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No.7 天籟
File:12 腐食
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まだ夜が明けていないらしく、協会の廊下は閑散としている。お陰で、全速力で走っても安全だ。俺達は協会本部の廊下を駆けながら、今の状況について話している。
「で?ソフィアは今どういう状況なんだ?」
「絵画と接している部分から徐々に腐食が始まっている。既に腹と腕の皮膚は無くなり、肉が無くなり始めている」
「原因は?」
「現時点では不明だ。治癒魔術で腐食した部分を修復し、相殺しようと試みているが、今使える魔術師では、腐食する速度の方が上だ。腐食の進み具合からして、明日の……もう今日か。昼頃には内臓の大部分が腐り落ち、死に至るだろう」
腐食……確かにそれなら、外からの強度もある程度無視できる……のか?しかし今回の絵画はとんでもねぇな。今まで触れて来た絵画と違って、今回は放置されていた物を回収しているからか?協会って絵画の保管に結構気を遣ってたんだな。
協会本部の出口が見えた。俺達はそこを出て、神隠しの外へ繋がる門へ走る。まだ日は昇っていない。俺は感覚を調整しながら走り続け、同時にコートの内側に備えた武器へ手を伸ばす。
「対処法は?」
「今探っているが、確たる物は無い。医療班と絵画に関する知識を持った魔術師が解析し、対処法を探っている間、我々は例の林の中を探索し、そちらでも対処法を探る。既に私とお前以外の、作戦に参加した魔術師はここを出ている」
状況は把握した。効率良く林の中を探索するには……なるべく人前じゃ使いたくなかったんだが、言ってられる状況でもなさそうだ。俺は体の大部分を蝙蝠の群れへ変化させ、林へ向かって飛び立たせる。全身を蝙蝠にすれば探索の能率は下がるが、体の大部分を変化させた今の状態なら、俺の頭の中に直接情報を取り込める。
蝙蝠の数と林の広さを考えると、全域を捜索するのは骨が折れる。だが文句は言ってられねぇ。やるしか無ぇんだ覚悟を決めろ。
「隠し事はもう良いのか?」
「知らねぇ様だから教えてやる。どんなスーパーヒーローも自分のスーツを持ってるが、その下が知られねぇ事は無ぇんだぜ?」
「それは素晴らしい。是非とも我らX-MENに加入してくれたまえデッドプール」
「愛と自由と、画面の前の可愛い君を愛してるんでお断りだ」
手掛かりになりそうな物は無いか?林の中で、一際異様な物は……やっぱ奥の方へ行かなきゃ見付かんねぇか?だが俺は他の奴ら程の速度は出ねぇ。それに体の大部分を蝙蝠に変化させてる今の状態じゃ、四足獣相手でも苦労するだろう。
「リアム。戦闘になったら……」
「ならんから安心しろ」
「はぁ?」
俺が『何で言い切れるのか』と問おうとした瞬間、リアムの足元に魔法陣が現れた。俺は反射的に身構え、それが正解であったと安堵した。何故ならリアムの姿は、途轍も無い衝撃波とひび割れた地面を残して、林の奥の方へ消えて行ったからだ。体勢を崩した俺は地面へ転がり、一言呟く。
「バケモンかよ……」
その言葉が今更だと分かった時には、俺はもう立ち上がっている。
ジョセフはあの侍に勝てる程度には強いようだが、今回ばかりは戦闘ではなく探索に集中してもらわねば。にしてもあの蝙蝠……魔力をまるで感じなかった。どういう魔術だ?あぁいやいや、今はそこに考えを巡らせている暇は無い。ジョセフが通るであろう道の露払いを済ませなければ。
有象無象の骸骨は魔術の弾丸で潰せるが……進行方向上に四足獣三体、侍が一体。速度を落とす訳には行かない。このままの勢いで粉砕するか。私は魔術の斧を作り出し、軽く跳ぶと同時に振り被り、前方を薙ぎ払った。鋼鉄の数倍の質量と強度を付与された私の斧は、骸骨共を骨の粉末へ変貌させる。
速度はほぼ落ちていない。このまま最深部へ進む。何かあるとすれば絵画があった場所だろう。確証は無いが、あそこは空間の歪みが最も大きい場所だ。何があったとしてもそうおかしい事は無い。
少し走っていると、少し開けた場所に出た。絵画があったのはここの筈……魔力や、絵画が持つ独特の気配は感じない。当てが外れたか?この無限広がっているようにも思える林を探す破目になるとはツイてない。とは言えやるしか無い。さて、次はどの方向へ行こうか。
と、そう考えていた次の瞬間、横から何かが近付いてくる音がした。凄まじい速さだ。骸骨にしては速過ぎるが……新手だな。私は魔術の盾を作り出し、向かって来たそれへ向ける。
だが、対処が甘かった。衝撃を受け切れなかった私の体は、大きく後ろへ弾き飛ばされた。後ろに生えていた木へ背中をぶつけ、その強い衝撃のせいで全身が痺れる。どうやらかなり強力な個体のようだ。正直嘗めていた。
既に林の中へ姿を隠したか。素早く動く物の音と同時に、何かを引き摺るような音がするが……やはり魔力は感じない。中々厄介な敵だが……問題無い。私は痺れる体を立ち上がらせ、魔術で複数の武器と防具、壁を作り出す。
「さて……私もそろそろ、本気を出すか」
敵は一体。ならばいくらでもやりようはある。所詮意思を持たない骨の塊だ。簡単に骨の粉末へ変えてやる。
「で?ソフィアは今どういう状況なんだ?」
「絵画と接している部分から徐々に腐食が始まっている。既に腹と腕の皮膚は無くなり、肉が無くなり始めている」
「原因は?」
「現時点では不明だ。治癒魔術で腐食した部分を修復し、相殺しようと試みているが、今使える魔術師では、腐食する速度の方が上だ。腐食の進み具合からして、明日の……もう今日か。昼頃には内臓の大部分が腐り落ち、死に至るだろう」
腐食……確かにそれなら、外からの強度もある程度無視できる……のか?しかし今回の絵画はとんでもねぇな。今まで触れて来た絵画と違って、今回は放置されていた物を回収しているからか?協会って絵画の保管に結構気を遣ってたんだな。
協会本部の出口が見えた。俺達はそこを出て、神隠しの外へ繋がる門へ走る。まだ日は昇っていない。俺は感覚を調整しながら走り続け、同時にコートの内側に備えた武器へ手を伸ばす。
「対処法は?」
「今探っているが、確たる物は無い。医療班と絵画に関する知識を持った魔術師が解析し、対処法を探っている間、我々は例の林の中を探索し、そちらでも対処法を探る。既に私とお前以外の、作戦に参加した魔術師はここを出ている」
状況は把握した。効率良く林の中を探索するには……なるべく人前じゃ使いたくなかったんだが、言ってられる状況でもなさそうだ。俺は体の大部分を蝙蝠の群れへ変化させ、林へ向かって飛び立たせる。全身を蝙蝠にすれば探索の能率は下がるが、体の大部分を変化させた今の状態なら、俺の頭の中に直接情報を取り込める。
蝙蝠の数と林の広さを考えると、全域を捜索するのは骨が折れる。だが文句は言ってられねぇ。やるしか無ぇんだ覚悟を決めろ。
「隠し事はもう良いのか?」
「知らねぇ様だから教えてやる。どんなスーパーヒーローも自分のスーツを持ってるが、その下が知られねぇ事は無ぇんだぜ?」
「それは素晴らしい。是非とも我らX-MENに加入してくれたまえデッドプール」
「愛と自由と、画面の前の可愛い君を愛してるんでお断りだ」
手掛かりになりそうな物は無いか?林の中で、一際異様な物は……やっぱ奥の方へ行かなきゃ見付かんねぇか?だが俺は他の奴ら程の速度は出ねぇ。それに体の大部分を蝙蝠に変化させてる今の状態じゃ、四足獣相手でも苦労するだろう。
「リアム。戦闘になったら……」
「ならんから安心しろ」
「はぁ?」
俺が『何で言い切れるのか』と問おうとした瞬間、リアムの足元に魔法陣が現れた。俺は反射的に身構え、それが正解であったと安堵した。何故ならリアムの姿は、途轍も無い衝撃波とひび割れた地面を残して、林の奥の方へ消えて行ったからだ。体勢を崩した俺は地面へ転がり、一言呟く。
「バケモンかよ……」
その言葉が今更だと分かった時には、俺はもう立ち上がっている。
ジョセフはあの侍に勝てる程度には強いようだが、今回ばかりは戦闘ではなく探索に集中してもらわねば。にしてもあの蝙蝠……魔力をまるで感じなかった。どういう魔術だ?あぁいやいや、今はそこに考えを巡らせている暇は無い。ジョセフが通るであろう道の露払いを済ませなければ。
有象無象の骸骨は魔術の弾丸で潰せるが……進行方向上に四足獣三体、侍が一体。速度を落とす訳には行かない。このままの勢いで粉砕するか。私は魔術の斧を作り出し、軽く跳ぶと同時に振り被り、前方を薙ぎ払った。鋼鉄の数倍の質量と強度を付与された私の斧は、骸骨共を骨の粉末へ変貌させる。
速度はほぼ落ちていない。このまま最深部へ進む。何かあるとすれば絵画があった場所だろう。確証は無いが、あそこは空間の歪みが最も大きい場所だ。何があったとしてもそうおかしい事は無い。
少し走っていると、少し開けた場所に出た。絵画があったのはここの筈……魔力や、絵画が持つ独特の気配は感じない。当てが外れたか?この無限広がっているようにも思える林を探す破目になるとはツイてない。とは言えやるしか無い。さて、次はどの方向へ行こうか。
と、そう考えていた次の瞬間、横から何かが近付いてくる音がした。凄まじい速さだ。骸骨にしては速過ぎるが……新手だな。私は魔術の盾を作り出し、向かって来たそれへ向ける。
だが、対処が甘かった。衝撃を受け切れなかった私の体は、大きく後ろへ弾き飛ばされた。後ろに生えていた木へ背中をぶつけ、その強い衝撃のせいで全身が痺れる。どうやらかなり強力な個体のようだ。正直嘗めていた。
既に林の中へ姿を隠したか。素早く動く物の音と同時に、何かを引き摺るような音がするが……やはり魔力は感じない。中々厄介な敵だが……問題無い。私は痺れる体を立ち上がらせ、魔術で複数の武器と防具、壁を作り出す。
「さて……私もそろそろ、本気を出すか」
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