自称異世界最強浪人のチーター達と万屋始めました

マシュウ

文字の大きさ
112 / 138
チーターは冬の奇跡を実感したようです

冬のある日

しおりを挟む
 雪の降り積もる王都の中心とは言い難いが、中心にほど近いちょっとしたこの世界ではどこにでも見かけるような一軒家に、そんな寒い気分を吹き飛ばすような声が響いた。

「ただまー!」

「おっかえりー!ソウヤ!」

「おう、ソウヤ、いいとこ見つけれたか?」

「もちろん!俺を誰だと思ってるんだ?」

『………神?』

「そう……私は神だああああ!!って、そうじゃなくて」

「そのネタはもう、噛んで味のなくなったガムみたいな感じになってますよ」

「なぬ?結構これお気に入りだったんだけどなぁ」

「で、どこにするつもりですか?」

「おっ、そうそう、王さんに今から交渉しに行くつもりだけど一緒に来る人この指トーマレ!」

「何いってんだお前ら」

 俺がやらかした赤字を一瞬で戻したコイツらは、初めて会った時よりも一層手がつけられなくなっていた。

「何って、王様にこれから手土産と一緒にちょっと挨拶しに行くんだよ」

「おい待て、そんなあっさり入れるわけないだろ?」

 それを聞いたソウヤはニヤッと笑って、

「まあ見てろって」

 と言った。


























「よっす」

「あー!どうも!ソウヤさん達!今日はどんなご用ですか?」

「あーそれはだな、その前にこれどうだ?」

 ソウヤが暖かいココアを入れておいたボトルを門番に見せた。

「おっ!いつもすみませんねえ?………はぁー!これが一番あったまるんだよなぁ!」

「任せろってお前……賄賂じゃないか?」

「かー!賄賂って人聞きが悪い!俺は親切心でこの寒ーい雪の中、いつも頑張っている兵士の方々にあったかーいココアをボランティーヤで差し上げてるだけだが?」

「おう、いつもの事ながら鬱陶しい解説どうもありがとう」

「どーいたしまして」

 と、最早慣れたやり取りをしていると兵士が、

「フゥフゥ……で、なんのご用ですか?…ズズッ」

 と、一応兵士らしく聞いてきた。

「おう、ちょっと王様に挨拶を、な?」

「そうですか。ではお通りください」

 そしてアッサリと俺たちを通してしまった。

「ええ!?」

「何だよ、もうここは顔見知りがたくさんいるんだぜ?あっ、おーっす」

 ソウヤが手を振った先で鍛錬をしていた兵が顔を笑顔にしてこっちに手を振ってきた。

「お、お前なぁ……」

 あまりのソウヤの自由奔放さに俺は呆れてしまった。






「んで、到着っと、おーっす」

 ソウヤがさっきの兵と同じように声を掛けたのは、

「ブルブル、この寒さどうにかならんのか…おおっ!ソウヤ達ではないか!そろそろ来ると思っていたぞ!して、今回は何だ?」

「ハイハイ、今回は俺たちの国が誇る快適家具その名も『OKOTA』だ!」

 最早友達同士の話の流れで話しているこの国の最高権力者の王、その人であった。

「ちょっ!!すみません!王よ!私の店のものが…!」

 王は俺を見ると、

「良いのじゃ!わしが退屈しとったらいつも良いところにこやつらがいるから退屈せんでええからの」

「えっ?ちょっと、聞きたくないけどお前ら何回目だ?ここ来るの」

 ソウヤは肩をすくめて、やれやれと言った顔で、

「そんなの、数えきれるわけねえだろ?」

 俺はあまりの事に目眩がした。

「さて、ソウヤ、王にそろそろ本題を……」

 見かねたのか、法也が口を挟んできた。

「おっ、そうだったそうだった。王さん、今日来たのはこの王都の中央広場に馬鹿でかいツリーを置かせて欲しいんだな」

「なぬ?ツリーとな?なぜじゃ?」

 王は、ソウヤが持ってきた魔力で動く『OKOTA』とやらに魔力を注いでもらい、入りながらそう聞いた。

「おう、俺たちの故郷じゃあデヘル(12月)の25日にツリーの下に子供達へのプレゼントが届けられるんだ。で……………」





















「……成る程、事情はだいたい理解したぞ、分かったよし、中央広場の使用を許可する」

 王は『OKOTA』から顔を出して幸せそうな顔でそう言った。

 …………はっ!

「なあなあ、ソウヤ、王に向かって失礼を承知だけどあれってこつむ……」

「残念、コタツムリという概念は既に俺たちの故郷であっちゃうんだな、だから上手く言えたと思ったなら残念!」





 イラァ




「ん?何だ…………?ちょちょちょ!ギブギブ!ごめんって!」

 イラついた俺はソウヤにリョウヤから教わった関節技をガッチガチに決めていた。

「よ、よーし分かった!一旦帰ってツリーの準備をするか!」

 そして、ソウヤのその号令によって俺たちは一旦店へと戻るのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ― 異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。 強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。 ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる! ―作品について― 完結しました。 全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...