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ウエスタンな異世界
旅の予定
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兄達はワールドに大体の話を終えると、質問はないかと言った。
「いや無いな……ただ、異世界からとはまた珍妙な」
「俺もそー思うわ、よくよく考えたらその世界の人に手伝わせたらよかったんじゃ無いっすか?」
「それもそうだが、発展途上な世界には能力を与えると邪な心を持つ奴が多いからな」
「発展途上やなくてもいるにはいるっすよ」
「ひねくれてやがるなぁ……だから選んだんだよ。お前らみたいな責任感のあるやつらをな」
「俺らはともかく、ワールドはそんなやつじゃ無いと思うんやけど……」
「ワールド……は、別枠だ、上の奴らの勝手な判断だ」
兄はウヘェ、と言った顔をした。
「まぁそんな顔するな……さて、この話をしていてもキリがないのはそろそろわかったか?」
三人は一斉に頷いた。
「よっしゃ、じゃあまずあの黄金列車だな」
兄は鉱山から出てきた黄金列車をロキに一度預けていた。
「アレはビンゴだ、アレが『神様の落し物』だ」
「おっ、えっ?じゃあ旅行おわり?」
「は?我の旅路は?」
「めんどかったわー」
三人それぞれの反応をする中、ロキは一人首を傾げていた。
「?」
兄は出来る限り気づきたくなかったが、気付いてしまったらしく、
「……何ですか?ロキさん……」
「いや、私『神様の落し物』って、一個って言ったっけ?」
兄は正直わかっていたことだと、ため息を吐いた。
「いやいや、にーちゃん?ここで俺らが引き受ける必要は無いんやで?俺らが言われたのは『神様の落し物』を見つける事、見つけたやん」
「お前の言わんとしてることもわかる……でも考えてみ?こんな機会もう絶対二度と無いで?」
「うん、帰ろ」
兄は弟の捻くれっぷり(正しい)に頭を抱えた。
「お前まだ活躍できてへんやろ?ええんかそれで?」
「女の人達町まで運びましたけど?」
「……戦ったりしてへんやろ?」
「痛いの嫌やから戦わんでええし」
「……なぁ、付いてきてくれん?」
「にーちゃんがどーしてもって言うならな」
兄はグッと拳を握ったが、弟に見えないようにこっそりとそれを解いた。
「どーしてもや」
「……しゃーないなー、にーちゃんは俺がおらんとあかんねんから」
兄はプルプルと震えていたが、自分のわがままに付き合ってもらっているんだと言い聞かせて落ち着かせていた。
「ん?どーしたん?嬉しくて震えてんの?」
そう言う弟の目は完全に笑っていた。
「……お前も大変だな……」
ロキが兄の肩に手をポンと置き、哀れみの目でそう言った。
「……っはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
兄は盛大に溜息をつくと、弟の頭を軽く殴った。
「いった!」
「あんま調子乗んなよ」
「殴ったなぁ!俺仕返しするからな!?」
「はいはい」
兄は弟から頭に一撃を食らうと、押し黙った。
その後、ロキの供述によると、
「髪がユラァって、逆立ったんだよ、いやな?顔は怒ってるようにしてたけどまったくこわくないだけどな?気迫だけは凄かった、まぁそれでだ、弟の後ろにあった木をぶん殴ったんだよ、そしたら何が起こったと思う?」
「弟より後方の木が全部ぶっ飛んだんだよ、いやぁ、アレから先にトシアキがアレだけ兄にビビった事は無かったんじゃねぇのか?」
と、言うことらしい。
「な、何よ?ぼーりょく?暴力反対!」
弟は完全に腰を引きながら口だけはそう言った。
「せぇへんわ、ボケ」
そうとだけ言って、兄はロキの方を見た。
「で?他にはどこにあんの?」
「お、おう、残り一つこの世界にあるみたいだな」
と言って、ロキは懐から(ボロボロの貫頭衣の隙間から)地図を取り出すとらその上にコンパスを置いた。
「……今はここだろ?そして次が……ここだ」
ロキが指し示した場所は、薄っすらと光が灯っていた。
「『妖精がいた所』……」
ワールドもその地図を覗き込んでいた。
「行き方は……ここから北西に真っ直ぐ進んで、『セイレーンの大泉』を超え、『イエティの洞窟』の前を通って、『ワイバーンの巣』を回り道して、『大市場』に寄り道して土産でも買おうか、そして、そこから更に北に進んで『白嶺』を超えて……か」
「遠!」
「歩いてなら三ヶ月以上はかかるな、そう、歩いてならな」
ロキはそう言ってニヤリと笑うと、地図上に一本の線を引いた。
「これ、何だと思う?」
「さぁ?街道?」
「空路?」
弟とワールドは答そんな答えを言っていたが、
「まさか……鉄道?」
「大当たりだ、ここに既に廃線になっている線路がある、廃線になってそれほど時が経ってないから十分だろう」
「鉄道……あぁ……」
ワールドは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「ロキ?何で廃線になったん?」
「理由は簡単だ、もっと楽勝な道ができたからだ」
そう言ってロキは先ほどの曲がりくねった道とは別に、一本の線を引いた。
「こことか、おっきな街を繋ぐ線路が開通したらしい、直ぐに廃線にする必要は無かったけど、やはり安全面とかからで廃線になったらしい」
「……もしかしてロキちょっと鉄道の旅楽しみにしてない?」
「なっ!?い、いや、そんな事は……ちっとも……ちょっと……少し……」
三人は完全に楽しみにしているな、と、ジト目で見たが、一つ肝心な事を弟は思い出した。
「ロキさん?鉄道って言ってるけど、肝心の列車は?」
「鋭い、やるな、トシアキ」
ロキはニヤリと弟を褒めると、パチンと指を鳴らした。
すると、地図上に小さな蒸気機関車の模型が浮かび上がった。
ただ、他の蒸気機関車と違うのは車体が流線型になっている事だった。
「……まさか」
「そのまさかだ、お前が見つけた黄金列車のデザインを元に新しく性能をよくして作ってもらった!」
「お、おぉ……」
どちらかと言うと、ロキのテンションに驚いた三人は、少しロキと距離をとった。
「……悪かったな!鉄オタで!」
「蒸気機関車のロマンは分かりますけど」
「流石にテンション上がりすぎだ」
「うんうん」
三人に滅多斬りにされたロキは赤面した。
「うぐぐぐ……お前だって!二次元が好きなくせしやがって!」
「そうですが何か?」
兄の堂々とした態度にロキは少したじろいだ。
が、
「いい加減話を進めんか?」
と、ワールドがいい加減ウンザリした声でそう言った。
「そ、そうだな、で、この列車だが、寝台車、貯蔵車、調理車、とか色々付けてもらった」
ロキはそう言って幾つかの車両を浮かび上がらせた。
「最初の食料とかはこの街で揃えれば良いだろう……どうだ?旅行としては完璧だろう?」
質問は無いか?
と、ロキが最後に三人を見回した。
「「「……」」」
三人とも特に質問はないようだった。
「よし、じゃあお前らは明日の祭りを楽しめや、私は最後の調整をしておくからよ」
「えっ、待って、日が昇ってきているときにも出てこれるの?」
「日が入らないような車両を作れば何とかな」
「えっ?窓の外の景色は?」
「紫外線を減らすフィルムつけとく」
「お、おう」
ガチじゃ無いか、と三人は喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
逆ギレは勘弁だと、三人は言わんばかりに顔を見合わせた。
「よっし!じゃあお前ら帰って寝てろよ!?楽しみすぎて寝れなくて体調崩したりしやがったら笑ってやるからな!?」
そう言ってロキは木の影に吸い込まれるように消えていった。
「……えっ?ワールドは?」
「我か?ロキに『面倒見てもらえ』と言われたぞ?」
「「………」」
兄弟は顔を見合わせたのち、
「「ロキーーーーー!!!」」
と、森中に響き渡る叫び声を上げたのだった。
「いや無いな……ただ、異世界からとはまた珍妙な」
「俺もそー思うわ、よくよく考えたらその世界の人に手伝わせたらよかったんじゃ無いっすか?」
「それもそうだが、発展途上な世界には能力を与えると邪な心を持つ奴が多いからな」
「発展途上やなくてもいるにはいるっすよ」
「ひねくれてやがるなぁ……だから選んだんだよ。お前らみたいな責任感のあるやつらをな」
「俺らはともかく、ワールドはそんなやつじゃ無いと思うんやけど……」
「ワールド……は、別枠だ、上の奴らの勝手な判断だ」
兄はウヘェ、と言った顔をした。
「まぁそんな顔するな……さて、この話をしていてもキリがないのはそろそろわかったか?」
三人は一斉に頷いた。
「よっしゃ、じゃあまずあの黄金列車だな」
兄は鉱山から出てきた黄金列車をロキに一度預けていた。
「アレはビンゴだ、アレが『神様の落し物』だ」
「おっ、えっ?じゃあ旅行おわり?」
「は?我の旅路は?」
「めんどかったわー」
三人それぞれの反応をする中、ロキは一人首を傾げていた。
「?」
兄は出来る限り気づきたくなかったが、気付いてしまったらしく、
「……何ですか?ロキさん……」
「いや、私『神様の落し物』って、一個って言ったっけ?」
兄は正直わかっていたことだと、ため息を吐いた。
「いやいや、にーちゃん?ここで俺らが引き受ける必要は無いんやで?俺らが言われたのは『神様の落し物』を見つける事、見つけたやん」
「お前の言わんとしてることもわかる……でも考えてみ?こんな機会もう絶対二度と無いで?」
「うん、帰ろ」
兄は弟の捻くれっぷり(正しい)に頭を抱えた。
「お前まだ活躍できてへんやろ?ええんかそれで?」
「女の人達町まで運びましたけど?」
「……戦ったりしてへんやろ?」
「痛いの嫌やから戦わんでええし」
「……なぁ、付いてきてくれん?」
「にーちゃんがどーしてもって言うならな」
兄はグッと拳を握ったが、弟に見えないようにこっそりとそれを解いた。
「どーしてもや」
「……しゃーないなー、にーちゃんは俺がおらんとあかんねんから」
兄はプルプルと震えていたが、自分のわがままに付き合ってもらっているんだと言い聞かせて落ち着かせていた。
「ん?どーしたん?嬉しくて震えてんの?」
そう言う弟の目は完全に笑っていた。
「……お前も大変だな……」
ロキが兄の肩に手をポンと置き、哀れみの目でそう言った。
「……っはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
兄は盛大に溜息をつくと、弟の頭を軽く殴った。
「いった!」
「あんま調子乗んなよ」
「殴ったなぁ!俺仕返しするからな!?」
「はいはい」
兄は弟から頭に一撃を食らうと、押し黙った。
その後、ロキの供述によると、
「髪がユラァって、逆立ったんだよ、いやな?顔は怒ってるようにしてたけどまったくこわくないだけどな?気迫だけは凄かった、まぁそれでだ、弟の後ろにあった木をぶん殴ったんだよ、そしたら何が起こったと思う?」
「弟より後方の木が全部ぶっ飛んだんだよ、いやぁ、アレから先にトシアキがアレだけ兄にビビった事は無かったんじゃねぇのか?」
と、言うことらしい。
「な、何よ?ぼーりょく?暴力反対!」
弟は完全に腰を引きながら口だけはそう言った。
「せぇへんわ、ボケ」
そうとだけ言って、兄はロキの方を見た。
「で?他にはどこにあんの?」
「お、おう、残り一つこの世界にあるみたいだな」
と言って、ロキは懐から(ボロボロの貫頭衣の隙間から)地図を取り出すとらその上にコンパスを置いた。
「……今はここだろ?そして次が……ここだ」
ロキが指し示した場所は、薄っすらと光が灯っていた。
「『妖精がいた所』……」
ワールドもその地図を覗き込んでいた。
「行き方は……ここから北西に真っ直ぐ進んで、『セイレーンの大泉』を超え、『イエティの洞窟』の前を通って、『ワイバーンの巣』を回り道して、『大市場』に寄り道して土産でも買おうか、そして、そこから更に北に進んで『白嶺』を超えて……か」
「遠!」
「歩いてなら三ヶ月以上はかかるな、そう、歩いてならな」
ロキはそう言ってニヤリと笑うと、地図上に一本の線を引いた。
「これ、何だと思う?」
「さぁ?街道?」
「空路?」
弟とワールドは答そんな答えを言っていたが、
「まさか……鉄道?」
「大当たりだ、ここに既に廃線になっている線路がある、廃線になってそれほど時が経ってないから十分だろう」
「鉄道……あぁ……」
ワールドは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「ロキ?何で廃線になったん?」
「理由は簡単だ、もっと楽勝な道ができたからだ」
そう言ってロキは先ほどの曲がりくねった道とは別に、一本の線を引いた。
「こことか、おっきな街を繋ぐ線路が開通したらしい、直ぐに廃線にする必要は無かったけど、やはり安全面とかからで廃線になったらしい」
「……もしかしてロキちょっと鉄道の旅楽しみにしてない?」
「なっ!?い、いや、そんな事は……ちっとも……ちょっと……少し……」
三人は完全に楽しみにしているな、と、ジト目で見たが、一つ肝心な事を弟は思い出した。
「ロキさん?鉄道って言ってるけど、肝心の列車は?」
「鋭い、やるな、トシアキ」
ロキはニヤリと弟を褒めると、パチンと指を鳴らした。
すると、地図上に小さな蒸気機関車の模型が浮かび上がった。
ただ、他の蒸気機関車と違うのは車体が流線型になっている事だった。
「……まさか」
「そのまさかだ、お前が見つけた黄金列車のデザインを元に新しく性能をよくして作ってもらった!」
「お、おぉ……」
どちらかと言うと、ロキのテンションに驚いた三人は、少しロキと距離をとった。
「……悪かったな!鉄オタで!」
「蒸気機関車のロマンは分かりますけど」
「流石にテンション上がりすぎだ」
「うんうん」
三人に滅多斬りにされたロキは赤面した。
「うぐぐぐ……お前だって!二次元が好きなくせしやがって!」
「そうですが何か?」
兄の堂々とした態度にロキは少したじろいだ。
が、
「いい加減話を進めんか?」
と、ワールドがいい加減ウンザリした声でそう言った。
「そ、そうだな、で、この列車だが、寝台車、貯蔵車、調理車、とか色々付けてもらった」
ロキはそう言って幾つかの車両を浮かび上がらせた。
「最初の食料とかはこの街で揃えれば良いだろう……どうだ?旅行としては完璧だろう?」
質問は無いか?
と、ロキが最後に三人を見回した。
「「「……」」」
三人とも特に質問はないようだった。
「よし、じゃあお前らは明日の祭りを楽しめや、私は最後の調整をしておくからよ」
「えっ、待って、日が昇ってきているときにも出てこれるの?」
「日が入らないような車両を作れば何とかな」
「えっ?窓の外の景色は?」
「紫外線を減らすフィルムつけとく」
「お、おう」
ガチじゃ無いか、と三人は喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
逆ギレは勘弁だと、三人は言わんばかりに顔を見合わせた。
「よっし!じゃあお前ら帰って寝てろよ!?楽しみすぎて寝れなくて体調崩したりしやがったら笑ってやるからな!?」
そう言ってロキは木の影に吸い込まれるように消えていった。
「……えっ?ワールドは?」
「我か?ロキに『面倒見てもらえ』と言われたぞ?」
「「………」」
兄弟は顔を見合わせたのち、
「「ロキーーーーー!!!」」
と、森中に響き渡る叫び声を上げたのだった。
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