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向かうは世界の果て
悪夢の始まり
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「おおはようさん……で?何これ?」
与一は列車から出てくると、列車の前に台車ごと置かれているさまざまなパーツを見てそう言った。
「注文してた雪掻き器だ……つけれるだろ?」
ロキが隣に現れて与一に試させた。
「おっっっっっっっも」
「貧弱だな」
「いやマジで……この……これなかったらやばぃっはぁ!?」
与一は盛大にパーツをひっくり返しながらも列車の前部に取り付けた。
「おいおい……拾えよ?」
「そんぐらいするわ!ったく……あ、とっしー」
与一がぶつくさと文句を言いながら起き上がると、駅のホームに降りてきた俊明を見つけると、
「おいとっしー!とっとと手伝え!」
と叫んだ。
「与一アホなん?何のためのその……それなん?」
「あっ………はいウィーン」
与一はまとっていた上着を変形させて人型の形にすると、それにパーツを拾わせてそれをテキパキと列車に着けさせた。
「かんろ」
そう言った与一は鼻の辺りを拭って、ため息をついた。
「さ、後は何待ち?」
「お見送りすらさせてくれないの?」
与一はその声に振り返ると、しまったという顔をした。
「まぁ……正直に見送ってくれるとは思っとらんかったから」
「……そういう事にしとくわ」
リーチェはやれやれと首を振ってユーリに持たせていたものを与一に渡した。
「ヨイチには色々とお世話になったからね、これ、私達特製のやつ、あげる」
「これは……?」
与一は手のひらに乗っている包まれた袋を解いた。
「ヨイチはなんか作ったりする事多さそうだしさ?中々壊れにくいこの国でも一番いい金属使ったのよ?」
そして与一の掌には少し大きめのハンマーがあった。
「それに君は戦ったりすることも多そうだしね、一応電の魔法は……まぁ、握ってみなよ」
言われた通りに与一はハンマーの柄の部分を片手で握った。
すると、ハンマーにパリッと電流が流れた。
「うん、ちゃんと動いてるわね」
リーチェとユーリは満足そうに微笑むと、与一の肩をバンと叩いた。
「分かるよ……これがきっと最後って……だからもう一つぐらい渡したかったんだけどね……」
「流石にもうお金すっからかんよ」
「あぁ……す……ありがとな?」
「「いいって事よ、だよ!」」
二人はそう言ってニッと笑った。
与一は照れ臭そうに頭を掻くと、ペコリと頭を下げた。
「……じゃあ」
「うん、またね」
「また会おう!僕たちはもう友だろう?」
「んん………何や……照れ臭いな」
二人はクスリと笑うと与一をドンと押した。
「行きたまえ!君はきっともっともっと世界に貢献できる人だ!そうだろう!?」
「うん、貴方はもっと輝けるわ!太陽よりも明るい何かになれるわ!」
「太陽よりも明るいヤツって何やねん……」
「「分かってるだろ、でしょ?」」
「…………………………」
与一は頭を頭を描いてため息をついた。
「出来る限りはやっとくわ」
「それで良いわ」
「くっくっく、知ってるさ、君の出来る限りは誰以上に全力だってね?」
与一は周りに誰も居ないことを確認すると、
「誰や」
と言った。
「あらあら、今更?とっくに気づいてると思ってたんだけど?」
「そうだね、流石に分かりやすかったとは思ったけどここまで鈍感だとは……」
ユーリはやれやれと首をふった。
「……………誰や」
「貴方それしか言えないの!?」
「まぁまぁ、今回は本当にそうみたいだし、仕方ないじゃないか」
「俺を置いて話を進めんなや……」
「ふふ……そうねぇ……うーん……まぁ良いわ、取り敢えず今渡したのは……」
「良いのかい?それを言ってほぼ答えみたいな物だろう?」
「良いじゃない、どうせバラバラになった物の大きな破片なんだから、どうせくっついて思い出すわ」
「そうだね……今はこの二人の体を借りてるけど、それも長くは無さそうだしね……今渡したのは君が昔ここに不要と言って落としていったものさ、今の君にはきっと必要な物だろうから、大事にすると良いよ」
そう言ってユーリに乗り移った誰かは与一に渡したハンマーを指さした。
「…ん、そろそろだね」
「そうね、短い時間だったけど、久々に話せて楽しかったわ?」
そう言うと二人は与一が何かを言い出す前にハッとした。
与一は素早く服を変形させてハンマーを腰に新たに作った銃のホルスターの隣に入れた。
「………ん」
「あれ?私ユーリと話してる間にいつのまにか着いちゃってたみたい」
二人は気が目をパチクリとさせると、与一が目の前にいるのに気がついた。
「ヨイチ、私達何か変なこと言ってたかしら?」
「……えーや?なーんも?」
与一はそう言って笑うと、ポケットに手を突っ込んだ。
「そうそう!私達から渡したいものがあるの!これ!」
二人は袋に包まれた布のようなものを与一に渡した。
「貴方、服のセンスがアレだから、これを着なさい?」
「君はアレだろう?服なんか着れたら何でも良いって感じだろう?」
「うっ」
「ふふっ……特別なのものじゃないけど、少しは格好が付くんじゃないかしら?その上から一応羽織れるものよ、この先さらに寒くなるからね」
与一は渡された服を変形する服の上から更に羽織った。
「……うん、中々似合うじゃない」
「そうだね、僕ほどじゃ無いけどね」
「えー」
「えっ?」
二人がイチャイチャし始めたのを見て与一は咳払いをした。
「あっ………ご、ごほん……そ、そうえばユウラビ達も見送りに来るって聞いたんだけど……」
「よぉぉぉぉぉぉいち!」
「うっ!?」
与一はユウラビからのタックルをもろに喰らうと、そのままひっくり返った。
「全く……それでこの先大丈夫なのか?」
「まぁ、あの竜巻の中何だかんだ言って無事だったみたいだし……大丈夫なんじゃないの?」
「お嬢、それマジすか?」
「本当だとしたらエゲツないワイナ、アレグレード5ぐらいはあったワイナ」
与一がひっくり返っていると、フォール達がやってきた。
「……で、吹っ飛ばした本人は……」
「きゅう……」
与一はゆっくりと体を起こすと、目の前でゴジガジに抱かれて気絶していた。
「………ッスーーーーー」
与一は気まずそうにしていると、ゴジガジは与一を手で制すと、ペチペチとユウラビの顔を叩いた。
「ゴゲィ、ゴゲィ………ゴギゲゴゴグギゲ」
「ん………あれ?私与一に突撃したんだけど……足を滑らして……あっ、ヨイチは?」
「「………」」
与一は頭をバリバリと掻くと、ぶっきらぼうに、
「お見送りに来てくれたんけ?」
と言った。
「う、うん……でもね!聞いてよ!」
と、ユウラビは嬉しそうにそう言うと、隠し切れていない後ろ手に持った荷物を前に出して、
「私とゴジガジはついていく事にしたの!」
と、満面の笑みでそう言った。
「ふーん………」
「むー……」
ユウラビは与一に向かって膨れっ面をすると、与一のスネを思いっきり蹴った。
「んんんんんんんん!!」
与一はスネをさすると、ユウラビの頭に軽いチョップをした。
「加減んんんんんをせぇ!」
しかし、ユウラビは膨れっ面のままそっぽを向いた。
「……」
「おっ、来たか」
すると、与一の隣にロキがいつも通りいつの間にか現れた。
「さて、わかってると思うが、これからユウラビが私達の旅について来る事になった」
「結構な間戻られへんことは?」
「分かってる」
「他の文化ちゃう世界に行くかもしれんことは?」
「分かってるってば」
与一はロキを暫くジト目で見ると、ため息をついた。
「コラ、ため息をついては幸せが逃げていくってよく言いますよ?」
「こんな奴の心配をするなんて時間と考慮の無駄カモ」
「それよりも忘れものはしてないカナ?」
与一はその声がする方を向いた。
そこにはカナとカモとそしてアスターがいた。
「……暫く見てへんだけど、何しとったん?」
「暫く三人でゆっくりしたかったので、町の外れの隠れ家に……」
「お前ら……」
ロキが額に手を当てて項垂れたが、ふるふると首を横に振った。
すると、列車が蒸気を吹き上げた。
「時間だ、別れの言葉ぐらい言っとけよ」
そう言うと、ロキは運転室の方へと歩いて行った。
「……ヨイチ」
すると、フォールが与一に声をかけた。
「今はユウラビと一緒に行ってやれないが、私達もすぐに行く……それまで……頼むまでもないと思うが、ユウラビ達を頼んだ」
与一はフォールの真剣な目と声色に少し怯みながらも、頷いた。
「分かった」
すると、フォールは与一の方に手を差し出した。
「仲直りだ」
「………ふっ」
与一は顔を綻ばせると、フォールの手を握った。
「じゃあな、暫くの別れだ」
「ギルド抜けて大丈夫なん?」
「まぁ、一気に抜けるのはアレだから、順番だ」
そして、与一はバーゲン達の方を向いた。
「……まぁ、そう言うことよ、貴方頭でっかちなんだから頭狙い撃ちされない様に気をつけなさいな」
「お嬢達が殆ど言っちまったが、俺も少しの間だったがてんやわんやできて楽しかった」
「色んな新しいことを知ったワイナ、やっぱり人生は冒険してこそワイナ、ヨイチ、どんな時でも冒険心は忘れちゃダメワイナ」
「……アスターに……ヴィクトリアに何吹き込んだか分からなけど、もしあの子に何かあったら死んでても殺しに行くから覚悟しとくカナ?」
「もし、何かあったら問答無用でブチ殺すカナ、でも、私達を助けてくれてありがとう」
与一はリーチェ達と握手をすると、列車に乗り込んだ。
「ほいだら、皆んなありがとうな」
「水臭いこと言いなさんな、旅は道連れ」
「世は情けワイナ」
そして、列車が汽笛を上げて動き出した。
「じゃあなーー!!」
「「またねー!!」」
『さよならー!!』
与一は服の一部を帽子に変えると、それをフリフリと振った。
そして、駅を出た列車は町の塀の外に出ると、雪原を雪を掻き分け、吹き飛ばしながら進んみ出した。
「……見えなくなっちゃったね」
「意外にも早く見えなくなってしまいましたね?」
アスターの言葉通り雪原の彼方に消えて行った街を与一は名残惜しそうに見ていると、その街の方から衝撃波が飛んできた。
「ふせい!」
与一は窓を閉めて、二人に覆いかぶさるように服を変形させて、窓を補強するように余った所で服を変形させた。
与一は踏ん張るようにして堪えると、衝撃波が過ぎて行ったのを確認すると、窓の外を見た。
すると、街の方から煙が上がっているのが見えた。
「ロキィ!」
『待て待て今見てる……なんじゃありやぁ!?』
列車の中のマイクから発せられる珍しくロキが動揺する声に与一は驚いたような顔をしたが、直ぐに、
「列車を戻せ!」
と、叫んだ。
『分かってる!どうせ反対しても全員戻るって言うんだからな!』
その声と共に列車が急停止すると、車輪が火花を散らしながら反対に回り始めた。
「急げ!」
『分かってるっての!給仕隊以外の奴らは大広間に30秒後に集合!何があったかモニターで説明する!』
「わぁった!」
与一は二人について来いと言うと、運転室の真後ろの車両に入ると既に与一達以外が集まっていた。
「20秒……余裕で早かったな、よし、まずは皆んなこれを見てくれ」
ロキは真ん中のテーブルに杖を突き立てると、そこに人型のロボットのようなホログラムが現れた。
「ロボット?」
見たまんまの感想を述べた俊明は顔をしかめると、列車から出ようとした。
「待て!これは動画なんだが、問題はこの後だ」
ロキはそう言って、ロボットのホログラムのようなものを杖て叩いた。
すると、ロボットが動き出して、観察部分から肉々しい何かが出てきてロボットの外殻を覆った。
「なんじゃこりゃ……」
「この中からは高次元の悪魔の反応が出てきた、恐らくどっかのバカがあくまでかなんかに力を借りてあの機体をこの世界に呼んだんだろ」
そう言ってロキはホログラムを閉じた。
「予想できる有効な攻撃方法は炎を使った攻撃だ……で、此処からはお前らの好きにしろ一応この列車は街の外を走る環状の線路の上を走らせるつもりだ」
ワールドは暫く考え込んだ後、
「攻撃隊、我、ヨイチ、トシアキ、ノヴァ、タシト、カミラ各自ヨイチから武器を貸してもらうなり魔法を使って何とかしろ」
そして、続けて、
「もちろん後方の援護も必要だ、ロキ、この列車に遠距離攻撃用の武具は「ある」それを使ってビート、出来れば大きめのヤツがいい、奴に攻撃を、そして回復及び救護及び救助担当、ユウラビ、ゴジガジ、ロキ、アスターでやってくれ」
と、テキパキと指示を出すとワールドは列車を出て屋根に上りに行ってしまった。
皆んなが顔を見合わせる中、与一はパンパンと手を鳴らした。
「はいはい皆んな動く動く、それとも今いい案持ってるよーって人?」
誰も手をあげないのを見ると、与一はうなずくと、
「ほいだら動く!」
と言って与一は箱を全部起動させて全員に片耳に装着させるタイプの無線を渡すと、トシアキを連れてワールドの後を追った。
「……あっはっはっはっはっ!!」
ノヴァは大爆笑すると片耳に無線を突っ込むと大笑いをしながら、列車を飛び立った。
そして、それらの光景を見た他の人物達は肩を竦めながら動き出した。
「……よくやった」
「どんだけ上から目線やねん……」
「ホンマにー大変やってんでー?」
「お前何もしてへんやろ!?」
三人は与一の変形させた望遠鏡で街の様子を見ながらそう言い合っていた。
「さて、与一我に鎧を少し貸せ」
「箱一つ分貸したるわ……壊すなよ!?」
「保証はできかねん」
与一がワールドに箱を一つ丸々投げ渡した後、ワールドはそれを雑に受け取ると、変形させて体に纏った。
「なんや、誰でも使えるやん」
与一は若干ガッカリしながらも両足を磁石で屋根に固定しながら両手で巨大な砲を作っていた。
「しっかり狙え……ノヴァが引き付けてくれておるからな」
「あいあい………偏差計算あるかなぁ……取り敢えずここいらでどうよ?」
そう言って与一は引き金を引いた。
大きな悲鳴がしたかと思えば目の前が真っ白になる様な光を放って、与一が放った弾丸は謎の機体に直撃した。
「大当たりだ」
「ラッキー」
「うっっっさいねんぼけ!」
与一はスコープから目を離して砲を元の服の形に戻した。
「………やはりな」
「やっぱダメ?」
「にーちゃんの用意した弾カスすぎん?」
「しるかぼけ」
三人は望遠鏡を覗き込みながら以外にもあまり驚いて無さそうに話し合っていた。
「だってなぁ、絶対これアレやん、『やったか!?』って言ったら余計強なる奴やろ?」
望遠鏡越しに覗き込んだ機体は大きく傷が付いたのにも関わらず、そこが何もなかったかのように修復された。
「……倒せんのコレ?」
「分からん、取り敢えず周りの肉を焼き払ってそこからだな」
「やねぇ……さっ、そろそろ環状線入るんちゃう?」
「だな、与一車を回せ」
「あいあい」
与一は列車の倉庫から幾らかのパーツを引き出してくると、服の一部を使って強力な装甲車を作り上げた。
与一はそれに飛び乗ると、列車から飛び出して、ワールド達の隣に付けた。
「飛び乗れ!」
二人は直ぐ様飛び乗ると、続いてタシトとカミラ達が乗り込んできた。
「あそこよ、あそこから入りましょう」
カミラが指差した先は塀が崩れて丁度装甲車が通れそうな隙間が空いていた。
「おっさ!飛ばすで!」
与一はアクセルを踏み込むと、煙が上がる街に急いだ。
十分前、街の外れの洞窟内、
「で、出来やした……」
「よ、よくやった……終わったら……全員で……酒……」
と、ゼェゼェと息を切らしながらもどうにか機体を修理した盗賊達は息も絶え絶えに横たわっていた。
「メ、メネシス……今……鐘幾つだ?」
『鐘5つになります』
「マジで!?……も……明日でいっか……」
「そ、そっすね……それにしても皆んな静か……」
「おい……?なんで急に黙って……」
すると、ノマドの目の前に目を真っ赤に充血させて、返り血を浴びまくって真っ赤になった服を着たエルフ男が現れた。
「貴様……よくもやってくれたな……?」
「お前……まだ生きてたのかよ……丁度いい、そこにあそこ占拠するのに丁度良い奴が……何のつもりだ?」
ノマドは喉元に突き立てられた刃を見ながらエルフにそう言った。
「当たり前ではないか……貴様は我らを裏切ったのだ、全員の命で償ってもらうのが当然だと思うのだが?」
そして、エルフの男はノマドの首を切り裂いた。
「今こそ同胞の無念を晴らすのである……5万の命で10万を救うのである!」
そう言って、エルフの男は殺した盗賊達の血で魔法陣を描くと、悪魔を呼び出す呪文を唱え出した。
「は、はは!いいぞ!悪魔よ!我に宿り、宿願を果たすために今一度力を貸すが良い!」
そして、男の体は変形しながら周りの盗賊の死体を吸収して機体を吸収して、洞窟の中でゆっくりと立ち上がった。
そして、洞窟を吹き飛ばして、元エルフの男は街の方を向いた。
「皆殺し……皆殺しである……」
『と、ととととと搭乗者認識……ののののノマドの生体認証完了……まま「魔力」の使用による、生体へのののの、干渉かのうううう』
「ふむ、なるほど………ならば……街の住人達で殺し合いをさせるのもまた一興だな……実行せよ」
『認証……「電磁魔力脳干渉」開始』
そして、とんでもない悪魔の機械が亜音速の唸り声を上げると、衝撃波を放った。
「ふふふふふ、ふはははは!それではいざ行かん!」
こうして、悪魔の機械は街へと足を進めるのだった。
与一は列車から出てくると、列車の前に台車ごと置かれているさまざまなパーツを見てそう言った。
「注文してた雪掻き器だ……つけれるだろ?」
ロキが隣に現れて与一に試させた。
「おっっっっっっっも」
「貧弱だな」
「いやマジで……この……これなかったらやばぃっはぁ!?」
与一は盛大にパーツをひっくり返しながらも列車の前部に取り付けた。
「おいおい……拾えよ?」
「そんぐらいするわ!ったく……あ、とっしー」
与一がぶつくさと文句を言いながら起き上がると、駅のホームに降りてきた俊明を見つけると、
「おいとっしー!とっとと手伝え!」
と叫んだ。
「与一アホなん?何のためのその……それなん?」
「あっ………はいウィーン」
与一はまとっていた上着を変形させて人型の形にすると、それにパーツを拾わせてそれをテキパキと列車に着けさせた。
「かんろ」
そう言った与一は鼻の辺りを拭って、ため息をついた。
「さ、後は何待ち?」
「お見送りすらさせてくれないの?」
与一はその声に振り返ると、しまったという顔をした。
「まぁ……正直に見送ってくれるとは思っとらんかったから」
「……そういう事にしとくわ」
リーチェはやれやれと首を振ってユーリに持たせていたものを与一に渡した。
「ヨイチには色々とお世話になったからね、これ、私達特製のやつ、あげる」
「これは……?」
与一は手のひらに乗っている包まれた袋を解いた。
「ヨイチはなんか作ったりする事多さそうだしさ?中々壊れにくいこの国でも一番いい金属使ったのよ?」
そして与一の掌には少し大きめのハンマーがあった。
「それに君は戦ったりすることも多そうだしね、一応電の魔法は……まぁ、握ってみなよ」
言われた通りに与一はハンマーの柄の部分を片手で握った。
すると、ハンマーにパリッと電流が流れた。
「うん、ちゃんと動いてるわね」
リーチェとユーリは満足そうに微笑むと、与一の肩をバンと叩いた。
「分かるよ……これがきっと最後って……だからもう一つぐらい渡したかったんだけどね……」
「流石にもうお金すっからかんよ」
「あぁ……す……ありがとな?」
「「いいって事よ、だよ!」」
二人はそう言ってニッと笑った。
与一は照れ臭そうに頭を掻くと、ペコリと頭を下げた。
「……じゃあ」
「うん、またね」
「また会おう!僕たちはもう友だろう?」
「んん………何や……照れ臭いな」
二人はクスリと笑うと与一をドンと押した。
「行きたまえ!君はきっともっともっと世界に貢献できる人だ!そうだろう!?」
「うん、貴方はもっと輝けるわ!太陽よりも明るい何かになれるわ!」
「太陽よりも明るいヤツって何やねん……」
「「分かってるだろ、でしょ?」」
「…………………………」
与一は頭を頭を描いてため息をついた。
「出来る限りはやっとくわ」
「それで良いわ」
「くっくっく、知ってるさ、君の出来る限りは誰以上に全力だってね?」
与一は周りに誰も居ないことを確認すると、
「誰や」
と言った。
「あらあら、今更?とっくに気づいてると思ってたんだけど?」
「そうだね、流石に分かりやすかったとは思ったけどここまで鈍感だとは……」
ユーリはやれやれと首をふった。
「……………誰や」
「貴方それしか言えないの!?」
「まぁまぁ、今回は本当にそうみたいだし、仕方ないじゃないか」
「俺を置いて話を進めんなや……」
「ふふ……そうねぇ……うーん……まぁ良いわ、取り敢えず今渡したのは……」
「良いのかい?それを言ってほぼ答えみたいな物だろう?」
「良いじゃない、どうせバラバラになった物の大きな破片なんだから、どうせくっついて思い出すわ」
「そうだね……今はこの二人の体を借りてるけど、それも長くは無さそうだしね……今渡したのは君が昔ここに不要と言って落としていったものさ、今の君にはきっと必要な物だろうから、大事にすると良いよ」
そう言ってユーリに乗り移った誰かは与一に渡したハンマーを指さした。
「…ん、そろそろだね」
「そうね、短い時間だったけど、久々に話せて楽しかったわ?」
そう言うと二人は与一が何かを言い出す前にハッとした。
与一は素早く服を変形させてハンマーを腰に新たに作った銃のホルスターの隣に入れた。
「………ん」
「あれ?私ユーリと話してる間にいつのまにか着いちゃってたみたい」
二人は気が目をパチクリとさせると、与一が目の前にいるのに気がついた。
「ヨイチ、私達何か変なこと言ってたかしら?」
「……えーや?なーんも?」
与一はそう言って笑うと、ポケットに手を突っ込んだ。
「そうそう!私達から渡したいものがあるの!これ!」
二人は袋に包まれた布のようなものを与一に渡した。
「貴方、服のセンスがアレだから、これを着なさい?」
「君はアレだろう?服なんか着れたら何でも良いって感じだろう?」
「うっ」
「ふふっ……特別なのものじゃないけど、少しは格好が付くんじゃないかしら?その上から一応羽織れるものよ、この先さらに寒くなるからね」
与一は渡された服を変形する服の上から更に羽織った。
「……うん、中々似合うじゃない」
「そうだね、僕ほどじゃ無いけどね」
「えー」
「えっ?」
二人がイチャイチャし始めたのを見て与一は咳払いをした。
「あっ………ご、ごほん……そ、そうえばユウラビ達も見送りに来るって聞いたんだけど……」
「よぉぉぉぉぉぉいち!」
「うっ!?」
与一はユウラビからのタックルをもろに喰らうと、そのままひっくり返った。
「全く……それでこの先大丈夫なのか?」
「まぁ、あの竜巻の中何だかんだ言って無事だったみたいだし……大丈夫なんじゃないの?」
「お嬢、それマジすか?」
「本当だとしたらエゲツないワイナ、アレグレード5ぐらいはあったワイナ」
与一がひっくり返っていると、フォール達がやってきた。
「……で、吹っ飛ばした本人は……」
「きゅう……」
与一はゆっくりと体を起こすと、目の前でゴジガジに抱かれて気絶していた。
「………ッスーーーーー」
与一は気まずそうにしていると、ゴジガジは与一を手で制すと、ペチペチとユウラビの顔を叩いた。
「ゴゲィ、ゴゲィ………ゴギゲゴゴグギゲ」
「ん………あれ?私与一に突撃したんだけど……足を滑らして……あっ、ヨイチは?」
「「………」」
与一は頭をバリバリと掻くと、ぶっきらぼうに、
「お見送りに来てくれたんけ?」
と言った。
「う、うん……でもね!聞いてよ!」
と、ユウラビは嬉しそうにそう言うと、隠し切れていない後ろ手に持った荷物を前に出して、
「私とゴジガジはついていく事にしたの!」
と、満面の笑みでそう言った。
「ふーん………」
「むー……」
ユウラビは与一に向かって膨れっ面をすると、与一のスネを思いっきり蹴った。
「んんんんんんんん!!」
与一はスネをさすると、ユウラビの頭に軽いチョップをした。
「加減んんんんんをせぇ!」
しかし、ユウラビは膨れっ面のままそっぽを向いた。
「……」
「おっ、来たか」
すると、与一の隣にロキがいつも通りいつの間にか現れた。
「さて、わかってると思うが、これからユウラビが私達の旅について来る事になった」
「結構な間戻られへんことは?」
「分かってる」
「他の文化ちゃう世界に行くかもしれんことは?」
「分かってるってば」
与一はロキを暫くジト目で見ると、ため息をついた。
「コラ、ため息をついては幸せが逃げていくってよく言いますよ?」
「こんな奴の心配をするなんて時間と考慮の無駄カモ」
「それよりも忘れものはしてないカナ?」
与一はその声がする方を向いた。
そこにはカナとカモとそしてアスターがいた。
「……暫く見てへんだけど、何しとったん?」
「暫く三人でゆっくりしたかったので、町の外れの隠れ家に……」
「お前ら……」
ロキが額に手を当てて項垂れたが、ふるふると首を横に振った。
すると、列車が蒸気を吹き上げた。
「時間だ、別れの言葉ぐらい言っとけよ」
そう言うと、ロキは運転室の方へと歩いて行った。
「……ヨイチ」
すると、フォールが与一に声をかけた。
「今はユウラビと一緒に行ってやれないが、私達もすぐに行く……それまで……頼むまでもないと思うが、ユウラビ達を頼んだ」
与一はフォールの真剣な目と声色に少し怯みながらも、頷いた。
「分かった」
すると、フォールは与一の方に手を差し出した。
「仲直りだ」
「………ふっ」
与一は顔を綻ばせると、フォールの手を握った。
「じゃあな、暫くの別れだ」
「ギルド抜けて大丈夫なん?」
「まぁ、一気に抜けるのはアレだから、順番だ」
そして、与一はバーゲン達の方を向いた。
「……まぁ、そう言うことよ、貴方頭でっかちなんだから頭狙い撃ちされない様に気をつけなさいな」
「お嬢達が殆ど言っちまったが、俺も少しの間だったがてんやわんやできて楽しかった」
「色んな新しいことを知ったワイナ、やっぱり人生は冒険してこそワイナ、ヨイチ、どんな時でも冒険心は忘れちゃダメワイナ」
「……アスターに……ヴィクトリアに何吹き込んだか分からなけど、もしあの子に何かあったら死んでても殺しに行くから覚悟しとくカナ?」
「もし、何かあったら問答無用でブチ殺すカナ、でも、私達を助けてくれてありがとう」
与一はリーチェ達と握手をすると、列車に乗り込んだ。
「ほいだら、皆んなありがとうな」
「水臭いこと言いなさんな、旅は道連れ」
「世は情けワイナ」
そして、列車が汽笛を上げて動き出した。
「じゃあなーー!!」
「「またねー!!」」
『さよならー!!』
与一は服の一部を帽子に変えると、それをフリフリと振った。
そして、駅を出た列車は町の塀の外に出ると、雪原を雪を掻き分け、吹き飛ばしながら進んみ出した。
「……見えなくなっちゃったね」
「意外にも早く見えなくなってしまいましたね?」
アスターの言葉通り雪原の彼方に消えて行った街を与一は名残惜しそうに見ていると、その街の方から衝撃波が飛んできた。
「ふせい!」
与一は窓を閉めて、二人に覆いかぶさるように服を変形させて、窓を補強するように余った所で服を変形させた。
与一は踏ん張るようにして堪えると、衝撃波が過ぎて行ったのを確認すると、窓の外を見た。
すると、街の方から煙が上がっているのが見えた。
「ロキィ!」
『待て待て今見てる……なんじゃありやぁ!?』
列車の中のマイクから発せられる珍しくロキが動揺する声に与一は驚いたような顔をしたが、直ぐに、
「列車を戻せ!」
と、叫んだ。
『分かってる!どうせ反対しても全員戻るって言うんだからな!』
その声と共に列車が急停止すると、車輪が火花を散らしながら反対に回り始めた。
「急げ!」
『分かってるっての!給仕隊以外の奴らは大広間に30秒後に集合!何があったかモニターで説明する!』
「わぁった!」
与一は二人について来いと言うと、運転室の真後ろの車両に入ると既に与一達以外が集まっていた。
「20秒……余裕で早かったな、よし、まずは皆んなこれを見てくれ」
ロキは真ん中のテーブルに杖を突き立てると、そこに人型のロボットのようなホログラムが現れた。
「ロボット?」
見たまんまの感想を述べた俊明は顔をしかめると、列車から出ようとした。
「待て!これは動画なんだが、問題はこの後だ」
ロキはそう言って、ロボットのホログラムのようなものを杖て叩いた。
すると、ロボットが動き出して、観察部分から肉々しい何かが出てきてロボットの外殻を覆った。
「なんじゃこりゃ……」
「この中からは高次元の悪魔の反応が出てきた、恐らくどっかのバカがあくまでかなんかに力を借りてあの機体をこの世界に呼んだんだろ」
そう言ってロキはホログラムを閉じた。
「予想できる有効な攻撃方法は炎を使った攻撃だ……で、此処からはお前らの好きにしろ一応この列車は街の外を走る環状の線路の上を走らせるつもりだ」
ワールドは暫く考え込んだ後、
「攻撃隊、我、ヨイチ、トシアキ、ノヴァ、タシト、カミラ各自ヨイチから武器を貸してもらうなり魔法を使って何とかしろ」
そして、続けて、
「もちろん後方の援護も必要だ、ロキ、この列車に遠距離攻撃用の武具は「ある」それを使ってビート、出来れば大きめのヤツがいい、奴に攻撃を、そして回復及び救護及び救助担当、ユウラビ、ゴジガジ、ロキ、アスターでやってくれ」
と、テキパキと指示を出すとワールドは列車を出て屋根に上りに行ってしまった。
皆んなが顔を見合わせる中、与一はパンパンと手を鳴らした。
「はいはい皆んな動く動く、それとも今いい案持ってるよーって人?」
誰も手をあげないのを見ると、与一はうなずくと、
「ほいだら動く!」
と言って与一は箱を全部起動させて全員に片耳に装着させるタイプの無線を渡すと、トシアキを連れてワールドの後を追った。
「……あっはっはっはっはっ!!」
ノヴァは大爆笑すると片耳に無線を突っ込むと大笑いをしながら、列車を飛び立った。
そして、それらの光景を見た他の人物達は肩を竦めながら動き出した。
「……よくやった」
「どんだけ上から目線やねん……」
「ホンマにー大変やってんでー?」
「お前何もしてへんやろ!?」
三人は与一の変形させた望遠鏡で街の様子を見ながらそう言い合っていた。
「さて、与一我に鎧を少し貸せ」
「箱一つ分貸したるわ……壊すなよ!?」
「保証はできかねん」
与一がワールドに箱を一つ丸々投げ渡した後、ワールドはそれを雑に受け取ると、変形させて体に纏った。
「なんや、誰でも使えるやん」
与一は若干ガッカリしながらも両足を磁石で屋根に固定しながら両手で巨大な砲を作っていた。
「しっかり狙え……ノヴァが引き付けてくれておるからな」
「あいあい………偏差計算あるかなぁ……取り敢えずここいらでどうよ?」
そう言って与一は引き金を引いた。
大きな悲鳴がしたかと思えば目の前が真っ白になる様な光を放って、与一が放った弾丸は謎の機体に直撃した。
「大当たりだ」
「ラッキー」
「うっっっさいねんぼけ!」
与一はスコープから目を離して砲を元の服の形に戻した。
「………やはりな」
「やっぱダメ?」
「にーちゃんの用意した弾カスすぎん?」
「しるかぼけ」
三人は望遠鏡を覗き込みながら以外にもあまり驚いて無さそうに話し合っていた。
「だってなぁ、絶対これアレやん、『やったか!?』って言ったら余計強なる奴やろ?」
望遠鏡越しに覗き込んだ機体は大きく傷が付いたのにも関わらず、そこが何もなかったかのように修復された。
「……倒せんのコレ?」
「分からん、取り敢えず周りの肉を焼き払ってそこからだな」
「やねぇ……さっ、そろそろ環状線入るんちゃう?」
「だな、与一車を回せ」
「あいあい」
与一は列車の倉庫から幾らかのパーツを引き出してくると、服の一部を使って強力な装甲車を作り上げた。
与一はそれに飛び乗ると、列車から飛び出して、ワールド達の隣に付けた。
「飛び乗れ!」
二人は直ぐ様飛び乗ると、続いてタシトとカミラ達が乗り込んできた。
「あそこよ、あそこから入りましょう」
カミラが指差した先は塀が崩れて丁度装甲車が通れそうな隙間が空いていた。
「おっさ!飛ばすで!」
与一はアクセルを踏み込むと、煙が上がる街に急いだ。
十分前、街の外れの洞窟内、
「で、出来やした……」
「よ、よくやった……終わったら……全員で……酒……」
と、ゼェゼェと息を切らしながらもどうにか機体を修理した盗賊達は息も絶え絶えに横たわっていた。
「メ、メネシス……今……鐘幾つだ?」
『鐘5つになります』
「マジで!?……も……明日でいっか……」
「そ、そっすね……それにしても皆んな静か……」
「おい……?なんで急に黙って……」
すると、ノマドの目の前に目を真っ赤に充血させて、返り血を浴びまくって真っ赤になった服を着たエルフ男が現れた。
「貴様……よくもやってくれたな……?」
「お前……まだ生きてたのかよ……丁度いい、そこにあそこ占拠するのに丁度良い奴が……何のつもりだ?」
ノマドは喉元に突き立てられた刃を見ながらエルフにそう言った。
「当たり前ではないか……貴様は我らを裏切ったのだ、全員の命で償ってもらうのが当然だと思うのだが?」
そして、エルフの男はノマドの首を切り裂いた。
「今こそ同胞の無念を晴らすのである……5万の命で10万を救うのである!」
そう言って、エルフの男は殺した盗賊達の血で魔法陣を描くと、悪魔を呼び出す呪文を唱え出した。
「は、はは!いいぞ!悪魔よ!我に宿り、宿願を果たすために今一度力を貸すが良い!」
そして、男の体は変形しながら周りの盗賊の死体を吸収して機体を吸収して、洞窟の中でゆっくりと立ち上がった。
そして、洞窟を吹き飛ばして、元エルフの男は街の方を向いた。
「皆殺し……皆殺しである……」
『と、ととととと搭乗者認識……ののののノマドの生体認証完了……まま「魔力」の使用による、生体へのののの、干渉かのうううう』
「ふむ、なるほど………ならば……街の住人達で殺し合いをさせるのもまた一興だな……実行せよ」
『認証……「電磁魔力脳干渉」開始』
そして、とんでもない悪魔の機械が亜音速の唸り声を上げると、衝撃波を放った。
「ふふふふふ、ふはははは!それではいざ行かん!」
こうして、悪魔の機械は街へと足を進めるのだった。
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