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010 カネコ、ど~ん。
しおりを挟む街道を北へ進むこと、しばし。
前方に見えてきたのは、道を塞ぐようにして横転している幌馬車だ。車輪の片側がはずれている、うっかり窪みにでも落ちて壊れたか。
少し離れたところに繋がれている馬っぽいのがいる。足の数が多い。どうやらアレがこちらの世界では標準的な馬らしい。立派な体躯をしており、ばんえい競馬のばん馬ほどもある。ちなみにばん馬はサラブレットの約2倍の大きさ。
倒れた馬車の周囲にたむろしているのは、乗っていた人たちだろう。
いかにも旅先のトラブルにて困ったという風にて。
だからワガハイは……
「邪魔にゃあ、アクセル全開でど~ん」
ボーリングのピンのごとく、道を塞いでいた障害物をまとめて撥ねて、ストライクを決めてやった。
あぁ、誤解なきよう。
いかにワガハイとて、もしも『本当に困っている人たち』ならば、有料で救いの手を差し伸べるのもやぶさかではない。
けれどもカネコの目と耳は欺けない。
鑑定は情報が薄くいまいち使えないけれど、カネコアイはジト目になればかなり遠方まで見通せるのだ。遠近両用にて暗闇でもバッチリ。
じつは事前にカネコアイで存在を確認した際に、念のためにカネコイヤーで連中の会話を盗み聞きしていたのである。
するとその内容がとにかく酷かった。
こいつらの正体は強盗だ。
人の親切心につけ込んでは襲いかかる下衆ども。しかもわざわざ国境を越えての出稼ぎ組ときたもんだ。隣国で散々に悪さをして、追手が差し向けられたらひょいと国境をまたぐことで逃げるズルい奴ら。外道働きにてやりたい放題。
よって情状酌量の余地ナシ。
というわけで、ど~ん!
ワガハイは問答無用で撥ねて、撥ねて、撥ねまくる。
運よくカネコモービルをかわした者も、すれ違いざまに魔法で石礫を撃ち込みゴツンと仕留める。
だれも逃がさない。
〇
静かになった事故現場にて――
そのまま放置してもよかったのだけれども、せっかくなので白眼をむいている連中の身ぐるみをはぐことにする。
馬車はダミーだった。荷台にあったのも空箱ばかり。
強盗どもが隠し持っていた武器に値打ち物はなく、鋳つぶして再利用するしかなさそう。
かき集めたコインは、銅貨と銀貨ばかりで金貨はほんの数枚のみ。
価値がありそうなものといえば、繋がれている馬たちぐらい。
「森から出たとたんにコレとか、とんだ世紀末な世界にゃん。先が思いやられるにゃあ。にしても、どいつもこいつもシケシケにゃんねえ」
もっとも貧乏だからこそ強盗なんぞに身をやつしているのだろうけど。
微々たる成果物をアイテムボックスに放り込む。
気絶している連中は縛って、数珠繋ぎにして馬に引かせることにした。
魔法で浮かせ運んでもよかったのだけれども、そこまでサービスをしてやる義理はない。
「というわけで、気を取り直して行くにゃあ~」
カネコモービルを発車させると、馬たちは指示せずともちゃんと付いてくる。
飼い主はアレだったけど、馬たちはとってもおりこうさん。
この分ではきっといい買い手がつくだろう。
ワガハイ、ほくほく顔にて「にゃっしっしっ」
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