32 / 70
向かうは世界の果て
イエティの洞窟3
しおりを挟む
『………は?』
その場にいる全員ロキの判断に口をあんぐりと開けた。
「ま、まじでいってん?」
「大マジだ。理由は三つ、一つはコイツは使える、私達が束になっても勝てない奴だ、そしてこの場の誰より力が恐らく強い、これだけで大きなアドバンテージだ」
「まぁ確かに」
「二つ目、コイツは今進化している」
『は?』
「まぁまて、コイツの今食ってるやつはな、天文館でもあまりその性質上出回ることのない『超希少食材』で、まぁ結論を言えばコイツを食えばかなり強くなることができる」
「グガゲゲグゲ?」
「大マジだって言ってるだろ?三つ目、コイツには私たちの仲間になる意思がある。その根拠は……まぁ、それはまた後でだな」
そう言ってロキは与一の方をちらりと見た。
「……分かった、んだらキホシィ達の親御さん助けるといたしんしょうかね?」
と、言って与一は箱を二つほど抱えて親御さん達のいる洞窟へと向かっていった。
「………はぁ」
そして、俊明もそれに続くように箱を一つ持つと、与一の後に続いた。
それを見たワールド達もチラチラとモンスターの方を振り返りながら箱を持って親御さん達の方へと向かった。
「さて、この後どうするつもりだい?」
「だからいきなり出てきたら心臓に悪いって何遍言ったら分かるんですか?」
「ふふふ、ごめんねそうやって怒る君が可愛くてさ?」
「……私はやめてくださいよ?」
「嫌だよ」
「即答ですかい……」
「だってこんなにも可愛い君を離すなんて考えられないもん」
「あっ!ちょっ!頭撫でないで!」
「可愛いなぁ~君は」
「う~~~!」
ロキはペシペシとシルヴィの背中を叩いた。
「ははは、ごめんよ?」
そう言ってシルヴィはロキから離れると、優雅に空中に座って紅茶を飲み始めた。
「……商人が全員死んでたら話は早かったんですけどね……なまじ何人か生き残ってるからどうしようかと」
「殺しちゃえば?」
「与一が許さんでしょうに、それにそのやり方はソウヤが一番嫌ってるやり方でしょう?」
「分かってるようで何よりだよ」
ロキは自分を常に試すような口ぶりをする魔女を、横目に見ながら続けた。
「私の考えではシルヴィ、貴方が解決の鍵を持ってるんじゃないですか?」
「あったりー」
そう言ってシルヴィは立ち上がるとロキに何か手渡した。
「これは天文館への鍵だよ、彼女達に使ってあげるといいさ」
そう言ってシルヴィはロキの耳元に口を近づけた。
「それに君、僕にこうされるのだってまんざらじゃないでしょ?」
「!!」
「ふふ、じゃあね?」
最後にロキの耳を加えて少し舐めてフッと息を吹きかけ、ロキからシルヴィは離れた。
「ひゃっ!?」
ロキはそんな時可愛らしい声を出して耳を抑えて振り返ったが、そこにシルヴィの姿はすでになかった。
すぐにロキはモンスターがこちらを向いていないのを確認して、ホッとため息をついた。
「……ん?どったん?ロキ?」
「いやっ!?」
「どぅえぇっ!?」
互いの声に驚いた二人はへんな悲鳴を出して叫んだ。
「な、な、なななんだ?」
「え、いや、何もないけど……どったん?びっくりするぐらい真っ赤やで?」
「………き、気にするな、すぐに戻る」
「……あっそ」
そう言って与一はため息を吐くと、残った箱を思い出したかのように服を変形させて一気に持っていった。
「……恨みますよ……シルヴィ……」
そう言ってロキは、シルヴィに舐められたほのかに紅茶の匂いがする耳元を抑えながら、何故かさらに真っ赤になってそう呟いた。
「皆さん、本当にありがとうございました!」
「えやえや、どーって事ないですよ!頭上げてくださいよ!」
「お兄ちゃん達ありがとう!」
「え、えやー……」
「グガギゴゲゲ」
キホシィの両親の他にも多種多様な種族の首輪をつけられた奴隷達が与一達に頭を下げていた。
「まぁまぁ、とりあえずここから出ましょうか?」
「は、はい……あの、あのモンスターは?」
「あ、あぁ~あれね~」
与一はどう説明したものかと少し首を捻っていると、
ワールドが与一の後ろに立っている巨大な人影に気がついた。
「ほれ、背後におるぞ?」
「へ?」
与一は振り返ってみると、3メートルはあろうかという巨体に丸太のような手足をスーツで覆ったようなシルクハットを被った男が立っていた。
「わ、わ、わったふぁーふぁー……」
与一はそう呟くと、一方後ずさった。
すると、大男は与一の手を掴むと、与一の手のひらに何かを置いて握らせた。
それを見て与一は納得したように頷いた。
「おまえ……おまえなのか!?」
大男は表情を変える事なく頷いた。
「あー、おっけ、理解した」
「にーちゃん?一人で勝手に理解しやんといてくれる?」
「あー、分かった、じゃあ説明な、まず第一にこいつが……」
と、言ったところでフラフラと熱っぽい妖艶な表情をしたロキが与一の口を手で閉じさせた。
「黙ってろ……あとで私が説明するからおまえは黙ってろ」
「………ふぅー……」
与一は分かったと言わんばかりにため息を吐くと、ロキの手をはがした。
「あとで話すわ」
「……はいはい」
その様子を見てた俊明含めワールド達は首を横に振りながらそれを了承した。
「で、これからどうするのよ?」
そして、今まで黙っていたノヴァが口を開いた。
「……貴方達に一つ質問する、あの場所に戻ろうものならまたあの商人達のような輩が来ると思う、それは分かってるか?」
奴隷の人たちは少しざわついたのちほぼ全員が首を縦に振った。
「なら、あの場所に未練はあるだろうが新しい場所に移動しなければならない。違うか?」
またしても奴隷の人たちは首を縦に振った。
「ならば、私達が新しい場所を用意しよう、ただし条件をつける」
少し奴隷の人たちがざわめく中ロキは、言って続けた。
「一つ、向こうでは基本自由に生きることができるが向こうでの最低限のルールとかにはしたがってもらう
二つ、向こうに行けば帰ってくることができるが、かなりの量の手続きを踏まなきゃならない。と、まぁこんなものかな?」
ロキはそう言いながら手に持っている何かで鍵を遊んでいた。
「……衣食住は?」
「まずは最低限のものは支給される、仕事は自分達で見つけろ、慣れないこともあるだろうが向こうの人間は基本優しい、聞けば教えてくれるだろう」
「住んでいたところに取りに行きたいものがあるのだが……」
「取りに行きたいものがあるやつらは向こうで申告しろ、できる限り早くに対処してくれるだろう」
「………」
奴隷の人たちが黙ったのを見てロキ派満足そうに笑った。
「ならばおまえ達を天文館に……」
「子供がまだ向こうにいるかもしれないんです!」
すると、奴隷達の中からボロボロになっている羽の生えた男と女が出てきた。
「……名前は?」
「キホシィとメレニィです……」
「あー、その子達なら……」
「我々が連れてきた」
と、ロキがそこまで話したところでフォール達がキホシィ達を連れてやってきた。
「行くなら急げ、ギルドのやつらが奴隷を奪還しようとこの洞窟の中を探索し始めた」
「分かった」
「「パパ!ママ!」」
すると、ロキとフォールの間を走り抜けてキホシィとメレニィは二人の両親のところまで走っていった。
「ああ!お前たち……!」
四人は再開の涙を流していた。
「お兄ちゃんたち……エグッ……ありがどゔ……!」
「ありがとうございました……!」
「You’re welcome 」
と、与一は驚くぐらい発音良くそう言うと、人差し指と中指を揃えてピッと挨拶をした。
「……チャーオー」
そして、最後に与一はそう言ったのと同時に洞窟の壁に向こう側に広い森が見える草原へと続く異次元への穴が開いた。
「これをくぐると大丈夫だ、行け」
そう言ってロキはキホシィたちを促した。
キホシィ達は涙がらにその穴をくぐって行った。
最後にキホシィとメレニィは振り返ると、
「「また会える?」」
と、
「……さぁ?また会いたいって本気で思うんやったらいけるんちゃう?」
と、与一はとてもいい笑顔で二人を見送った。
「……閉じちゃったね……」
「うん……ヨイチさんには悪いことをしたなぁ……」
「ふふっ、だってキホシィ……」
「やめてー!パパ、ママちがうの!」
「ふふ、分かってるさ」
「分かってるわよ」
「あぁ!もう!」
そう言っているとキホシィ達の前に疲れた表情をしている青年が空の上から降ってきた。
「………さて、まずは住むところから行きましょうか」
青年は空に浮かぶ何か船のようなものを恨めしげに睨むと、諦めたように溜息をついてそう言った。
「……キホシィ?」
「なに?」
二人は青年に詰め寄る大人達から少し離れた所で岩に腰掛けながら話し合っていた。
「ヨイチさん達にまた恩返ししないとね……」
「そうね……」
「「それに、あの人達楽しそうだったしね……」」
「「……ふふふ」」
「お前達はこの世界の外を旅したいのか?」
「「きゃっ!!」」
後ろから声をかけられた二人は飛び上がった。
「あぁ、すまない……、俺はこの大陸を管理する管理者だ。お前達の話の流れを聞くに、外の世界を旅する奴らとまた会いたいとのことだったが……」
「そ、そうよ……」
「キ、キホシィ……この人仮面つけてるし危ないんじゃないの?」
「そ、そうね……」
「まぁ、話は最後まで聞け、とりあえず今のお前達じゃあ外の世界はまだ早い、だからまずは色々と学び成長しろ、それからまだ外の世界に興味があるなら、ここに来い」
そう言って鳥のくちばしのようなものがついた仮面をつけた男がは二人に何かチケットのようなものを渡した。
「俺はテンドウ リョウヤ、ではまた会おう」
そう言うと、その男は地面に溶けるように崩れ落ちると、液体状のまま青年の近くまで這って行った。
「「……」」
二人はあっけにとられたままだったが、チケットの裏を見てさらに眉をひそめた。
『最高級料理店『ヘイブン』ご招待券』
と、書かれていた。
「「……ま、まぁ頑張ろっか?」」
二人は首を傾げながら謎の男について考えを巡らせた。
「……行っちゃったなぁ」
「向こうは安心できる」
「ん………」
少しの間感傷に浸っていると、背後から幾多もの足音が聞こえた。
「フォール!そっちはどうだっ……ああ!そんな!」
部屋に飛び込んできた鎧を着た男は部屋の中身を見たのと、感傷的な空気になっていたのを、勘違いしたのか、
「くそっ!間に合わなかったか!」
と、壁を叩いた。
「……残念ながら我々が着た頃にはもう……」
「……そうか……そちらは?」
フォールはしめた、とばかりに残念そうに男にそう言った。
「こちらは……色々あって大市場まで共にすることになったロキ等一行だ」
「ども」
与一はそう言って軽く頭を下げた。
「あぁ、貴方達も手伝ってくださっていたのですか……見るにギルドに所属していない模様で……それなのに有難うございます」
与一はロキの方をちらりと見た。
「……ええ、私達はギルドに属さず活動してるものでして」
「成る程……まぁ、たしかにギルドとかでのしがらみとかもありますしね」
「ええ……」
「まぁ、人それぞれですしね……さて、ここに居たであろうモンスターですがどうやらここにはもう居ないみたいですね?」
「あ、あぁ、だといいが……」
「ここの洞窟は立ち入り禁止にしましょう、そしてモンスターには懸賞金をかけるといたしましょう、さぁ、この呪われた洞窟から出るといたしましょう」
そう言うと男は中を一瞥すると頷いて、ロキ達を促した。
「そうだな、お前等出るぞ、ここにもういる必要はない」
「ウィ」
「はいはーい」
「分かった」
「りょーかい」
「……」
そうしてロキ達は洞窟から出ると生き残った商人達から感謝の嵐を贈られた。
「有難うございます!有難うございます!」
「あのモンスターにもうすぐで殺されるところでした……!」
「あ、いえ、はい……」
与一達は巨大な男を尻目に見ながら、ひくひくと顔を引きつらせて頷いた。
そして、一通り謝礼金とお礼を貰うとそそくさと列車の中に引っ込んだ。
「……で?そいつなんなん?」
列車に入るなり、俊明は疑問げにロキにそう問いただした。
「あ、そうだったな、こいつが仲間になりたがっている三つめの理由だったが、これを見ろ」
そう言ってロキはボロボロの貫頭衣の隙間からコーラの便の蓋を取り出してそれを俊明に投げつけた。
「それはそいつが箱の中のものを食ってる所で私にぶん投げてきたものだ」
「いつのまに……」
「にーちゃんこれ……」
「あ?………あ"?」
そう言って与一は信じられないと目を見開いた。
「コイツ文字を書けるのか!?」
与一が見ていた瓶の蓋には『同行する』と小さく書かれていた。
「うわぁ!ホントだ!しかも字めちゃくちゃ綺麗じゃないか!」
「ええ、驚くぐらい丁寧な字ね」
ユウラビ達も驚きながら蓋に書かれた文字をまじまじと見ていた。
「おそらくコイツは話すことができない、そうだろ?」
男はゆっくりと頷いた。
「だってよ」
「マジか、やけどなんでなん?」
すると、男はロキに向かって空中に何か文字を書くとロキは貫頭衣の隙間からどこにそんなものが入っていたのかタブレットを取り出して男に渡した。
そして、男はタブレットに指で何かを書くと与一達の方を向けた。
『世界を見たい、もうあの場所には居られない、ならば世界を見たい』
と、男はが書いたタブレットにそう書いてあった。
「……」
与一達は意外そうに男を眺めて、そして、与一は男に手を差し出した。
「やったらよろしくやで、まぁ、仲良くいこや」
と、ニヤリと笑いながら手を差し出した。
「……」
すると、男も何かを感じたのか少し笑って与一の手を握った。
「さて、コイツの名前だが無いんだろ?」
と、ロキが言ったのに男は頷いた。
「イエティはなんかアレだからな……よし、私のフィーリングでビートはどうだ?」
「……」
ロキはモンスターの顔を覗き込んだ。
「…………」
しばらく考えるようなそぶりを見せた後、モンスターはゆっくりと頷いた。
「オッケーみたいやな」
「よぉし!どうだ見たか!私だって名前のセンスぐらいあるんだよ!」
「はいはい……」
ノヴァがそう言って呆れる中、与一はパンと手を打った。
「んだらロキさんや、次の目的地に向かおうやんか?」
「おう、そうだな、だがその前にこの先にある街で少し休憩をしようじゃ無いか?お前達疲れただろ?」
与一達は揃って首を縦に振った。
「この山は一応活火山でもあってな、先の街で温泉に入れるぞ」
『へぇ~』
全員がそう言って感心するのを聞くとらロキは、少し笑って、
「男子ども覗くなよ?」
と、悪戯っぽく笑ってボロボロの貫頭衣の下の肌が多く見えるようにふわりと浮かび上がって、妖艶な表情をした。
「……ロキ……」
「なんだ?」
「流石にわきまえれるで?」
「!!」
俊明のその言葉に一同どっと笑うのだった。
その場にいる全員ロキの判断に口をあんぐりと開けた。
「ま、まじでいってん?」
「大マジだ。理由は三つ、一つはコイツは使える、私達が束になっても勝てない奴だ、そしてこの場の誰より力が恐らく強い、これだけで大きなアドバンテージだ」
「まぁ確かに」
「二つ目、コイツは今進化している」
『は?』
「まぁまて、コイツの今食ってるやつはな、天文館でもあまりその性質上出回ることのない『超希少食材』で、まぁ結論を言えばコイツを食えばかなり強くなることができる」
「グガゲゲグゲ?」
「大マジだって言ってるだろ?三つ目、コイツには私たちの仲間になる意思がある。その根拠は……まぁ、それはまた後でだな」
そう言ってロキは与一の方をちらりと見た。
「……分かった、んだらキホシィ達の親御さん助けるといたしんしょうかね?」
と、言って与一は箱を二つほど抱えて親御さん達のいる洞窟へと向かっていった。
「………はぁ」
そして、俊明もそれに続くように箱を一つ持つと、与一の後に続いた。
それを見たワールド達もチラチラとモンスターの方を振り返りながら箱を持って親御さん達の方へと向かった。
「さて、この後どうするつもりだい?」
「だからいきなり出てきたら心臓に悪いって何遍言ったら分かるんですか?」
「ふふふ、ごめんねそうやって怒る君が可愛くてさ?」
「……私はやめてくださいよ?」
「嫌だよ」
「即答ですかい……」
「だってこんなにも可愛い君を離すなんて考えられないもん」
「あっ!ちょっ!頭撫でないで!」
「可愛いなぁ~君は」
「う~~~!」
ロキはペシペシとシルヴィの背中を叩いた。
「ははは、ごめんよ?」
そう言ってシルヴィはロキから離れると、優雅に空中に座って紅茶を飲み始めた。
「……商人が全員死んでたら話は早かったんですけどね……なまじ何人か生き残ってるからどうしようかと」
「殺しちゃえば?」
「与一が許さんでしょうに、それにそのやり方はソウヤが一番嫌ってるやり方でしょう?」
「分かってるようで何よりだよ」
ロキは自分を常に試すような口ぶりをする魔女を、横目に見ながら続けた。
「私の考えではシルヴィ、貴方が解決の鍵を持ってるんじゃないですか?」
「あったりー」
そう言ってシルヴィは立ち上がるとロキに何か手渡した。
「これは天文館への鍵だよ、彼女達に使ってあげるといいさ」
そう言ってシルヴィはロキの耳元に口を近づけた。
「それに君、僕にこうされるのだってまんざらじゃないでしょ?」
「!!」
「ふふ、じゃあね?」
最後にロキの耳を加えて少し舐めてフッと息を吹きかけ、ロキからシルヴィは離れた。
「ひゃっ!?」
ロキはそんな時可愛らしい声を出して耳を抑えて振り返ったが、そこにシルヴィの姿はすでになかった。
すぐにロキはモンスターがこちらを向いていないのを確認して、ホッとため息をついた。
「……ん?どったん?ロキ?」
「いやっ!?」
「どぅえぇっ!?」
互いの声に驚いた二人はへんな悲鳴を出して叫んだ。
「な、な、なななんだ?」
「え、いや、何もないけど……どったん?びっくりするぐらい真っ赤やで?」
「………き、気にするな、すぐに戻る」
「……あっそ」
そう言って与一はため息を吐くと、残った箱を思い出したかのように服を変形させて一気に持っていった。
「……恨みますよ……シルヴィ……」
そう言ってロキは、シルヴィに舐められたほのかに紅茶の匂いがする耳元を抑えながら、何故かさらに真っ赤になってそう呟いた。
「皆さん、本当にありがとうございました!」
「えやえや、どーって事ないですよ!頭上げてくださいよ!」
「お兄ちゃん達ありがとう!」
「え、えやー……」
「グガギゴゲゲ」
キホシィの両親の他にも多種多様な種族の首輪をつけられた奴隷達が与一達に頭を下げていた。
「まぁまぁ、とりあえずここから出ましょうか?」
「は、はい……あの、あのモンスターは?」
「あ、あぁ~あれね~」
与一はどう説明したものかと少し首を捻っていると、
ワールドが与一の後ろに立っている巨大な人影に気がついた。
「ほれ、背後におるぞ?」
「へ?」
与一は振り返ってみると、3メートルはあろうかという巨体に丸太のような手足をスーツで覆ったようなシルクハットを被った男が立っていた。
「わ、わ、わったふぁーふぁー……」
与一はそう呟くと、一方後ずさった。
すると、大男は与一の手を掴むと、与一の手のひらに何かを置いて握らせた。
それを見て与一は納得したように頷いた。
「おまえ……おまえなのか!?」
大男は表情を変える事なく頷いた。
「あー、おっけ、理解した」
「にーちゃん?一人で勝手に理解しやんといてくれる?」
「あー、分かった、じゃあ説明な、まず第一にこいつが……」
と、言ったところでフラフラと熱っぽい妖艶な表情をしたロキが与一の口を手で閉じさせた。
「黙ってろ……あとで私が説明するからおまえは黙ってろ」
「………ふぅー……」
与一は分かったと言わんばかりにため息を吐くと、ロキの手をはがした。
「あとで話すわ」
「……はいはい」
その様子を見てた俊明含めワールド達は首を横に振りながらそれを了承した。
「で、これからどうするのよ?」
そして、今まで黙っていたノヴァが口を開いた。
「……貴方達に一つ質問する、あの場所に戻ろうものならまたあの商人達のような輩が来ると思う、それは分かってるか?」
奴隷の人たちは少しざわついたのちほぼ全員が首を縦に振った。
「なら、あの場所に未練はあるだろうが新しい場所に移動しなければならない。違うか?」
またしても奴隷の人たちは首を縦に振った。
「ならば、私達が新しい場所を用意しよう、ただし条件をつける」
少し奴隷の人たちがざわめく中ロキは、言って続けた。
「一つ、向こうでは基本自由に生きることができるが向こうでの最低限のルールとかにはしたがってもらう
二つ、向こうに行けば帰ってくることができるが、かなりの量の手続きを踏まなきゃならない。と、まぁこんなものかな?」
ロキはそう言いながら手に持っている何かで鍵を遊んでいた。
「……衣食住は?」
「まずは最低限のものは支給される、仕事は自分達で見つけろ、慣れないこともあるだろうが向こうの人間は基本優しい、聞けば教えてくれるだろう」
「住んでいたところに取りに行きたいものがあるのだが……」
「取りに行きたいものがあるやつらは向こうで申告しろ、できる限り早くに対処してくれるだろう」
「………」
奴隷の人たちが黙ったのを見てロキ派満足そうに笑った。
「ならばおまえ達を天文館に……」
「子供がまだ向こうにいるかもしれないんです!」
すると、奴隷達の中からボロボロになっている羽の生えた男と女が出てきた。
「……名前は?」
「キホシィとメレニィです……」
「あー、その子達なら……」
「我々が連れてきた」
と、ロキがそこまで話したところでフォール達がキホシィ達を連れてやってきた。
「行くなら急げ、ギルドのやつらが奴隷を奪還しようとこの洞窟の中を探索し始めた」
「分かった」
「「パパ!ママ!」」
すると、ロキとフォールの間を走り抜けてキホシィとメレニィは二人の両親のところまで走っていった。
「ああ!お前たち……!」
四人は再開の涙を流していた。
「お兄ちゃんたち……エグッ……ありがどゔ……!」
「ありがとうございました……!」
「You’re welcome 」
と、与一は驚くぐらい発音良くそう言うと、人差し指と中指を揃えてピッと挨拶をした。
「……チャーオー」
そして、最後に与一はそう言ったのと同時に洞窟の壁に向こう側に広い森が見える草原へと続く異次元への穴が開いた。
「これをくぐると大丈夫だ、行け」
そう言ってロキはキホシィたちを促した。
キホシィ達は涙がらにその穴をくぐって行った。
最後にキホシィとメレニィは振り返ると、
「「また会える?」」
と、
「……さぁ?また会いたいって本気で思うんやったらいけるんちゃう?」
と、与一はとてもいい笑顔で二人を見送った。
「……閉じちゃったね……」
「うん……ヨイチさんには悪いことをしたなぁ……」
「ふふっ、だってキホシィ……」
「やめてー!パパ、ママちがうの!」
「ふふ、分かってるさ」
「分かってるわよ」
「あぁ!もう!」
そう言っているとキホシィ達の前に疲れた表情をしている青年が空の上から降ってきた。
「………さて、まずは住むところから行きましょうか」
青年は空に浮かぶ何か船のようなものを恨めしげに睨むと、諦めたように溜息をついてそう言った。
「……キホシィ?」
「なに?」
二人は青年に詰め寄る大人達から少し離れた所で岩に腰掛けながら話し合っていた。
「ヨイチさん達にまた恩返ししないとね……」
「そうね……」
「「それに、あの人達楽しそうだったしね……」」
「「……ふふふ」」
「お前達はこの世界の外を旅したいのか?」
「「きゃっ!!」」
後ろから声をかけられた二人は飛び上がった。
「あぁ、すまない……、俺はこの大陸を管理する管理者だ。お前達の話の流れを聞くに、外の世界を旅する奴らとまた会いたいとのことだったが……」
「そ、そうよ……」
「キ、キホシィ……この人仮面つけてるし危ないんじゃないの?」
「そ、そうね……」
「まぁ、話は最後まで聞け、とりあえず今のお前達じゃあ外の世界はまだ早い、だからまずは色々と学び成長しろ、それからまだ外の世界に興味があるなら、ここに来い」
そう言って鳥のくちばしのようなものがついた仮面をつけた男がは二人に何かチケットのようなものを渡した。
「俺はテンドウ リョウヤ、ではまた会おう」
そう言うと、その男は地面に溶けるように崩れ落ちると、液体状のまま青年の近くまで這って行った。
「「……」」
二人はあっけにとられたままだったが、チケットの裏を見てさらに眉をひそめた。
『最高級料理店『ヘイブン』ご招待券』
と、書かれていた。
「「……ま、まぁ頑張ろっか?」」
二人は首を傾げながら謎の男について考えを巡らせた。
「……行っちゃったなぁ」
「向こうは安心できる」
「ん………」
少しの間感傷に浸っていると、背後から幾多もの足音が聞こえた。
「フォール!そっちはどうだっ……ああ!そんな!」
部屋に飛び込んできた鎧を着た男は部屋の中身を見たのと、感傷的な空気になっていたのを、勘違いしたのか、
「くそっ!間に合わなかったか!」
と、壁を叩いた。
「……残念ながら我々が着た頃にはもう……」
「……そうか……そちらは?」
フォールはしめた、とばかりに残念そうに男にそう言った。
「こちらは……色々あって大市場まで共にすることになったロキ等一行だ」
「ども」
与一はそう言って軽く頭を下げた。
「あぁ、貴方達も手伝ってくださっていたのですか……見るにギルドに所属していない模様で……それなのに有難うございます」
与一はロキの方をちらりと見た。
「……ええ、私達はギルドに属さず活動してるものでして」
「成る程……まぁ、たしかにギルドとかでのしがらみとかもありますしね」
「ええ……」
「まぁ、人それぞれですしね……さて、ここに居たであろうモンスターですがどうやらここにはもう居ないみたいですね?」
「あ、あぁ、だといいが……」
「ここの洞窟は立ち入り禁止にしましょう、そしてモンスターには懸賞金をかけるといたしましょう、さぁ、この呪われた洞窟から出るといたしましょう」
そう言うと男は中を一瞥すると頷いて、ロキ達を促した。
「そうだな、お前等出るぞ、ここにもういる必要はない」
「ウィ」
「はいはーい」
「分かった」
「りょーかい」
「……」
そうしてロキ達は洞窟から出ると生き残った商人達から感謝の嵐を贈られた。
「有難うございます!有難うございます!」
「あのモンスターにもうすぐで殺されるところでした……!」
「あ、いえ、はい……」
与一達は巨大な男を尻目に見ながら、ひくひくと顔を引きつらせて頷いた。
そして、一通り謝礼金とお礼を貰うとそそくさと列車の中に引っ込んだ。
「……で?そいつなんなん?」
列車に入るなり、俊明は疑問げにロキにそう問いただした。
「あ、そうだったな、こいつが仲間になりたがっている三つめの理由だったが、これを見ろ」
そう言ってロキはボロボロの貫頭衣の隙間からコーラの便の蓋を取り出してそれを俊明に投げつけた。
「それはそいつが箱の中のものを食ってる所で私にぶん投げてきたものだ」
「いつのまに……」
「にーちゃんこれ……」
「あ?………あ"?」
そう言って与一は信じられないと目を見開いた。
「コイツ文字を書けるのか!?」
与一が見ていた瓶の蓋には『同行する』と小さく書かれていた。
「うわぁ!ホントだ!しかも字めちゃくちゃ綺麗じゃないか!」
「ええ、驚くぐらい丁寧な字ね」
ユウラビ達も驚きながら蓋に書かれた文字をまじまじと見ていた。
「おそらくコイツは話すことができない、そうだろ?」
男はゆっくりと頷いた。
「だってよ」
「マジか、やけどなんでなん?」
すると、男はロキに向かって空中に何か文字を書くとロキは貫頭衣の隙間からどこにそんなものが入っていたのかタブレットを取り出して男に渡した。
そして、男はタブレットに指で何かを書くと与一達の方を向けた。
『世界を見たい、もうあの場所には居られない、ならば世界を見たい』
と、男はが書いたタブレットにそう書いてあった。
「……」
与一達は意外そうに男を眺めて、そして、与一は男に手を差し出した。
「やったらよろしくやで、まぁ、仲良くいこや」
と、ニヤリと笑いながら手を差し出した。
「……」
すると、男も何かを感じたのか少し笑って与一の手を握った。
「さて、コイツの名前だが無いんだろ?」
と、ロキが言ったのに男は頷いた。
「イエティはなんかアレだからな……よし、私のフィーリングでビートはどうだ?」
「……」
ロキはモンスターの顔を覗き込んだ。
「…………」
しばらく考えるようなそぶりを見せた後、モンスターはゆっくりと頷いた。
「オッケーみたいやな」
「よぉし!どうだ見たか!私だって名前のセンスぐらいあるんだよ!」
「はいはい……」
ノヴァがそう言って呆れる中、与一はパンと手を打った。
「んだらロキさんや、次の目的地に向かおうやんか?」
「おう、そうだな、だがその前にこの先にある街で少し休憩をしようじゃ無いか?お前達疲れただろ?」
与一達は揃って首を縦に振った。
「この山は一応活火山でもあってな、先の街で温泉に入れるぞ」
『へぇ~』
全員がそう言って感心するのを聞くとらロキは、少し笑って、
「男子ども覗くなよ?」
と、悪戯っぽく笑ってボロボロの貫頭衣の下の肌が多く見えるようにふわりと浮かび上がって、妖艶な表情をした。
「……ロキ……」
「なんだ?」
「流石にわきまえれるで?」
「!!」
俊明のその言葉に一同どっと笑うのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
10
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる