Two Runner

マシュウ

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ウエスタンな異世界

道中

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「全く、いつになったら落し物見つけてくれんの?」

「いや、すいません、ほんと」

「……」

「まぁ、手こずってるようだし私も暇だからな、夜の間だけ手伝ってやるよ」

「アザマス」

「あざます……」

 ロキは宙にフワフワ浮きながら胡座をかいていた。

「で?今何してんの?」

「いや、明日やるらしいお祭りのコースにゴブリンがいないか哨戒しようとしてたんすけど、ものの数分でエンカした次第です」

「エンカてお前……また古いような……てかお前、アレどーするつもりなの?」

 ロキはビッと盾に括り付けられた女の人たちを指差した。

「あー……動けそうに無いみたいっすし、取り敢えず街に戻る事にしましょうかね?」

「探索の続きは?にーちゃん」

「まだ夜はこれからや、完徹は行けるやろ?」

「え、完徹すんの?」

「嫌か?」

「嫌や」

 弟は首を縦にすぐさま振った。

「いやいや、そこはお前『街の人のためにも、一肌脱いだろやないか」ぐらい言うてくれや」

「え、だって眠いのやだし」

「人助けする時に私情を持ち込むなこの馬鹿野郎」

「……わかったわかった、そうキレんなよ、手伝うわ」

「それでよし……って、事でいいっすかね?」

「私に聞くなよ、そっちで決めろよな」

「うっす、……じゃあ先ずはあの人達を解放して、街に戻ろうかね?」

「やな」

「……私は魔法で運ぶ事にする」


 そう言って何処からか杖を取り出して、一振りすると括り付けられていた糸が千切れ、女性達が解放された。

「……失礼だったらアレっすけど、これ見て特に何も思わないんすか?」

「アレって何だよ……おう、弱い奴は強い奴にとことん利用される、それが世界の法則さ、特にそれについてはそうとしか思ってない。お前は違うかもだけどな」

「……そうっすか……」

 兄は納得したような顔をして、女性を二人肩に担いだ。

「にーちゃん……二人もよう担げんなぁ……」

 弟の方はと言うと、プルプルと足を震わせながら一人担いでいた。

「……ロキさん?弟筋力増加したんなやいんですか?」

「……してるはずなんだけどなぁ……」
 
 ロキは首を傾げながら、弟に杖を一振りした。

「……お?軽なった?」

「バフだ、感謝しな」

「さ、流石神様、詠唱なしでこれだけできるとは……」

「当たり前だ……」

 顔を少し赤らめながら、フイッとそっぽをロキは向いた。

「じゃあ、出発つっても、すぐ着くけどな」

 兄はそう言って女の人達を街まで運んだ。

 その道すがら特に何事もなく、街の人達に女の人達を預けると、兄達は新しく街の人達の討伐隊と共に、まだあるかもしれないゴブリンどもの討伐に向かった。

「しっかし、おかしなもんだ……ここら辺にゴブリンが出るって聞いたことあるか?」

「いやぁ……聞いたことねぇなぁ……」

 兄弟とロキはその会話に聞き耳を立てながら、いざとなったら盾になれるように兄が先頭、ロキが次その後ろには弟の順で前の方を歩いていた。

「ロキさん?この世界のこと知らないんですか?」

「全く知らん、何せ私はその世界に落し物があるかどうかだけしか興味がなかったからな、お前は探している食いモン屋の近くにどんな人が住んでるか調べるか?」

「ちょっと俺の事的確に把握し過ぎやないっすか?俺そんなに食いもんのことばっかり言ってましたっけ?」

「お前なぁ……選ばれたつったろ?」

「あ……」

「選ばれるのにはそれ相応の訳があるわけ、まぁ、その理由は言わねぇけどな?」

「よかったやんにーちゃん、運だけはホンモンらしいな?」

「運かぁ……まぁ……うん……えっか」

 兄は溜息を吐くと、バリバリと頭をかいた。

「で?なんでにーちゃんは、明日のレースの道に魔物が出るって分かったん?」

 兄は銃のホルダーに手を置き、軽く銃を撫で回しながら、

「あくまでも、『もしも』を考えただけや、もしそれが外れても俺が一人損するだけやからな?まぁ、当たって欲しくなかったけど」

 と、自嘲気味に言った。

「普通やったら考えすぎで終わんのに、にーちゃんの運が変に強いから……」

「俺のせいちゃうやろ!?」

 流石にそれは理不尽だ、と喚く兄に弟は、

「うるさいで、みんなもう静かにしてるし、魔物にバレたらどーするん?」

 と、迷惑気味にそうのたまわった。

「クソッタレが」

 兄は釈然としないながらも、弟の言っている事に共感したのか、それ以降騒ぐことはしなかった。

 しばらく線路沿いに進むと、何やら人とは別の気配がした。

 具体的に言うと、息遣いである。

 兄は歩きながらホルダで遊んでいた手を止めて、周りをキョロキョロと見回した。

「いや、単純に見えん!」

「よいち!?」

 弟は急に叫び出した兄に驚き、そして、

「キシャァ!」

 と言って出てきたカマキリもどきに驚いて飛び上がった。

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!虫無理無理無理無理!!」

 弟は兄の背後に目にも留まらぬ速さで回り込み、兄を押さえつけ魔物に差し出した。

「アホアホアホアホ!食われる!食われるって!」

「俺アホちゃうもん!バカやもん!」

「んなことゆうとる場合かっちゅーの!やっべ!」

 ドゴォン!

 振り下ろされた鎌が兄弟達が元々いた所に突き刺さる。

「避けんなよ!なんで避けてん!」

「死ぬかもしれんやろ!?」

「バカ!」

「あほ!」

「お前らごちゃごちゃ言ってねぇでこいつ片付けろ!」

「………!」

「ここは休戦や、やったったんでー!」

 兄は腕をまくると、腰に下げてある銃を手に取った。

「リボルバー……うてるかなぁ?」

「ロッケランロッケランらんらんらん」

 兄は柔らかそうな所に、弟は所構わず撃ちまくった。

「やるなぁ」

 そんなことを言いながらも兄はカマキリもどきに弾丸を打ち込んだ。

「はっずれるなぁ!」

「下手くそ!」

「お前それどこ向かって撃ってるかわからんやつに言われた無いわ!」

「俺は森を燃やしてるんですー!」

「森林破壊はんたーい!」

「お前らほんとにこいつ倒すつもりあんのか!?」

「しゃーないなぁ、よっこいしょっと!」

 兄はそこらに生えてる木を引っこ抜いた。

「んーで、よっこいしょっと」

 ボゥッ、と音がして兄が取った木に火がついた。

「バカなのお前!?」

「そうやで?」

 兄は弟に向かって叫んだが、徐々に火が下に降りてきているのを見て、それをカマキリもどきに振り下ろした。

 メキャバキ!

 と、音がしてカマキリもどきは燃える木の下敷きになった。

 ギチギチと顎を鳴らしながら、カマキリもどきは炎に包まれていった。

「……お前、俺殺ろす気なん?」

「運が良かったらくたばったかなって」

「おまえがくたばれぇぇぇぇ!!」

「おまえらいい加減にしろぉぉぉぉ!!」

 遂に飛んだロキの声にて、兄弟喧嘩は終了したのであった。
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