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チーターは冬の奇跡を実感したようです
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「……だだまー」
「おっ!帰って来たなソウヤ………!あれ?何処行くんだ?」
「……広場だ」
「………おう………」
ソウヤはそれっきり何も話さずバタンと雪の降る扉の向こうへと消えて行ってしまった。
「……何だ?あいつらしくもない……」
俺は視線で兄弟の説明を仰いだ。
「………さっき話したあれで勘弁していただけませんかね?」
「………ヤッパダメか?」
「……ダメですね」
「…………」
俺は次男のホウヤが言った言葉で納得はしていなかった。
それは確かにソウヤの心をえぐることかもしれないが、
「……仲間の俺達には知る権利は無いってか?」
「………ふぅ、仕方ありません…でしょうかねぇ?」
ホウヤはため息を一つつくと他の兄弟を見回した。
リョウヤは頷き遠くを見るような目になり、
ゾウヤは諦めたように笑って、
疾い方のソウヤは目を瞑った。
「……では話すとしましょうかね?
そうですねぇ……アレは前の神王達を殺すところから始まりますねぇ……」
「いきなり話がぶっ飛んでるね?」
シルヴィが頬杖をつきながらそう言った。
「……貴方達ならご存知でしょうに……」
ホウヤは憎い敵を見るような目をシルヴィに送った。
部屋は暖房が効いて暖かいはずなのに、一気に温度が下がったような感じがした。
そんな視線を送られているにもかかわらず、当の本人は見た目は冷静だったが額に流れる冷や汗が緊張を物語っていた。
「……ホーヤ」
ゾウヤがホウヤを嗜めるとホウヤは、
「すみません……少し……取り乱しました」
ホウヤはぺこりと頭を下げた。
「い……いいんだよ別に、ボクも少し不注意だったさ」
ホウヤはまだ何か言いたそうだったが、他の兄弟が目で牽制した。
「………ふぅ、一体何の話さねぇ?一体あたし達が何したっていうのさねぇ?」
とのセ姐の声で、収まりかけていた空気が完全に崩壊するのを感じた。
「………貴方達が!あの時!!ゾウヤの作った列車を!!無断で!!動かして!!何処かに行っていなかったら!!シェーンさんは!!あんな風に!!!!!ならなくても良かったんですよ!!!」
空気が爆発した。
部屋の中身はグッチャグチャになり、俺達も少なからず怪我をしていた。
…………はずだった。
あまりの殺気にどうやら自分達は錯覚していたようだ。
「ホウヤ、気持ちは分かるけどもな?終わった事やし、そんなにみみっちいこと言ってたら皆んなに嫌われんで?」
誰が言っているのかと思えば、ゾウヤがいつも腕につけているリングを光らせて、どういう原理かは分からないが、ホウヤの力の向きと逆方向に力をかけていた。
その他の兄弟は腕を組んだまま動かずだった。
「それにな?関係のないノウンとか、エルナとか、ノエルとか傷つけてどーすんねん?しっかりしろや次男」
「……くっ………」
ホウヤはゾウヤを見ると腕を組んで椅子に座った。
にしても、ホウヤが怒るところなんざ初めて見たかもしれない。
そして、謎の方言を話すゾウヤも。
俺はこう見えてもこいつらは俺に隠していることがまだまだある、と言うことをまざまざと見せつけて来た。
「……私から話す事は何もありません……貴方達で話してください」
「ホー……」
「構わんだろう。別にこいつが嫌だからと言って俺達が話しても大差はない」
久々のソウヤの声を聞いた俺は少し驚きつつ、
「じゃあ、話してくれるか?」
といった。
「……うむ、前の神王達を殺すというのはさっき言ったよな?」
ソウヤの代わりにリョウヤが後を継いで話し始めた。
「あの時は、俺達はまだ神にもなっていないただの人間だったんだよ、で、そんときに一緒に神王を殺そうとしたメンバーが結構いるんだが、お前らが知っているのでは、
シャル、アドルフ、テスリア、ザノール、メルタナ、オズマ、メグミ、アドミー、ズナタア、そしてハデス………」
俺はそこまで聞いて思いついたのが、
「現神王?」
「正しく、今の神王と呼ばれるやつらが率いる軍隊とか兵団とかで戦いに行ったんだよな」
「成る程、そんな過去がお前らにはあったわけだな?」
「そう、で、実はだな神王の席は12席あるんだな」
「12?逸話では10席だけしか無かったぞ?」
リョウヤは苦々しげに首を振った。
「それは残り2席を巡って争いが起こるのを防ぐために俺たちがそういう風に流したんだ」
「ふむふむ」
「そして、そのかいあってか争いは起こることなく平穏に今まで来たってわけだ」
「……ふむふむ、で、肝心な残りの2席には誰が座る予定なんだ?」
リョウヤは顔をしかめた。
「うーむ……誰にも言わないって約束できるか?」
そこにいるみんなに向けての言葉だった。
俺含め一同は首を縦に振った。
「……残り2席は実はもう埋まってるんだよ」
「は?それじゃああべこべじゃあないか?」
「ああ、その通りだとも、埋まってはいるが、活動ができない状態なんだ」
「そーいうことか」
俺は首を縦に振った。
「そして、2席なんだが一人は、
愛と自由の女神 シェーン
もう一人は、
希望と虚無の神 ガスター
だ」
またまた臭い名前の神達だった。
「こいつらも前のクソ神王達をぶっ殺す為に手伝ってくれた奴らだった。そう、全てはうまくいくはずだったんだ」
「筈だった?」
「あぁ、全ての神王を倒した後、その神王達がいた空間は虚無へと還るんだが、そこから脱出するのに俺たちが一度乗ったことのある列車、覚えてるか?」
「覚えるも何も、今朝もバリバリ追いかけて来てくれていましたよ」
「ハッハッハ!そう、あの列車だ!アレは作る方のソウヤはが発案して、改良はゾウヤが行った超高性能型列車何だ、アレがあれば虚無空間を自由に行き来出来るんだが、時間の都合上一組だけしかなかったんだ」
「……大体話が見えて来たけど……」
リョウヤは興奮したようになっていて、こいつも暴走するんじゃないかと気が気じゃ無かったが、リョウヤは続けた。
「神王達を全員ぶっ殺してさて、撤収地点まで来た俺たちは驚いた!
何と俺たちが到着したと同時に誰が物好きな奴らがつけて来ていて、虚無空間から脱出できないからと言って、無断で!一言もなく!俺たちを待たずに!
列車に乗って脱出して行った奴らが居たんだよ!!」
シルヴィ達は静かにその声を聞いて居た。
「そして、脱出の手段が無くなったと思った矢先、そのシェーンが自分が犠牲になることで、家に帰れる、と言い出したんだよ!」
「…………」
俺は黙って話を事の顛末が話されるのを待った。
「分かると思うがソウヤ、あいつの事だ!そんなので来るわけねぇだろ!って言ったさ!だが、シェーンは俺たちの制止も聞かず、やりやがったんだよ、俺達は事なきを得たがシェーンは虚無空間に散らばっちまった………」
そう言って、リョウヤはゆっくりと声のトーンを落とした。
「そして、ガスターはあいつの性質上、シェーンを集めることができると言ってあいつも………」
「虚無空間に飛び込んだ……と」
「………」
リョウヤは無言で肯定した。
「で、ホウヤはその物好きな奴らがシルヴィ達だと思ってるってわけか?」
「………」
こちらも無言の肯定だった。
「何で……だったら何で今の今まで仲良くやってたんだよ?」
「それは………はぁ」
リョウヤは溜息をついた。
「ソウヤだよ」
「は?」
さっきまで光り輝いていた腕輪の光は収まり、ゾウヤは話に入ってきた。
「あいつが、たぶん独り言だったんだろうね?ポロっと言ったんだよ。
『全く、相変わらず困った物好き達だ』
ってね?」
口調も元に戻ったゾウヤはそう言った。
だが、俺にはそれがシルヴィ達の死刑宣告に聞こえた。
「で、もちろん俺ちゃん達もソウヤに言ったよ?
『許してあげるの?』
ってね?
そしたらねぇ、ソウヤはなんて言ったと思う?
『過去の話だからそんなもんな囚われてたらバカみたいだろ?シェーンとガスターもきっと許してくれるだろうさ』
だったよ。
相変わらずお人好しすぎるというか……」
シルヴィ達はまだ黙ったままだった。
「でも、ホウヤはそうは思ってないみたいだね?
自分達に協力することもせず、好奇心だけで危険なところに来た挙句自分達の命綱をかっさらって行って、仲間の二人を死なせたも同然にした人たちだからねぇ?」
「………」
まだシルヴィ達は黙って居た。
「貴方達!いい加減に!!」
「もういい、そこまでだ」
扉の前には頭や肩に雪が積もったソウヤが立って居た。
「……ソウヤ……貴方は本当にそれでいいんですか?」
「……はぁ」
ソウヤは頭や肩に積もった雪を外で払い落としながら中に入って来た。
「いつまでも過去にウジウジするなとは言ったものの、一番俺がウジウジしてるからなぁ」
と言って、下を向いて俯いているシルヴィの前に椅子を持って来て座った。
「そりゃ、俺だってあんときゃ怒ったさ」
シルヴィはビクッと体を震わせた。
「………『恩には恩で報いるべき』これは俺が尊敬した生き方をした人?が言ったセリフだ」
シルヴィは恐る恐る顔を上げた。
「………変わり過ぎてて気がつかなかったんだなぁ、なぁ?可愛い可愛いお嬢さん?」
それがソウヤとシルヴィの間でどんな意味を持つのか分からなかったが、それはとても特別なことだったな違いない。
それを聞いたシルヴィは目から涙をボロボロ流して、
「覚えて…………たんだ………ううっっ!!」
そして、それは喜びの言葉から、許しをこう言葉へとなっていた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい!!」
それを聞いたソウヤの顔は穏やかなものだった。
「まぁ、気づくのが遅くなったのは許してくれよ?」
と言って、他の兄弟もチラッと見た。
「俺達にも言えと?」
「あったりまえだのクラッカー」
「……はぁ、古いですよそれは……では改めまして、お久しぶりですねぇ?皆さん?」
『!?』
「久しぶりだな、クロエ」
「!」
「………覚えてるかなぁ………?久し………はじめまして、かな?
アーミリア?」
「……」
「…………」
「…………」
唯一リョウヤとフィーナだけが無言だったが、
「テーレールーナーヨー!!」
とのソウヤの御達しがあり、
「その………なんだ………久しぶりだな……クィネラ」
「その言葉がずっとききたかったのですよぅ!!」
ひしっとリョウヤにしがみついたフィーナは泣き崩れた。
いや、フィーナだけでなく、セ姐、ヨウ姐、までもが泣き崩れてた。
「あ、あのーーいつからお知り合いだったんですか?」
この空気についていけず、置いてけぼりだったフィアリアが当然のことを口にした。
「いつからって……」
「ボク達が後を追いかけ始める前にだから……」
「………昔々?」
「正確には?」
「わからん、多すぎて」
ポカーンとはまさしくこの時に使う擬音語だろう。
うむ。
「あのーホウヤさんは皆さんとお知り合いだったんですか?」
「……まぁ、ある意味では、そうですねぇ?私がこの人達を監視していたんですからねぇ?」
「か、監視?」
「ええ、私達の旅に邪魔が入らないようにする為に私は常に第三者視点で私達の旅を見て来たのですよ。その時に皆さんと一度お会いしたのですが……皆さんが変わりすぎていたのでもしやと、思っていたのですが………」
「あー」
たしかに、魔女達は姿が変わることができるからなー。
こうして、ワイワイしながら昔の話に花を咲かせながらソウヤとリョウヤが作った晩飯兼おつまみに手を出していると、
ゴーンゴーン
と、夜の12時を知らせる鐘がなった。
「……じゃあ俺ちょっと……」
と言って、ソウヤは立ち上がった。
シルヴィとノエルもそれに従って立とうとしたが、シルヴィはちょっとが分かったのか、立ち上がりかけた腰をまた、椅子へと下ろして、
「ノエル?今日はボク達はお留守番しとこっか……」
と言った。
ノエルも何かを感じたのか、
「うん」
と言ってホウヤの方へと構いに行った。
「……すまんな……」
ソウヤはそう言ってシルヴィに微笑んだ。
「ううん、ボクの方がごめんね?」
ふっ、とソウヤは笑ってまだまだ雪が降る外へと出て行った。
「おっ!帰って来たなソウヤ………!あれ?何処行くんだ?」
「……広場だ」
「………おう………」
ソウヤはそれっきり何も話さずバタンと雪の降る扉の向こうへと消えて行ってしまった。
「……何だ?あいつらしくもない……」
俺は視線で兄弟の説明を仰いだ。
「………さっき話したあれで勘弁していただけませんかね?」
「………ヤッパダメか?」
「……ダメですね」
「…………」
俺は次男のホウヤが言った言葉で納得はしていなかった。
それは確かにソウヤの心をえぐることかもしれないが、
「……仲間の俺達には知る権利は無いってか?」
「………ふぅ、仕方ありません…でしょうかねぇ?」
ホウヤはため息を一つつくと他の兄弟を見回した。
リョウヤは頷き遠くを見るような目になり、
ゾウヤは諦めたように笑って、
疾い方のソウヤは目を瞑った。
「……では話すとしましょうかね?
そうですねぇ……アレは前の神王達を殺すところから始まりますねぇ……」
「いきなり話がぶっ飛んでるね?」
シルヴィが頬杖をつきながらそう言った。
「……貴方達ならご存知でしょうに……」
ホウヤは憎い敵を見るような目をシルヴィに送った。
部屋は暖房が効いて暖かいはずなのに、一気に温度が下がったような感じがした。
そんな視線を送られているにもかかわらず、当の本人は見た目は冷静だったが額に流れる冷や汗が緊張を物語っていた。
「……ホーヤ」
ゾウヤがホウヤを嗜めるとホウヤは、
「すみません……少し……取り乱しました」
ホウヤはぺこりと頭を下げた。
「い……いいんだよ別に、ボクも少し不注意だったさ」
ホウヤはまだ何か言いたそうだったが、他の兄弟が目で牽制した。
「………ふぅ、一体何の話さねぇ?一体あたし達が何したっていうのさねぇ?」
とのセ姐の声で、収まりかけていた空気が完全に崩壊するのを感じた。
「………貴方達が!あの時!!ゾウヤの作った列車を!!無断で!!動かして!!何処かに行っていなかったら!!シェーンさんは!!あんな風に!!!!!ならなくても良かったんですよ!!!」
空気が爆発した。
部屋の中身はグッチャグチャになり、俺達も少なからず怪我をしていた。
…………はずだった。
あまりの殺気にどうやら自分達は錯覚していたようだ。
「ホウヤ、気持ちは分かるけどもな?終わった事やし、そんなにみみっちいこと言ってたら皆んなに嫌われんで?」
誰が言っているのかと思えば、ゾウヤがいつも腕につけているリングを光らせて、どういう原理かは分からないが、ホウヤの力の向きと逆方向に力をかけていた。
その他の兄弟は腕を組んだまま動かずだった。
「それにな?関係のないノウンとか、エルナとか、ノエルとか傷つけてどーすんねん?しっかりしろや次男」
「……くっ………」
ホウヤはゾウヤを見ると腕を組んで椅子に座った。
にしても、ホウヤが怒るところなんざ初めて見たかもしれない。
そして、謎の方言を話すゾウヤも。
俺はこう見えてもこいつらは俺に隠していることがまだまだある、と言うことをまざまざと見せつけて来た。
「……私から話す事は何もありません……貴方達で話してください」
「ホー……」
「構わんだろう。別にこいつが嫌だからと言って俺達が話しても大差はない」
久々のソウヤの声を聞いた俺は少し驚きつつ、
「じゃあ、話してくれるか?」
といった。
「……うむ、前の神王達を殺すというのはさっき言ったよな?」
ソウヤの代わりにリョウヤが後を継いで話し始めた。
「あの時は、俺達はまだ神にもなっていないただの人間だったんだよ、で、そんときに一緒に神王を殺そうとしたメンバーが結構いるんだが、お前らが知っているのでは、
シャル、アドルフ、テスリア、ザノール、メルタナ、オズマ、メグミ、アドミー、ズナタア、そしてハデス………」
俺はそこまで聞いて思いついたのが、
「現神王?」
「正しく、今の神王と呼ばれるやつらが率いる軍隊とか兵団とかで戦いに行ったんだよな」
「成る程、そんな過去がお前らにはあったわけだな?」
「そう、で、実はだな神王の席は12席あるんだな」
「12?逸話では10席だけしか無かったぞ?」
リョウヤは苦々しげに首を振った。
「それは残り2席を巡って争いが起こるのを防ぐために俺たちがそういう風に流したんだ」
「ふむふむ」
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「……ふむふむ、で、肝心な残りの2席には誰が座る予定なんだ?」
リョウヤは顔をしかめた。
「うーむ……誰にも言わないって約束できるか?」
そこにいるみんなに向けての言葉だった。
俺含め一同は首を縦に振った。
「……残り2席は実はもう埋まってるんだよ」
「は?それじゃああべこべじゃあないか?」
「ああ、その通りだとも、埋まってはいるが、活動ができない状態なんだ」
「そーいうことか」
俺は首を縦に振った。
「そして、2席なんだが一人は、
愛と自由の女神 シェーン
もう一人は、
希望と虚無の神 ガスター
だ」
またまた臭い名前の神達だった。
「こいつらも前のクソ神王達をぶっ殺す為に手伝ってくれた奴らだった。そう、全てはうまくいくはずだったんだ」
「筈だった?」
「あぁ、全ての神王を倒した後、その神王達がいた空間は虚無へと還るんだが、そこから脱出するのに俺たちが一度乗ったことのある列車、覚えてるか?」
「覚えるも何も、今朝もバリバリ追いかけて来てくれていましたよ」
「ハッハッハ!そう、あの列車だ!アレは作る方のソウヤはが発案して、改良はゾウヤが行った超高性能型列車何だ、アレがあれば虚無空間を自由に行き来出来るんだが、時間の都合上一組だけしかなかったんだ」
「……大体話が見えて来たけど……」
リョウヤは興奮したようになっていて、こいつも暴走するんじゃないかと気が気じゃ無かったが、リョウヤは続けた。
「神王達を全員ぶっ殺してさて、撤収地点まで来た俺たちは驚いた!
何と俺たちが到着したと同時に誰が物好きな奴らがつけて来ていて、虚無空間から脱出できないからと言って、無断で!一言もなく!俺たちを待たずに!
列車に乗って脱出して行った奴らが居たんだよ!!」
シルヴィ達は静かにその声を聞いて居た。
「そして、脱出の手段が無くなったと思った矢先、そのシェーンが自分が犠牲になることで、家に帰れる、と言い出したんだよ!」
「…………」
俺は黙って話を事の顛末が話されるのを待った。
「分かると思うがソウヤ、あいつの事だ!そんなので来るわけねぇだろ!って言ったさ!だが、シェーンは俺たちの制止も聞かず、やりやがったんだよ、俺達は事なきを得たがシェーンは虚無空間に散らばっちまった………」
そう言って、リョウヤはゆっくりと声のトーンを落とした。
「そして、ガスターはあいつの性質上、シェーンを集めることができると言ってあいつも………」
「虚無空間に飛び込んだ……と」
「………」
リョウヤは無言で肯定した。
「で、ホウヤはその物好きな奴らがシルヴィ達だと思ってるってわけか?」
「………」
こちらも無言の肯定だった。
「何で……だったら何で今の今まで仲良くやってたんだよ?」
「それは………はぁ」
リョウヤは溜息をついた。
「ソウヤだよ」
「は?」
さっきまで光り輝いていた腕輪の光は収まり、ゾウヤは話に入ってきた。
「あいつが、たぶん独り言だったんだろうね?ポロっと言ったんだよ。
『全く、相変わらず困った物好き達だ』
ってね?」
口調も元に戻ったゾウヤはそう言った。
だが、俺にはそれがシルヴィ達の死刑宣告に聞こえた。
「で、もちろん俺ちゃん達もソウヤに言ったよ?
『許してあげるの?』
ってね?
そしたらねぇ、ソウヤはなんて言ったと思う?
『過去の話だからそんなもんな囚われてたらバカみたいだろ?シェーンとガスターもきっと許してくれるだろうさ』
だったよ。
相変わらずお人好しすぎるというか……」
シルヴィ達はまだ黙ったままだった。
「でも、ホウヤはそうは思ってないみたいだね?
自分達に協力することもせず、好奇心だけで危険なところに来た挙句自分達の命綱をかっさらって行って、仲間の二人を死なせたも同然にした人たちだからねぇ?」
「………」
まだシルヴィ達は黙って居た。
「貴方達!いい加減に!!」
「もういい、そこまでだ」
扉の前には頭や肩に雪が積もったソウヤが立って居た。
「……ソウヤ……貴方は本当にそれでいいんですか?」
「……はぁ」
ソウヤは頭や肩に積もった雪を外で払い落としながら中に入って来た。
「いつまでも過去にウジウジするなとは言ったものの、一番俺がウジウジしてるからなぁ」
と言って、下を向いて俯いているシルヴィの前に椅子を持って来て座った。
「そりゃ、俺だってあんときゃ怒ったさ」
シルヴィはビクッと体を震わせた。
「………『恩には恩で報いるべき』これは俺が尊敬した生き方をした人?が言ったセリフだ」
シルヴィは恐る恐る顔を上げた。
「………変わり過ぎてて気がつかなかったんだなぁ、なぁ?可愛い可愛いお嬢さん?」
それがソウヤとシルヴィの間でどんな意味を持つのか分からなかったが、それはとても特別なことだったな違いない。
それを聞いたシルヴィは目から涙をボロボロ流して、
「覚えて…………たんだ………ううっっ!!」
そして、それは喜びの言葉から、許しをこう言葉へとなっていた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい!!」
それを聞いたソウヤの顔は穏やかなものだった。
「まぁ、気づくのが遅くなったのは許してくれよ?」
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「俺達にも言えと?」
「あったりまえだのクラッカー」
「……はぁ、古いですよそれは……では改めまして、お久しぶりですねぇ?皆さん?」
『!?』
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「!」
「………覚えてるかなぁ………?久し………はじめまして、かな?
アーミリア?」
「……」
「…………」
「…………」
唯一リョウヤとフィーナだけが無言だったが、
「テーレールーナーヨー!!」
とのソウヤの御達しがあり、
「その………なんだ………久しぶりだな……クィネラ」
「その言葉がずっとききたかったのですよぅ!!」
ひしっとリョウヤにしがみついたフィーナは泣き崩れた。
いや、フィーナだけでなく、セ姐、ヨウ姐、までもが泣き崩れてた。
「あ、あのーーいつからお知り合いだったんですか?」
この空気についていけず、置いてけぼりだったフィアリアが当然のことを口にした。
「いつからって……」
「ボク達が後を追いかけ始める前にだから……」
「………昔々?」
「正確には?」
「わからん、多すぎて」
ポカーンとはまさしくこの時に使う擬音語だろう。
うむ。
「あのーホウヤさんは皆さんとお知り合いだったんですか?」
「……まぁ、ある意味では、そうですねぇ?私がこの人達を監視していたんですからねぇ?」
「か、監視?」
「ええ、私達の旅に邪魔が入らないようにする為に私は常に第三者視点で私達の旅を見て来たのですよ。その時に皆さんと一度お会いしたのですが……皆さんが変わりすぎていたのでもしやと、思っていたのですが………」
「あー」
たしかに、魔女達は姿が変わることができるからなー。
こうして、ワイワイしながら昔の話に花を咲かせながらソウヤとリョウヤが作った晩飯兼おつまみに手を出していると、
ゴーンゴーン
と、夜の12時を知らせる鐘がなった。
「……じゃあ俺ちょっと……」
と言って、ソウヤは立ち上がった。
シルヴィとノエルもそれに従って立とうとしたが、シルヴィはちょっとが分かったのか、立ち上がりかけた腰をまた、椅子へと下ろして、
「ノエル?今日はボク達はお留守番しとこっか……」
と言った。
ノエルも何かを感じたのか、
「うん」
と言ってホウヤの方へと構いに行った。
「……すまんな……」
ソウヤはそう言ってシルヴィに微笑んだ。
「ううん、ボクの方がごめんね?」
ふっ、とソウヤは笑ってまだまだ雪が降る外へと出て行った。
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とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
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#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
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追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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