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チーターは冬の奇跡を実感したようです
冬のある日
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雪の降り積もる王都の中心とは言い難いが、中心にほど近いちょっとしたこの世界ではどこにでも見かけるような一軒家に、そんな寒い気分を吹き飛ばすような声が響いた。
「ただまー!」
「おっかえりー!ソウヤ!」
「おう、ソウヤ、いいとこ見つけれたか?」
「もちろん!俺を誰だと思ってるんだ?」
『………神?』
「そう……私は神だああああ!!って、そうじゃなくて」
「そのネタはもう、噛んで味のなくなったガムみたいな感じになってますよ」
「なぬ?結構これお気に入りだったんだけどなぁ」
「で、どこにするつもりですか?」
「おっ、そうそう、王さんに今から交渉しに行くつもりだけど一緒に来る人この指トーマレ!」
「何いってんだお前ら」
俺がやらかした赤字を一瞬で戻したコイツらは、初めて会った時よりも一層手がつけられなくなっていた。
「何って、王様にこれから手土産と一緒にちょっと挨拶しに行くんだよ」
「おい待て、そんなあっさり入れるわけないだろ?」
それを聞いたソウヤはニヤッと笑って、
「まあ見てろって」
と言った。
「よっす」
「あー!どうも!ソウヤさん達!今日はどんなご用ですか?」
「あーそれはだな、その前にこれどうだ?」
ソウヤが暖かいココアを入れておいたボトルを門番に見せた。
「おっ!いつもすみませんねえ?………はぁー!これが一番あったまるんだよなぁ!」
「任せろってお前……賄賂じゃないか?」
「かー!賄賂って人聞きが悪い!俺は親切心でこの寒ーい雪の中、いつも頑張っている兵士の方々にあったかーいココアをボランティーヤで差し上げてるだけだが?」
「おう、いつもの事ながら鬱陶しい解説どうもありがとう」
「どーいたしまして」
と、最早慣れたやり取りをしていると兵士が、
「フゥフゥ……で、なんのご用ですか?…ズズッ」
と、一応兵士らしく聞いてきた。
「おう、ちょっと王様に挨拶を、な?」
「そうですか。ではお通りください」
そしてアッサリと俺たちを通してしまった。
「ええ!?」
「何だよ、もうここは顔見知りがたくさんいるんだぜ?あっ、おーっす」
ソウヤが手を振った先で鍛錬をしていた兵が顔を笑顔にしてこっちに手を振ってきた。
「お、お前なぁ……」
あまりのソウヤの自由奔放さに俺は呆れてしまった。
「んで、到着っと、おーっす」
ソウヤがさっきの兵と同じように声を掛けたのは、
「ブルブル、この寒さどうにかならんのか…おおっ!ソウヤ達ではないか!そろそろ来ると思っていたぞ!して、今回は何だ?」
「ハイハイ、今回は俺たちの国が誇る快適家具その名も『OKOTA』だ!」
最早友達同士の話の流れで話しているこの国の最高権力者の王、その人であった。
「ちょっ!!すみません!王よ!私の店のものが…!」
王は俺を見ると、
「良いのじゃ!わしが退屈しとったらいつも良いところにこやつらがいるから退屈せんでええからの」
「えっ?ちょっと、聞きたくないけどお前ら何回目だ?ここ来るの」
ソウヤは肩をすくめて、やれやれと言った顔で、
「そんなの、数えきれるわけねえだろ?」
俺はあまりの事に目眩がした。
「さて、ソウヤ、王にそろそろ本題を……」
見かねたのか、法也が口を挟んできた。
「おっ、そうだったそうだった。王さん、今日来たのはこの王都の中央広場に馬鹿でかいツリーを置かせて欲しいんだな」
「なぬ?ツリーとな?なぜじゃ?」
王は、ソウヤが持ってきた魔力で動く『OKOTA』とやらに魔力を注いでもらい、入りながらそう聞いた。
「おう、俺たちの故郷じゃあデヘル(12月)の25日にツリーの下に子供達へのプレゼントが届けられるんだ。で……………」
「……成る程、事情はだいたい理解したぞ、分かったよし、中央広場の使用を許可する」
王は『OKOTA』から顔を出して幸せそうな顔でそう言った。
…………はっ!
「なあなあ、ソウヤ、王に向かって失礼を承知だけどあれってこつむ……」
「残念、コタツムリという概念は既に俺たちの故郷であっちゃうんだな、だから上手く言えたと思ったなら残念!」
イラァ
「ん?何だ…………?ちょちょちょ!ギブギブ!ごめんって!」
イラついた俺はソウヤにリョウヤから教わった関節技をガッチガチに決めていた。
「よ、よーし分かった!一旦帰ってツリーの準備をするか!」
そして、ソウヤのその号令によって俺たちは一旦店へと戻るのであった。
「ただまー!」
「おっかえりー!ソウヤ!」
「おう、ソウヤ、いいとこ見つけれたか?」
「もちろん!俺を誰だと思ってるんだ?」
『………神?』
「そう……私は神だああああ!!って、そうじゃなくて」
「そのネタはもう、噛んで味のなくなったガムみたいな感じになってますよ」
「なぬ?結構これお気に入りだったんだけどなぁ」
「で、どこにするつもりですか?」
「おっ、そうそう、王さんに今から交渉しに行くつもりだけど一緒に来る人この指トーマレ!」
「何いってんだお前ら」
俺がやらかした赤字を一瞬で戻したコイツらは、初めて会った時よりも一層手がつけられなくなっていた。
「何って、王様にこれから手土産と一緒にちょっと挨拶しに行くんだよ」
「おい待て、そんなあっさり入れるわけないだろ?」
それを聞いたソウヤはニヤッと笑って、
「まあ見てろって」
と言った。
「よっす」
「あー!どうも!ソウヤさん達!今日はどんなご用ですか?」
「あーそれはだな、その前にこれどうだ?」
ソウヤが暖かいココアを入れておいたボトルを門番に見せた。
「おっ!いつもすみませんねえ?………はぁー!これが一番あったまるんだよなぁ!」
「任せろってお前……賄賂じゃないか?」
「かー!賄賂って人聞きが悪い!俺は親切心でこの寒ーい雪の中、いつも頑張っている兵士の方々にあったかーいココアをボランティーヤで差し上げてるだけだが?」
「おう、いつもの事ながら鬱陶しい解説どうもありがとう」
「どーいたしまして」
と、最早慣れたやり取りをしていると兵士が、
「フゥフゥ……で、なんのご用ですか?…ズズッ」
と、一応兵士らしく聞いてきた。
「おう、ちょっと王様に挨拶を、な?」
「そうですか。ではお通りください」
そしてアッサリと俺たちを通してしまった。
「ええ!?」
「何だよ、もうここは顔見知りがたくさんいるんだぜ?あっ、おーっす」
ソウヤが手を振った先で鍛錬をしていた兵が顔を笑顔にしてこっちに手を振ってきた。
「お、お前なぁ……」
あまりのソウヤの自由奔放さに俺は呆れてしまった。
「んで、到着っと、おーっす」
ソウヤがさっきの兵と同じように声を掛けたのは、
「ブルブル、この寒さどうにかならんのか…おおっ!ソウヤ達ではないか!そろそろ来ると思っていたぞ!して、今回は何だ?」
「ハイハイ、今回は俺たちの国が誇る快適家具その名も『OKOTA』だ!」
最早友達同士の話の流れで話しているこの国の最高権力者の王、その人であった。
「ちょっ!!すみません!王よ!私の店のものが…!」
王は俺を見ると、
「良いのじゃ!わしが退屈しとったらいつも良いところにこやつらがいるから退屈せんでええからの」
「えっ?ちょっと、聞きたくないけどお前ら何回目だ?ここ来るの」
ソウヤは肩をすくめて、やれやれと言った顔で、
「そんなの、数えきれるわけねえだろ?」
俺はあまりの事に目眩がした。
「さて、ソウヤ、王にそろそろ本題を……」
見かねたのか、法也が口を挟んできた。
「おっ、そうだったそうだった。王さん、今日来たのはこの王都の中央広場に馬鹿でかいツリーを置かせて欲しいんだな」
「なぬ?ツリーとな?なぜじゃ?」
王は、ソウヤが持ってきた魔力で動く『OKOTA』とやらに魔力を注いでもらい、入りながらそう聞いた。
「おう、俺たちの故郷じゃあデヘル(12月)の25日にツリーの下に子供達へのプレゼントが届けられるんだ。で……………」
「……成る程、事情はだいたい理解したぞ、分かったよし、中央広場の使用を許可する」
王は『OKOTA』から顔を出して幸せそうな顔でそう言った。
…………はっ!
「なあなあ、ソウヤ、王に向かって失礼を承知だけどあれってこつむ……」
「残念、コタツムリという概念は既に俺たちの故郷であっちゃうんだな、だから上手く言えたと思ったなら残念!」
イラァ
「ん?何だ…………?ちょちょちょ!ギブギブ!ごめんって!」
イラついた俺はソウヤにリョウヤから教わった関節技をガッチガチに決めていた。
「よ、よーし分かった!一旦帰ってツリーの準備をするか!」
そして、ソウヤのその号令によって俺たちは一旦店へと戻るのであった。
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追記:2025/09/20
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コメント頂けるとするかもしれないです。
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