Two Runner

マシュウ

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ウエスタンな異世界

不審侵略者

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「忘れ物ない!?」

「大丈夫やって!」

「服は入れたかい!?」

「入れたって!」

「お金は!?」

「大丈夫やってぇ!」

「気をつけてね!」

「わーったよ!心配センキュ!」

 その日の夜、与一達はロキが用意した列車の前でリーチェ達と別れの時間を過ごしていた。

「みんな元気でね!辛くなったらまた来てもいいのよ!」

「自分のうちだと思っていつでも帰ってきてくれ、次は僕の家に泊まりに来たらいいよ!」

「ほっほっほ!良き旅路にならん事を!」

「ほんま皆んなありがとうな!」

 与一達は見送りに来てくれた人々に一人ずつ声を掛けながら、感謝の言葉を送っていた。

 そして、ロキは一人運転室にいた。

「……そんなに運転したかったの?」

「悪いですか?」

「いやいや、憧れ、夢を持つことはとても素晴らしいことだよ?」

 そこにいつ現れたのかシルヴィが優雅に足を組んで空中に座っていた。

「でも、あんまり興奮しすぎるとみんなから引かれるよ?」

「わかってますよ……」

 ロキは若干顔を赤らめながらも装置から目を離すこは無かった。

「………」

 それを見てシルヴィはつまらなそうにしていたが、唐突に立ち上がって、

「ロキ?」

 と、ロキの名を呼んだ。

「何ですか……」

 と、ロキが振り向いた瞬間、シルヴィはロキの顎をクイッとした。

「無視するのは酷くなぁい?」

「し、知りませんよ……!それならからかうのやめていただけませんか?」

 と、ロキは少し拗ねながらそっぽを向いた。

「ふふふ、ごめんね?少し可愛くて……」

「……貴方には他の人が居るでしょう?」

「あぁ、うん、でもちょっとからかうだけならいいでしょ?」

 と、シルヴィはいたずらっぽく笑った。

「……はぁ……で、何の用ですか?」

「……もう少し遊んでくれても……」

「シルヴィさん……」

「わかったよ、怒らないで?」

 と、手を上げて降参のポーズをしたシルヴィは、反省したような顔をして再び空中に優雅に座った。

「……この世界には居なかったけど……」

「万が一のこともありますからね……」

 シルヴィはクルリと空中に指で縁を描くと、そこにカップとティーポッドが現れた。

 それを優雅に注ぎ空中に置くと、それを一口シルヴィは飲んだ。

「……分かってるさ、ただあの老人は何考えているか分からないからね……」

「それを言ったら私たちもババアみたいなもんですよ……」

「キミィ……もうちょっと女の子楽しもうよ……」

 シルヴィは少し呆れたように眉をひそめた。

「そんな余裕私にはないんでね……」

「…………」

 シルヴィは装置をいじり倒しているロキをジト目で見ていたが、紅茶を一口飲むと立ち上がった。

「まぁいいさ、楽しんでね?」

 そう言うと、現れた時と同じように唐突に帰る気配がした。

「……」

 ロキは振り返りシルヴィが居なくなったことを確認した。

「………はぁ、厄介ごとばかりだよ、ホント……」

 そう言って溜息を吐きながらロキは引き続き装置をいじり始め、少し古びた腕時計を見た。

「そろそろだな……おーい!そろそろ出ねぇと目標地点までに行けねぇからそこまでにしとけよー!」

 と、窓から顔を出して与一達に叫んだ。

 そして一方その頃、少し瞳を潤ませて皆んなとの別れをしていた与一達は、

「バイバーイ!」

「チャーオー!」

 と、列車に乗り込みながら皆んなと最後の別れをしていた。

「バイバーイ!バイバーイ!」

「皆んなありがとー!!」

 すると、

 シュポー!!

 と、そう言って蒸気を吹き上げて列車はゆっくりとしかし、着実にスピードを上げて進み始めていた。

「ばいばーい!ありがとなー!」

「さようならー!」

 徐々に小さくなっていくみんなを見ながら、涙ながらにもなっていた兄弟や、他のみんなそれぞれ別々の思い出を胸に刻んだのであった。

 そして、みんなの姿が暗闇で見えなくなってきた頃、与一は運転室の方へ服を触手に変形させて運転室に入った。

「よっ……運転してみてどうや?」

「……どう言ったらいいんだ?」

「どうって、どう言うても笑わんし、『そうか、良かったなぁ』って、嬉しく……とは違うけどなんか、見ててポカポカする」

 一人少し笑いながらも真剣に装置を弄るロキに、与一は臆面もなくそう言った。

「……楽しいよ」

「そりゃ良かった」

 そう言って与一は服を椅子に変形させてそこに座った。

「ずっとみてるつもりか?」

「いーや、飽きたら寝る」

「そっか……」

 ロキはそう言いながら汽笛を、

 ボォォォー

 と、鳴らした。

「………」

 微笑ましそうにロキのことを見ていた与一だったが、何やら列車の走る音とは別の音が聞こえたような気がして椅子を元に戻して、触手に変えて列車の屋根の上に登った。

 夜空はとても綺麗で、徐々に小さくなっていく街と、地平線まで広がる広い大地、そして、屋根の上に一つポツンと立つ人影………。

「ロキ!」

「なんだこんどは……今すっげー気分良くなってきてたのに……」

「ちょっと警戒しといてくれ……」

 与一はそう言うと、影に少しずつ近づいた。

「誰や!」

 そして、影に声を飛ばした。

「……」

 影は返事をする事なく連結部分に飛び降りた。

「侵入者かもしれん!ロキ!バフ振ってくれる!?」

「はいはい」

 ロキはめんどくさそうに与一に杖を振ると、装置から目を話す事なく、

「どうせ勘違いだと思うぞ?」

 と、そう言ったが、与一の耳にそれが入ることはなかった。

 与一は走って影が飛び降りた連結点まで走ると、下を覗き込んだ。

 影は腕を伸ばしてポキポキと鳴らして、なんととても分厚い金属である扉を強引にぶち壊したのだった。

「待て!」

 与一は触手を伸ばして影を捕まえて屋根の上に引き上げた。

「誰やねん!お前!何やねん!」

 与一は触手を解くことはなく影に近寄った。

 影はどうやら騎士の姿をしていて、鎧を全身に着込んでいるようだった。

 そして、その姿を与一は何処かで見たような気がした。

 が、そんな思いも一瞬だった。

 騎士は腕に力を込めたようにすると、捕まえていた触手をグイッと広げて抜け出した。

「うそっ!?」

 与一はバフをかけてもらった上に全力ではないが、そこそこ強い力で締め上げていたのを、軽々と脱出した鎧騎士を驚愕の眼差しで見た。

 すると、騎士は背中から背負って無いのに大剣を取り出した。

「!?」

 与一は更に訳の分からない魔法のような事を見せられて驚いた。

 そして、騎士はその隙をついて大剣を持っているとは思えない速度で与一に近づき、押し倒すように大剣を叩きつけた。

「むぐっ!?」

 一瞬息が出来なくなり地面に叩きつけられた与一はポケットからチケットとチケットを切るどうやら変身道具になる器具を取り出した。

 そして、カチッとチケットを切ると、与一の背中から白い光が溢れてきて、黄金列車が騎士を吹き飛ばしながら与一を貫通した。

 そして、与一はゴールデンアーマーを装着しながら立ち上がった。

「名前……決めやなな……」

 そして、騎士が立ち上がると同時に、

「『ゴールド・スチーマー』……!」

 と言って向かってきた騎士の顔のプレートを殴り飛ばした。

 が、その瞬間騎士は顔の甲冑を外して与一の視界外に出た。

 与一は思ったより軽い手応えと、飛んで行った装甲を見て、顔と胴体が離れてしまったのかと思ったのか、

「あっ!やってもt……」

 と言ったところで騎士の大剣が下から急加速して胴体に直撃した。

 ガキィン!

 と、金属がぶつかり合う音がして与一は吹き飛ばされた。

「うっ………!」

 痛む身体に鞭を打つ様にに与一は立ち上がると、全身がまだ動く事を確認した。

 そして、

「お前は誰やねん!」

 と、頭のデコにあたる部分にあるライトを灯した。

 すると、そこには長い赤髪の整った顔立ちの男か女か分からない騎士の格好をして大剣を構えている人間がいた。

「……はぁ、何で異世界に旅行に来て迷惑被らなあかんねん……」

 そう言って与一は腰に付いているナックルを右手につけ、あまり取ったことのないファイティングポーズをとった。

 そして、二人の間に緊張が走る中、

「何してんだ!与一……あ"?」

 ロキが先ほどの音を聞いたのか、石炭車にフワフワと浮かび上がってきた。

「誰だぁ?テメェ?」

 与一はゆっくりと歩いてくるロキに道を譲りながら連結部分に降りた。

「………」

 騎士はものすごくロキの事を蔑んだ目で見て、大剣を構えた。

「返事は無しか……テメェの親は躾がなってねぇなぁ?」

「……はぁ……」

 そして、騎士はようやく口を開いた。

「貴様のような下賤者に口を開く必要なかろう?」

 と、言った。

「……おい、ヨイチィ……」

 連結部分から俊明を呼んでいる与一にロキは告げた。

「こいつ逃げねぇように後ろ回り込んどけ……」

「へい」

 与一はそう言うと、列車の中をかけて行った。

「……」

 相変わらず騎士はダルそうに、だか隙なく剣を構えていた。

 ロキはシュッと杖を素早く振った。

 すると、杖はいつの間にか伸びていてレイピアのような形になり、持ち手もしっかり付いていた。

 そして、ロキの服装もボロボロの貫頭衣から、お前それ色々守れてんのか?

 と、言いたくなるような、しかしロキの肢体の美しさを際立たせる様な美しい装備を纏っていた。

 ロキの髪の色よりも少し明るくなった紫の色を主体とし、背中と前を向いて守る胸部の甲冑は複雑な形をしてそのまま腰まで下がり、腰からはマントの様にヒラヒラと薄藤色の布と何やらよく分からない文様が入った金の刺繍のなされた白色の布がはためき、足と手は甲冑を纏っていたが、やはり鋼色の鎧の隙間から藤色などの紫色が覗けた。

 そして、そんな彼女は月を背景にしながら腰まで届くほどの長い髪をユラユラと逆だたせて紫の目を見開き光らせて、騎士を見据えていた。

「…………」

 だが、騎士はそんな様子を見てもまだダルそうにしていた。

 そして、与一と俊明がロキの反対側に出てきて騎士を挟んだ。

「……あれ?めっさ変わってない?」

「しっ!今変なこと言うたら殺されるで……!」

 与一は冷や汗をかきながら再びファイティングポーズをとった。

 そして、そんな様子を見て騎士は、

「撃て」

 と、だけ言った。

 すると、その瞬間遠くから一瞬ストロボの様な光が灯ったと思えば騎士に別の大きな銃を持ったスナイパーの様な女がぶつかって派手に体制を崩したと思えば、ロキが二人に向かって飛び蹴りをかました。

 騎士の鎧は蹴られただけなのにもかかわらず砕け、スナイパーの女は、クハッとだけ苦しそうに呻いて気絶した。

 騎士は露わになった鎧の下を見て、

「……依頼料は全部修理費か……」

 と、呟き、そして、

スナイパーを抱えて列車から飛び降りた。

 与一は一瞬遅れて触手を伸ばしたが、いつの間にか並走していた蒸気車がそれを弾いて二人を乗せて遠くに行こうとして少し跳ね上がって派手に事故った。

 そして、与一の横では満足げにパンパンと手と足を払う俊明がいた。

「……もしかしなくてもお前やんな……」

「……俺強いやろ?」

 そう言ってニッと笑う俊明に兄は最早呆れるしかないと、笑うのだった。

 そして、そんな顔をする兄を俊明は満足げに見て、自分が何がやらかしてないか思い返した。

 まず、遠くでストロボの様な光が光った時、俊明は一瞬で世界を置いて全てがスローモーションに見える世界に着いた。

 そして、ストロボの光のところは行く途中大きな弾丸が3発ほどあったので軌道を掴んで大きく下向きに変えると、光っていた所めがけてさらに加速した。

 恐らく光ったであろう場所に着くと、軽装のスナイパーライフルを弄っている女を見つけた。

 俊明はケースと弄っている部品を素早くスナイパーライフルに取り付けて満足した様に頷くと、女を思いっきり列車の方に放り投げた。

 そして、走ってそれに追いつくと列車の上にいる騎士にスナイパーが当たらない様に投げつけた。

 そして、スナイパーライフルと女の持っているマガジンを拝借してケースに直して自分の部屋に置いて、再び二人に向かった。

 そこで俊明は世界に帰ってきた。

 二人は盛大にぶつかり合って体制を崩した。

 弾丸は最早届くことは無かった。

 そして、二人を見て爆笑しようと思って、

「ぷ……」

 と言ったところで、ロキのハイヒールの踵による凶悪な蹴りが二人の腹部に突き刺さるのを見て、目を見開いた。

 そして、二人は蹌踉めきながらも列車から蒸気車に飛び移った。

 与一がそれを触手を伸ばして止めようとしているのを見て、もう一度腕を伸ばしてポキポキと鳴らすと、世界を置いて走り出した。

 俊明は車の車輪に思いっきり自分が出した銃を打ち込んで、更にダメ出しと言わんばかりに殴って蹴り倒した。

 そして、ゆっくりと列車によじ登って与一の横に立った。

「……うん、問題なし」

 俊明は完璧な結末に満足した様に頷くと、連結部分に飛び降りてあのスナイパーライフルを調べるために自分の部屋に戻ろうとした。

「おいおい!どこ行くねん!」

「あいつから拝借させてもらった銃どんなんか見てくる!」

「お願いやから最後まで手伝ってくれん!?」

「えー……ええよぉ?」

「ありがと……」

 そして、与一はロキの顔を見た。

 ロキの顔はどこかスッキリした様に満足げだった。

「……たまーに見せるその表情さぁ……」

「なんだよ……」

「……いや、うん、ええと思うで」

 と、与一は頭をかきながらそう言って、思い出した様に、

「あぁ、そうそう、その服?可愛いし、綺麗やし、カッコええし……最高やな」

 と、そう言って運転室に入ってスピードを徐々に落として止めた。

「……はっ!お世辞どうもご丁寧にありがとうございましたー」

 と、ロキはとても悪い顔でそう言って列車から飛び降りた。

「どーいたしましてー」

「にーちゃん、いつもやったらそんなこと言わんのにー、惚れた?惚れた?」

「ははは、ぶっ殺すぞ」

 と、与一も笑いながら派手に事故った車に近寄った。

 車からは煙が吹き上げ、一部燃えていた。

「……結構なスピードやったけど生きてんの?」

「まぁ、あんな軽装備じゃ重症必須だな……」

 と、ロキはそう言いながらレイピアになった杖を一振りした。

 すると、残骸はフワフワと空中に浮き上がり、中からボロボロになった三人の女が出てきた。

「………めんどくせぇ……」

「なんて?」

 与一が呟いた独り言は蒸気車の残骸が出す音でかき消された。

 三人の女は地面に降ろされると否や、唐突に起き上がって与一達に攻撃を始めた。

 様に見えたが、紐で括られ躓いてこけた。

「……ナイス俊明」

「俺って天才」

「人からもろた能力で自慢するなボケ」

「にーちゃんかて、人のこと言うてたけどられへんのちゃう?」

 与一と俊明は暫く睨み合ったが、ため息をついて、

「「……エビ、カニ、タコ、フゥーー……」」

 と、謎の儀式をした。

「お前らなぁ……」

 ロキはそんな二人を呆れた様に見ると、三人の女に向き直った。

「で?お前らは何者なんだ?」

 すると、鎧騎士だった女がピチピチの肌着のまま、

「殺すなら殺せ……」

 と言った。

「またか!またなんか!?くっころピーポー!」

 与一は一人イライラしたようにそう言った。

「にーちゃん、キモい、落ち着け」

「……ウィ」

 俊明がどうどうと宥めると、与一は腕を組んで近くの岩に腰を下ろした。

「……なんの御用で私達の列車にご乗車されたのか、お聞きしてもよろしいでしょうかねぇ?」

 と、ロキはレイピアを手にペシペシと叩きつけながらそう言った。

「………殺すならこの女にしなさい……」

 すると、薄い水色というか、黄緑色というか、そんな髪の色をしたスナイパーの女が目をそらしながら赤髪の女騎士に向けてそう言った。

「なっ……!」

 すると、赤髪の女騎士は驚いた様に目を見開いた。

「何を言う!貴様それでも誇り高き団員か!」

「ふん!遠くから相手を撃つだけのスナイパーに誇りとかあると思う?」

「きさまぁ!」

「二人共!」

 赤髪の女とスナイパーの女はデコとデコをぶつけながら睨み合った。

「与一、こいつらをワールドの所に……流石にそれはマズイか……」

 と、ロキは頭を抱えた。

 そんな様子を見て、与一は変身を解こうと切符を切る器具を取り出そうと思ったが、何やら恐らく車を運転していたであろう女に目が止まった。

 そして、与一は慌ててその女の所まで飛びつく様に向かった。

 そして、女を組み伏せた。

「与一!」

 ロキはそんな様子を見て与一を引き剥がそうとレイピアを振ろうとしたが、与一が抑えた女の手に薄い刃物があるのに気がついた。

「……成る程……最初から演技をしてたって訳か」

 ロキは三人の演技に舌を巻く様に呻くと、杖を振って縄から手錠に拘束具を変えた。

「……ちっ、食えない男だ」

 与一は女騎士からそう言われて肩をすくめた。

「今の意外と傷ついたわ」

「にーちゃんのメンタル水並みやもんなー」

「知ってたー」

『………???』

 女四人は兄弟が何を話しているのか理解できていなかったが、二人はそんな様子をよそに、女三人に再び向き合った。

「目的は?言うてくれたら逃がすん考えたるで?」

「にーちゃん、こーゆー時そんな簡単に口割ってくれるって思えへんねんけど?」

「はい、まず俺が口を割ってくれると思う理由な、

 一、団員ってそこの赤い髪の女の人がゆうとったやろ?

 多分やけど、ギルドに所属しててそこから派遣されたんかなーって、そこで自分達が殺されるかもしれないのと生きて返してもらうのってどっちの方がいいかって……」

 と言ったところで与一は固まった。

「……ギルドに汚名をつけるなら死ぬわなぁ……」

「……ご、ごほん」

 与一は俊明の言葉を咳払いで誤魔化そうとするも、その場にいる全員からジト目で見られることとなった。

「ふ、二つ目、このまでされて逆に言わないのは何故ってならん?」

「なんでーや」

「だってここで黙るメリットがなぁい!」

 と、与一は叫んだ。

「黙ったところで死ぬだけ!更に捕まったというか不名誉まで背負って!……そしてこのプライド高そうな顔ぶれ……!」

 最後の一言はかなりの小声で俊明にだけ聞こえるように言って、そして、

「そして三つ目、これが最大の理由や、赤髪の騎士さん!俺、見たことあったわ!」

「どこで?」

 俊明がイライラしながらも与一にそう聞いた。

 無論、その場にいる全員も同じだった。

「……ノヴァと会った時のこと覚えてる?」

「アホか!覚えてるわそんなん!」

「じゃあ順に言ってって?」

 与一は腕を組みながらそう言った。

「……ところで変身まだとかへんの?」

「だって騎士の人俺の触手解いてんで?」

「ゴリラやん」

「ゴリラとは何なのか分からないが、非常に侮辱されたのはわかったぞ」

 と、言葉が飛んできて俊明は少し黙るも、続けて、

「どっから言ったらええ?」

「人だかりがあって、何やろこれって所から」

「……人だかりあって、覗く、ノヴァの腕……あっ」

 すると、与一はこれまでに無いほどの高笑いをあげた。

「あははははははは!解った!?」

「……その気持ち悪い笑い声辞めときや?メッサ引かれてんで?」

「……」

 与一は女四人の方をチラリと見ると、何も見なかった様に俊明に答えを促した。

「……女騎士、お前、ノヴァの腕切り飛ばした奴やろ」

 と、俊明は答えた。

「………似ているだけでは無いか?世の中には似ている人物などいくらでもいる、甲冑なら尚更だ、同じところが作れば同じ様な甲冑を着た人間だっているだろう?」

 と、赤髪の女騎士は笑った。

「まぁだいじはるぅ?」

 と、与一は呆れながらも、

「概ね俺らが街から出るところを見た貴族さんが、手がひっついてピンピンしているノヴァを見て何を思ったんか、『取ってこい』って言うたんやろうなぁ……」

 と、言った。

「………………………………………………」

 長い沈黙と、女騎士は目を白くして汗をダラダラと、かいていることから答えは明確だった。

「「(まさかの)図星かぁ……」」

 ロキと、推理した与一本人でさえ呆れた様にわかりやすい反応をする女騎士を見た。

「で?どうなん?」

 そして、バカな俊明はダラダラと汗をかく女騎士に詰め寄った。

「お前それわざとやってる?」

「は?」

 あんまりだったのか、与一は半笑いで俊明にそう言った。

「何ゆうてん?えっ?なに?分かったん?」

「そらわかるわボケ」

 と、与一は笑いながら俊明に事を説明した。

「……はぁ、そう?みえ……なくない?」

 相変わらずまで人の表情を見るのが下手くそな俊明を、与一は呆れてほっておくことにした。

「……さて、どうしたものか……」

 そして、与一は唸る様に考え込んだ。

 すると、

「我にいい考えがある」

 と、ワールドが唐突にロキの隣でそう言った。

『うわぁ!』

 与一達はいきなり現れたワールドに驚きながら、女三人組に背を向けてコソコソと何か話し始めた。

「……問題発生だ……位置はここだ、来てくれ」

 すると、女騎士はスナイパーの腕についている装置を起動して向こうにいる相手が何か喚いているのにもかかわらず、そうとだけ伝えて通信を切った。
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