27 / 153
No.3 果実
File:17 平穏
しおりを挟む
「平和だねぇ……」
「そうだねぇ……朝一番に目にしたのが、玄関で倒れてるソフィアじゃなかったらだけどねぇ……」
「そうだねぇ……」
私はベッドに横たわっている状態で、エラニに介抱されている。命の危機を脱し、無事に家に帰って来た私は、玄関の鍵を閉めた所で意識を失った。そして、目を覚ました時にはベッドの上だ。
エラニが言うには、いつも通り私の家に遊びに来たが、返事は無く、表口だけでなく裏口まで鍵が閉まっていたので、仕方なくピッキングをして玄関を開けたそうだ。すると私が倒れていた。エラニは慌てて私の服を脱がして、ベッドへ運んだそうだ。
「ソフィア。なんであんな所に倒れてたの?凄く顔青かったし、体温も……」
「最近忙しくてね……寝不足だよ。貧血かな。それと疲れだろう」
「ふぅん……」
納得してない様子だね。まぁそうだろう。貧血と疲労でああなるとかもうかなり鬼気迫った状況だ。そんな状態になった私が、エラニに連絡しない訳が無い。まぁ、本当の理由を言う理由も無い訳だが。吸血鬼の友人に血液を与えたとか、実際言える訳が無い。
まぁ、言わなくても然したる問題は無い。疲労が溜まっているのも、寝不足なのも事実だ。嘘を吐いているとも、吐いていないとも言える。要するに、私は悪い事はしていない。大丈夫。
「そんな事よりエラニ。リンゴを剥くのは結構だけど、今日は何もしないのかい?」
「流石に今のソフィア相手に悪戯できないよ。取り敢えず消化に良い物は買って来たよ」
「自炊できたのかい?」
「できるよ。ある程度はね」
まぁそうか。一応一人暮らししている訳だし、できないと生活が成り立たないか。少しばかり見直したよ。真面に社会生活営めるのか怪しいと思ってたんだが……やっぱりこんな童顔でも、しっかりしてる子なんだよな。
そうだ。後でこれらの食事の代金払っておかないと。介抱してくれたお礼も兼ねて、少し多めに……
「ほらソフィア。できたよ。あったまると思うから早めに食べて」
「ありがとう。後でお金渡すよ」
「良いよ。いつも迷惑掛けてるお礼って思ってくれれば」
こうも至れり尽くせりだと、どうも違和感があるな。何せ普段が……いや、こう考えるのはよそう。流石に失礼だ。
「せっかく来てくれたのに、何もしてやれない。済まないね」
「大丈夫だよ。最近忙しかったなら、こういう日があっても良いと思うしね」
確かに、こんな風に休める日というのは中々貴重だ。堪能しておこう。あ~温かい。ほっこりする。
「どうせ来たんだし、話し相手になるよ?」
「ありがたいね。こうも疲れていると、話し相手が居るだけで気が休まるよ」
その後、私達はゆったりとした一日を過ごし、疲れた体を癒した。エラニは本当に、爆弾を仕掛けて行かなかった。
随分と、見くびられた物だと思う。ソフィアが何も言わない時は、追及されたくない時だって分かってるけど。それでも、何も勘付かれていないとでも思ったのかな。
「嘘吐くの、下手だよねぇ……」
そりゃ、私が上手いだなんて言わないけどさ。それでも、下手だと思う。
おかしい。休日なのに、扉を叩いてもソフィアから返事が無い。裏口……も空いてないみたい。出掛けてる?ソフィアが?こんな朝早くから?流石に無いと思うんだけど……
しょうがない。ピッキングして入ろう。鍵の造りはそこそこ古いし、今持っている針金だけでもできる筈。ここをこうして弄繰り回して……よし開いた。これで……
次の瞬間、背筋が凍ったような感覚が私を襲った。生きた心地がしないっていうのは、きっとああいう事を言うんだろう。
「ソフィア!?ソフィア大丈夫!?」
何でこんな事に……こんな事ならもっと早く、本当の事を言っておけば……
いや大丈夫だ。顔は青いし、体も冷たいけど、息はしている。目立った外傷も無い。大丈夫。取り敢えずソフィアの部屋のベッドまで運んで……いやその前に服を脱がした方が楽なんじゃ?でも流石に本人に許可無く……とか言ってる場合じゃないよね!
「ごめん!ソフィア!」
そう言って、ソフィアの首元のボタンに手を伸ばした時だった。そこに傷があるのに気が付いた。それも一つではない。小さな穴のような傷が二つ、首にあった。
なんでこんな所に傷が……位置とおおよそ深さから見て、周囲に血が付いててもおかしくない。なのに血は出てない。だけど処置されたような感じでもない。何故こんな……
いやそれより、今はソフィアを楽な状態にしてベッドに寝かせないと。えっとこことここのボタンを外して……寝かせたら何か食べ物を買って来よう。
これで取り敢えず、やれる事はやった。こうして見ると、ソフィアって結構がっしりしてるんだなぁ。筋トレの道具も無いのに、どこで鍛えてるんだろ。
「うぅ……」
「あ、ソフィア」
「エラニ?何で……て言うかここは……」
「玄関で倒れてたからここに運んだの。勝手に開錠したから、そこはごめん」
「そうか……うん。助かったよ」
無理してる……訳じゃない。ただそれでも、何かあったのは確実。何も無く、首にあんな、不自然な傷ができる訳が無い。
「ソフィア。なんであんな所に倒れてたの?凄く顔青かったし、体温も……」
「最近忙しくてね……寝不足だよ。貧血かな。それと疲れだろう」
「ふぅん……」
答える気は無し……こういう時は探るだけ無駄だ。今はなるべく、ソフィアが休めるようにしてあげよう。無理はさせないよう、安心できるよう、話し相手になってあげよう。
ソフィア。私はソフィアが何をしてるのかは知らない。だけど、守りたいって思ってるよ。私もいつか、本当の私を見せるから、だからいつか、ソフィアが抱える本当の事も、話してくれると嬉しいな。
「そうだねぇ……朝一番に目にしたのが、玄関で倒れてるソフィアじゃなかったらだけどねぇ……」
「そうだねぇ……」
私はベッドに横たわっている状態で、エラニに介抱されている。命の危機を脱し、無事に家に帰って来た私は、玄関の鍵を閉めた所で意識を失った。そして、目を覚ました時にはベッドの上だ。
エラニが言うには、いつも通り私の家に遊びに来たが、返事は無く、表口だけでなく裏口まで鍵が閉まっていたので、仕方なくピッキングをして玄関を開けたそうだ。すると私が倒れていた。エラニは慌てて私の服を脱がして、ベッドへ運んだそうだ。
「ソフィア。なんであんな所に倒れてたの?凄く顔青かったし、体温も……」
「最近忙しくてね……寝不足だよ。貧血かな。それと疲れだろう」
「ふぅん……」
納得してない様子だね。まぁそうだろう。貧血と疲労でああなるとかもうかなり鬼気迫った状況だ。そんな状態になった私が、エラニに連絡しない訳が無い。まぁ、本当の理由を言う理由も無い訳だが。吸血鬼の友人に血液を与えたとか、実際言える訳が無い。
まぁ、言わなくても然したる問題は無い。疲労が溜まっているのも、寝不足なのも事実だ。嘘を吐いているとも、吐いていないとも言える。要するに、私は悪い事はしていない。大丈夫。
「そんな事よりエラニ。リンゴを剥くのは結構だけど、今日は何もしないのかい?」
「流石に今のソフィア相手に悪戯できないよ。取り敢えず消化に良い物は買って来たよ」
「自炊できたのかい?」
「できるよ。ある程度はね」
まぁそうか。一応一人暮らししている訳だし、できないと生活が成り立たないか。少しばかり見直したよ。真面に社会生活営めるのか怪しいと思ってたんだが……やっぱりこんな童顔でも、しっかりしてる子なんだよな。
そうだ。後でこれらの食事の代金払っておかないと。介抱してくれたお礼も兼ねて、少し多めに……
「ほらソフィア。できたよ。あったまると思うから早めに食べて」
「ありがとう。後でお金渡すよ」
「良いよ。いつも迷惑掛けてるお礼って思ってくれれば」
こうも至れり尽くせりだと、どうも違和感があるな。何せ普段が……いや、こう考えるのはよそう。流石に失礼だ。
「せっかく来てくれたのに、何もしてやれない。済まないね」
「大丈夫だよ。最近忙しかったなら、こういう日があっても良いと思うしね」
確かに、こんな風に休める日というのは中々貴重だ。堪能しておこう。あ~温かい。ほっこりする。
「どうせ来たんだし、話し相手になるよ?」
「ありがたいね。こうも疲れていると、話し相手が居るだけで気が休まるよ」
その後、私達はゆったりとした一日を過ごし、疲れた体を癒した。エラニは本当に、爆弾を仕掛けて行かなかった。
随分と、見くびられた物だと思う。ソフィアが何も言わない時は、追及されたくない時だって分かってるけど。それでも、何も勘付かれていないとでも思ったのかな。
「嘘吐くの、下手だよねぇ……」
そりゃ、私が上手いだなんて言わないけどさ。それでも、下手だと思う。
おかしい。休日なのに、扉を叩いてもソフィアから返事が無い。裏口……も空いてないみたい。出掛けてる?ソフィアが?こんな朝早くから?流石に無いと思うんだけど……
しょうがない。ピッキングして入ろう。鍵の造りはそこそこ古いし、今持っている針金だけでもできる筈。ここをこうして弄繰り回して……よし開いた。これで……
次の瞬間、背筋が凍ったような感覚が私を襲った。生きた心地がしないっていうのは、きっとああいう事を言うんだろう。
「ソフィア!?ソフィア大丈夫!?」
何でこんな事に……こんな事ならもっと早く、本当の事を言っておけば……
いや大丈夫だ。顔は青いし、体も冷たいけど、息はしている。目立った外傷も無い。大丈夫。取り敢えずソフィアの部屋のベッドまで運んで……いやその前に服を脱がした方が楽なんじゃ?でも流石に本人に許可無く……とか言ってる場合じゃないよね!
「ごめん!ソフィア!」
そう言って、ソフィアの首元のボタンに手を伸ばした時だった。そこに傷があるのに気が付いた。それも一つではない。小さな穴のような傷が二つ、首にあった。
なんでこんな所に傷が……位置とおおよそ深さから見て、周囲に血が付いててもおかしくない。なのに血は出てない。だけど処置されたような感じでもない。何故こんな……
いやそれより、今はソフィアを楽な状態にしてベッドに寝かせないと。えっとこことここのボタンを外して……寝かせたら何か食べ物を買って来よう。
これで取り敢えず、やれる事はやった。こうして見ると、ソフィアって結構がっしりしてるんだなぁ。筋トレの道具も無いのに、どこで鍛えてるんだろ。
「うぅ……」
「あ、ソフィア」
「エラニ?何で……て言うかここは……」
「玄関で倒れてたからここに運んだの。勝手に開錠したから、そこはごめん」
「そうか……うん。助かったよ」
無理してる……訳じゃない。ただそれでも、何かあったのは確実。何も無く、首にあんな、不自然な傷ができる訳が無い。
「ソフィア。なんであんな所に倒れてたの?凄く顔青かったし、体温も……」
「最近忙しくてね……寝不足だよ。貧血かな。それと疲れだろう」
「ふぅん……」
答える気は無し……こういう時は探るだけ無駄だ。今はなるべく、ソフィアが休めるようにしてあげよう。無理はさせないよう、安心できるよう、話し相手になってあげよう。
ソフィア。私はソフィアが何をしてるのかは知らない。だけど、守りたいって思ってるよ。私もいつか、本当の私を見せるから、だからいつか、ソフィアが抱える本当の事も、話してくれると嬉しいな。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
月華後宮伝
織部ソマリ
キャラ文芸
★10/30よりコミカライズが始まりました!どうぞよろしくお願いします!
◆神託により後宮に入ることになった『跳ねっ返りの薬草姫』と呼ばれている凛花。冷徹で女嫌いとの噂がある皇帝・紫曄の妃となるのは気が進まないが、ある目的のために月華宮へ行くと心に決めていた。凛花の秘めた目的とは、皇帝の寵を得ることではなく『虎に変化してしまう』という特殊すぎる体質の秘密を解き明かすこと! だが後宮入り早々、凛花は紫曄に秘密を知られてしまう。しかし同じく秘密を抱えている紫曄は、凛花に「抱き枕になれ」と予想外なことを言い出して――?
◆第14回恋愛小説大賞【中華後宮ラブ賞】受賞。ありがとうございます!
◆旧題:月華宮の虎猫の妃は眠れぬ皇帝の膝の上 ~不本意ながらモフモフ抱き枕を拝命いたします~
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる