Two Runner

マシュウ

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ウエスタンな異世界

バカとアホ

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「いやー、テーマパークに来たみたいだなぁ、テンション上がるなぁ……何て言えたら良きだったんだけどなぁ」

 ドゴッ!

「いっ!……全くこんな事になるなら、とっちーも誘えばよかったなぁ……っしゃおらぁ!」

 ドン!

「オドゥルフ!」

 変な声を出して転がった兄は、周りを見ました。

「何でこいな所にゴブリン達がおんねん!」

「アァー!!」

「あぶっ!」

 またまたすんでの所で、攻撃をかわしたわした兄だったが、日々の運動不足がたたって現在筋肉痛だった。

「あったたた……とっちー、助けてー」

 破れかぶれに兄は林に向かって言ったが、返事は当然返って来なかった。

「はぁ……めんどくさー……」

 兄は不機嫌そうに立ち上がると、数分前の事を思い出していた。













「ふーん?そこがコースってことか」

「うん、この森を突っ切って、鉱山の周りを迂回して渓谷を進んでそしてこのトンネルを抜けたらゴールよ」

「へえへえ、鉱山ってあのゴブリン達がいた所っすか?」

「うん……でも、討伐隊の人たちが行って見てきたみたいだけど、もうゴブリン達はいなかったらしいよ、それもフジワラのお陰ね、ありがとう」

「いえいえ、オッケー……他の所も討伐隊の人たちは見たんすか?」

「いいえ?だって必要ないもの、そこら辺は魔物とかは一切でないの、今までそんな事なかったし」

「なるほどなぁ……貴重な時間をありがとうございました」

「そんな!畏まらないで?もしかしたら私、フジワラ達がいなかったらここにはいなかったのかもしれないのに……」

「……じゃあ失礼します」

 と、リーチェから事情を聞いた兄はこーすを一周見て回る事にした。

 そして、町を出て線路沿いを歩いて森に入った瞬間、ゴブリンと鉢合わせた。

「さーて、いるかなぁ?」

「ウガウガ……」

「は?」

「ウガ?」

 そして、話は冒頭に戻る。

「めんどくせぇめんどくせぇ、勉強並みにめんどくせぇ、めんどくせぇのはしたくないんだけど」

 兄はゴブリンの攻撃を避けながら武器になりそうなものを探した。

 そして、周りに特にないのを確認すると、地面がある程度乾燥しているのを確認して、足があまり上がらないので、少し距離をとって土を思いっきり蹴り上げた。

「ウガッ!?」

 土はそれほど高く上がらなかったが、ゴブリンの背が低いことが幸いして、うまい具合に土がゴブリンの目に入ったらしく、一瞬ゴブリンは怯んだ。

 その隙に兄は右足を踏み出して、右の拳を思いっきり振り切った。

 人であればみぞおちに当たる所に、ゴブリンの顔面があり、その部分を兄は抉るように拳をぶつけた。

 ゴブリンは錐揉みしながら少し飛び、木にぶつかった。

 虫の息のゴブリンを横目に、兄は拳を軽くさすると、ゴブリンの持っていた木の棍棒を肩に担いだ。

 思いのほか手に馴染む棍棒を手で遊びながら、他にゴブリンがいないか見渡していると、頭に何か飛びつかれた。

「な!?」

 兄はそれを引っ剥がそうと思いっきり持った所を前に放り投げた。

 それは血の跡がまだ残っている先ほど殴り飛ばしたゴブリンだった。

 傷は回復しているようだった。

「何でぁ……?」

 兄はその瞬間色々な可能性が兄の頭の中を横切った。

 兄は木の上を見ると、そこに一人杖を持ったゴブリンが何かをつぶやいていた。

 兄は答えを見つけると、木を殴りつけて倒そうとすると、ゴブリンはそこから飛び降りて、どこかにかけて行った。

「……魔法……ゴブリンも使えやがるのかぁ……しかも絶対今救援呼びに行ったよなぁ……めんどぉっ!」

 兄は腕を捲ると、大股にゴブリンに近づいて先ほどと同じように拳を振り切った。

 手はゴブリンを掠めもせずに空を切った。

 ゴブリンは俺に近寄って手に持っていた土を兄の顔に投げつけた。

「あ"?」

 兄はそれをもろに食らって、よろめいた。

 そして、その瞬間ゴブリンが兄の首元に食らいついた。

「いっ!?」

 兄はゴブリンの口に手を持って行って、そのままアゴを引きちぎった。

 ゴブリンは血をドバドバ流しながら、二、三歩よろめきその場に血だまりを作って倒れた。

「きっつー……」

 兄はその場から離れようとすると、足に鈍痛を感じた。

 そこには矢が刺さっていた。

 振り返ると、ゴブリン達の小隊が列を組んで俺に向かってどこから連れてきたのか女の人を盾にして弓を構えていた。

 そしてその後ろには先ほどの杖を持ったゴブリンが、また何かを呟いていた。

「……あかんなぁ、やっぱ俺弱いなぁ……我慢できへんわ」

 そう言って兄は棍棒と手で顔と心臓を隠しながら大股にゴブリン達の小隊に歩み寄って、できる限り木の陰に隠れながら、刺さった矢の痛みに気が狂いそうになりながら、憤怒を覚えながら矢を撃っているゴブリンに近づいて渾身の一撃を放った。

 ゴキャリ

 と音がして、一匹が吹き飛んだ。

 メキャリ

 と音がして兄の脚に別の棍棒が振り下ろされた。

「ーーーーーーーーーーーーー!!!」

 あまりの痛さに遂に兄は地面に脚を抱えて転がった。

「いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい!」

 ゴブリン達は徐々に兄は距離を詰めて行った。

 そして、リーダー格のゴブリンがニヤニヤしながら最期に兄を見下ろして、手を振り下ろし………。

 ゴキャリ

 ゴゴゴゴゴキャリ

 と、連続して音がなった。

「……アホ、こんな事なってるってわかったわねやったらとっとと言わんかい」

「アホちゃうわ、バカなお前が来るとは思わんかったからや」

 弟は兄に近寄って、こうかな……、と呟きながらも魔法で兄の脚を直し始めた。

「魔法って便利やなぁ」

「まぁ、魔法やし」

「それに、超回復もついてるからかぁ?」

「あー」

 兄弟達はそう話し合いながらも、周りに目を向けていた。

「で、どーすんの?」

「取り敢えず、町に戻ってももうみんな寝てるやろ、応援の期待薄やな」

「にーちゃん風に言うなら『それは草ァ!』って奴やな」

「笑えんわ」

「はー……マジでどーすんの?」

「俺たちがやるしかなやん?」

「アホなん?」

「だからアホ言うな、何かしらのサポートは欲しいなしかし……」

「俺の『ソゲキッ』が光るんじゃね!?」

「アホ」

「アホちゃうわ、バカや」

「アホとバカ一緒やろ、アホ」

「チッチッチ、分かってへんなぁ、バカは勉強ができないとかのバカ、アホはやる事アホな事、分かる?」

「つまりにーちゃんがやる事全部アホやと?」

「違う?」

「……完全に否定できへんわ」

「……分かってんのかよ」

「「!?」」

 唐突に兄弟の会話に入ってきた声は、どこか聞いたことのある声だった。

「そう驚くなよ、ったく、全く進んでねぇからアシストボーナスしにきてやったぞ」

 声の主は月明かりをバックに木の陰から出てきた。

「さて、調子はどうだ?二人共」

「「ロキ(様)!?」」

 とても綺麗な声で、そしてボロボロの貫頭衣という出で立ちだが、それでもとてつもない美しさを纏った女神は兄弟の前に突如現れた。
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