン玉が当たった程度の面積に乗せられている。成程これは確かに、勿体ぶった登場をしただけの威力がある。
大きく弾き飛ばされた先でまた追撃を受ける。私はそれを炎の壁で防ごうとするが、その弾丸は凄まじい速さでそれを突き破る。私は咄嗟に空気の壁を作り出すが、それでも衝撃で押される。
だが、見切ったぞ。私を攻撃しているのは血液の弾丸だ。ジョセフの血を操る魔術。ならば仕組みはごく単純。あの魔術は自身の血液を一つの物質のように、液体、気体、個体に変化させる事ができる。そして血の運動を操る事で、多様な戦術に対応する事ができる、使えれば便利な魔術。
恐らく奴は、熱運動を完全に停止させた状態の血を私に付着させ、個体にする事で、炎を打ち消す事ができると踏んだのだろう。成程確かにその通りだ。
不可解なのはこの質量。恐らく国立競技場中に巻いた血液を集め、強く圧縮する事で弾丸に変えている。そんな事ができるだけの魔力は、ジョセフには無かった筈だ。やはり先の二人以外にも敵が居ると見るべきか。
だがそれも問題無い。弾丸は全部で四つ。これだけの弾丸を作り出すのには相当な量の魔力を要する。恐らく先程の二人以外、魔力は殆ど残っていないだろう。更に先程から、ジョセフは動いていない上、新しく武器を作っている様子も無い。この弾丸さえ乗り越えれば、私の勝ちは確定する。
「ジョセフ。やはり貴様は失敗作だ」
私は右肩ごと、ジョセフの血液を抉り取り、炎の右腕を作り出す。そして空中に炎で足場を作り、ジョセフへ向かって一直線に跳び掛かる。確かに奴は、こちらが一定以上近付けないように弾丸を絶えず自分の周囲で動かし続けているが、加速できるだけの距離が無いせいで、弾丸の速度は私よりも遅い。届く。
しかし次の瞬間、私の体は雷鳴と共に、コンクリートの壁にぶち当たった。そして追撃と言わんばかりに、私の心臓へ血液の弾丸が襲い掛かる。私はそれを間一髪察知し、ギリギリ空気の壁でそれを阻んだ。
「私を忘れてもらっては困りますよ。ギルベールさん?」
リアムとやらか。先程の攻撃で暫く真面に動けないと思っていたんだが……成程。最低限動ければ良いと割り切り、体全体ではなく足と肺、足へ向かう主要な血管のみに治療を集中させたという事か。中々覚悟が決まっている。
「忘れてなどいない。後でしっかり殺すつもりだった」
「後回しなんて寂しいじゃないですか」
「ふむ。ならば先に殺してやろう」
私は血液の弾丸を逸らし、リアムに無数の炎の槍を飛ばす。奴はそれを見るや否や高速飛行を始めた。炎の槍は奴を追うが、やはり空中で消される。
そしてそれを目視した瞬間、煙草の匂いが鼻を掠めた。嫌な予感から飛び退くと、血液の弾丸が私の右足を抉り、そのまま空中へ飛んで行った。
「なんだ孫からの愛のプレゼントも受け取っちゃくれねぇのか?」
「なんと暴力的な愛だろうか」
「まだまだだぜ」
ジョセフはやはり派手な動きを見せない。この弾丸を操るのに集中しているのか?兎に角、ジョセフからの攻撃はこの弾丸のみと思って良さそうだ。ならば潰すのも容易い。私は地面に着地すると同時に、ジョセフに跳び掛かろうとした。
しかしやはり、それも防がれる。しかも今度は雷にではなく、鉄砲水に。私の両足は水の槍に貫かれ、その場所に固定されてしまった。
「黒猫……!」
「そんなセンス無いニックネームで呼ばないでよ。趣味じゃない」
不味い。一瞬動きが止まっただけでも、心臓に冷たい弾丸が突き刺さる。私は両足を自ら斬り落とし、炎で推進力を生みだす事で移動を続ける。
「あら便利」
「ですが頭上注意」
そして次の瞬間、私の頭を雷霆が貫いた。意識が一瞬遠退くが、私はそれを無理矢理現実に引き戻し、リアムを地面へ投げ付ける。奴は着地よりも先に再び上昇し、やはり大したダメージにはならない。
「小癪な……!」
「想定外ばっかで大分頭に血が上って来たか?」
「先ずはそのよく回る口から塞いでやろう」
私は空中で炎を操り、地上に炎の槍を降らせる。しかしリアムもジョセフも黒猫も、それぞれが攻撃を防ぎながら、次の攻撃の準備を整えている。
「Gáe Bolg!」「Keraunos!」
下からは水の槍が、上からは雷が襲い掛かって来る。私はそれを避けながら、ジョセフの血液の弾丸を裁き続ける。
このままでは押し切られるか?だが、ジョセフの攻撃にも目が慣れて来た。そして先程の攻撃の際、黒猫が自分を守る為に張ったのとは別に、魔術の防壁を作り出していた。恐らくその場所にソフィアたちは居る。状況は存外悪くなさそうだ。
「心臓を狙ったんだが……やっぱ上手く行かねぇな」
「……何をした?」
「その新陳代謝が無駄に活発な脳味噌で考えてろよ」
次の瞬間、私の体はまたも何かに弾き飛ばされた。まるで自分と同程度の直径を持つ鉄球に押されているような重さ。そしてそれが、ピンポン玉が当たった程度の面積に乗せられている。成程これは確かに、勿体ぶった登場をしただけの威力がある。
大きく弾き飛ばされた先でまた追撃を受ける。私はそれを炎の壁で防ごうとするが、その弾丸は凄まじい速さでそれを突き破る。私は咄嗟に空気の壁を作り出すが、それでも衝撃で押される。
だが、見切ったぞ。私を攻撃しているのは血液の弾丸だ。ジョセフの血を操る魔術。ならば仕組みはごく単純。あの魔術は自身の血液を一つの物質のように、液体、気体、個体に変化させる事ができる。そして血の運動を操る事で、多様な戦術に対応する事ができる、使えれば便利な魔術。
恐らく奴は、熱運動を完全に停止させた状態の血を私に付着させ、個体にする事で、炎を打ち消す事ができると踏んだのだろう。成程確かにその通りだ。
不可解なのはこの質量。恐らく国立競技場中に巻いた血液を集め、強く圧縮する事で弾丸に変えている。そんな事ができるだけの魔力は、ジョセフには無かった筈だ。やはり先の二人以外にも敵が居ると見るべきか。
だがそれも問題無い。弾丸は全部で四つ。これだけの弾丸を作り出すのには相当な量の魔力を要する。恐らく先程の二人以外、魔力は殆ど残っていないだろう。更に先程から、ジョセフは動いていない上、新しく武器を作っている様子も無い。この弾丸さえ乗り越えれば、私の勝ちは確定する。
「ジョセフ。やはり貴様は失敗作だ」
私は右肩ごと、ジョセフの血液を抉り取り、炎の右腕を作り出す。そして空中に炎で足場を作り、ジョセフへ向かって一直線に跳び掛かる。確かに奴は、こちらが一定以上近付けないように弾丸を絶えず自分の周囲で動かし続けているが、加速できるだけの距離が無いせいで、弾丸の速度は私よりも遅い。届く。
しかし次の瞬間、私の体は雷鳴と共に、コンクリートの壁にぶち当たった。そして追撃と言わんばかりに、私の心臓へ血液の弾丸が襲い掛かる。私はそれを間一髪察知し、ギリギリ空気の壁でそれを阻んだ。
「私を忘れてもらっては困りますよ。ギルベールさん?」
リアムとやらか。先程の攻撃で暫く真面に動けないと思っていたんだが……成程。最低限動ければ良いと割り切り、体全体ではなく足と肺、足へ向かう主要な血管のみに治療を集中させたという事か。中々覚悟が決まっている。
「忘れてなどいない。後でしっかり殺すつもりだった」
「後回しなんて寂しいじゃないですか」
「ふむ。ならば先に殺してやろう」
私は血液の弾丸を逸らし、リアムに無数の炎の槍を飛ばす。奴はそれを見るや否や高速飛行を始めた。炎の槍は奴を追うが、やはり空中で消される。
そしてそれを目視した瞬間、煙草の匂いが鼻を掠めた。嫌な予感から飛び退くと、血液の弾丸が私の右足を抉り、そのまま空中へ飛んで行った。
「なんだ孫からの愛のプレゼントも受け取っちゃくれねぇのか?」
「なんと暴力的な愛だろうか」
「まだまだだぜ」
ジョセフはやはり派手な動きを見せない。この弾丸を操るのに集中しているのか?兎に角、ジョセフからの攻撃はこの弾丸のみと思って良さそうだ。ならば潰すのも容易い。私は地面に着地すると同時に、ジョセフに跳び掛かろうとした。
しかしやはり、それも防がれる。しかも今度は雷にではなく、鉄砲水に。私の両足は水の槍に貫かれ、その場所に固定されてしまった。
「黒猫……!」
「そんなセンス無いニックネームで呼ばないでよ。趣味じゃない」
不味い。一瞬動きが止まっただけでも、心臓に冷たい弾丸が突き刺さる。私は両足を自ら斬り落とし、炎で推進力を生みだす事で移動を続ける。
「あら便利」
「ですが頭上注意」
そして次の瞬間、私の頭を雷霆が貫いた。意識が一瞬遠退くが、私はそれを無理矢理現実に引き戻し、リアムを地面へ投げ付ける。奴は着地よりも先に再び上昇し、やはり大したダメージにはならない。
「小癪な……!」
「想定外ばっかで大分頭に血が上って来たか?」
「先ずはそのよく回る口から塞いでやろう」
私は空中で炎を操り、地上に炎の槍を降らせる。しかしリアムもジョセフも黒猫も、それぞれが攻撃を防ぎながら、次の攻撃の準備を整えている。
「Gáe Bolg!」「Keraunos!」
下からは水の槍が、上からは雷が襲い掛かって来る。私はそれを避けながら、ジョセフの血液の弾丸を裁き続ける。
このままでは押し切られるか?だが、ジョセフの攻撃にも目が慣れて来た。そして先程の攻撃の際、黒猫が自分を守る為に張ったのとは別に、魔術の防壁を作り出していた。恐らくその場所にソフィアたちは居る。状況は存外悪くなさそうだ。
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