寄宿生物カネコ!

月芝

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210 カネコ、宿縁とあいまみえる。

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「また、キサマか」
「………………」
「ほぅ、今度はダンマリか?」
「………………」
「ふん! バカめがっ。黙秘するということは、己の非を認めているようなものだぞ」
「………………」
「ちっ、なんだその態度は!? キサマ、ふざけているのか? そっちがそのようなふて腐れた態度をとるのならば、こちらにも考えがあるぞ! ええい、いい加減に、こっちを向かんか!」
「うにゃーっ! おとなしくしていたら勝手なことをベラベラと! あいかわらずの節穴だにゃん! 誰が好きでこんな格好をしているのかにゃあ~!」

 頭がズーンと重い。痛めた首のせいで、真っ直ぐ前を向けない。
 それゆえに仕方なく斜にかまえているというのに。
 なお首のコルセットは留置所に放り込まれた際にはずされている。変なモノをなかに持ち込ませない防犯上の理由のためだ。当然ながら施設内では魔法の使用も禁じられている。
 とっても素直なワガハイは、決まりならばしょうがないと従っていたのだけれども。
 そのせいで首の寝ちがえが悪化した!
 にもかかわらず、この言い草!

 官吏の制服をビシっと着こなしている『石頭のこんこんちき』もとい、取り調べ官。
 こいつとワガハイとは因縁浅からぬ仲にて。
 何を隠そう、かつて城塞都市トライミングを震撼させた『怪奇! 教会が黒いベトベトさんに覆われて大パニック事件』のおりに、被疑者として連行されたワガハイの事情聴取を担当した人物である。
 なにゆえ、そんな人物をワガハイが石頭と呼んでいるのかといえば、そのままの意味である。

 この男……
 じつはかなり思い込みが激しく、主観的で、他人の話をちっとも聞きやしない。
 初見時、取り調べ室にて対峙したときには、このワガハイをスぺリエンスの工作員呼ばわりするという、迷推理まで披露している。
 二度目の『お魚連続窃盗事件、真犯人はおまえだ! の巻』の時には、危うく濡れ衣を着せられるところであった。
 三度目の『戦慄の紙芝居、メディアの手の平の上で狂乱する人々?』の際には、追求の手が厳しく、マジで実刑を喰らいかねなかったものの、からくも虎口を脱する。

 そして今回だ。ワガハイたちは四度目の望まぬ再会を果たす。
 偶然も重なれば運命となり、必然となる。
 というか、もはや宿縁なのかもしれない。

 所は衛士隊の詰所にある取り調べ室にて――
 机を挟み対峙する取り調べ官と寄宿生物カネコ。
 パリッとした制服の襟元を直しながら、取り調べ官がフフンと鼻を鳴らす。

「これまではのらりくらりと逃げられたが、今度こそ終わりだな。いかに、キサマとて白昼に堂々と公共の場所を改造したのだから。
 目撃証言、物証、ともに山ほどある。さすがに言い逃れできまい」

 問い詰められているのは、公園を魔改造したこと。
 いかに我が身を守るためとはいえ、これに関しては、たしかに言い訳のしようがない。
 だがしかし事情が事情である。

「それについては謝るのにゃあ~。あとでちゃんと元に戻すつもりだったのにゃん。でも、もしもあそこで介入していなかったら、きっと多数の怪我人が出ていたのにゃあ~」

 公園に集いし子どもたち。
 子どもといっても、いろんな人種が混じっている。
 類人、獣人、竜人、森人、山人らと多彩にて。
 そしてたかが子どもと侮るなかれ。
 例えば獣人の子は体力お化けだし、森人の子は幼少期から魔法の扱いが巧みだ。竜人や山人の子らは強靭にて、類人の子は突出したモノがないかわりに汎用性が高く応用が利く。
 そんなお子さまたちが、本気で乱闘を始めたら「ははは、たかが子どものケンカだろう」なんぞと笑ってなんかいられない。
 かといって、ぶん殴って無理矢理に言うことをきかせるのなんて論外だろう。

 たまに臆面もなく「しつけだ」とかほざいて、子どもへの暴力を正当化する大人がいるけれども「んなわけあるかーっ」である。
 ひっぱたいた程度で、どうにかなるのだったら、誰も苦労なんぞはしちゃいない。
 だからこそ、ワガハイはあのような行動に出たのだ。
 すべては子どもたちを守るため。
 あとワガハイの平穏と首を守るために。

「よってあれは深刻な事態を招かないためのやむを得ない処置である。それをけしからんとはいかがなものか? というか、むしろ逆であろう。褒めて、『さすがワガハイさまステキ!』と称え、地に額をこすりつけて感謝感激すべきなのにゃあ~」
「……いや、そもそも事の発端は、キサマが考えナシに怪しげな玩具を子どもたちにばら撒いたせいじゃないのか? そういうのを世間では『自作自演』とか『作為的』もしくは『捏造』と言うんだ」
「あー、それについては素直に非を認めるのにゃあ。よもや、あれほど子どもたちが夢中になるとは……」
「そもそもキサマは毎度毎度、あと先を考えずに――」

 ちょっと退いたら、まるでオニの首でもとったかのように、取り調べ官はここぞとばかりにマウントをとってくる。
 ――ぶっちゃけ、ウザい。
 その説教を適当にハイハイ返事をしては聞き流しつつ、ワガハイは嘆息にて「今夜のオカズはなにかにゃあ~」と夕飯に思いを馳せる。


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