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729 バッテリー問題
しおりを挟むアニマルロボ・ダークナイト。
アニマルロボ・ホワイトナイト。
第一の塔の最上階にいたアニマルロボあしゅらくん。
同塔の四階にて白羽たちを襲撃したロボットたち。
それから第二の塔の三階にいた猟犬っぽいの。
すべてがすべてイヌ頭。
どうやら量産型のカブトから流用されているっぽい。
さすがにすべてをオリジナルでまかなうほどの余裕はなかったか。もしくはたんなる手抜きという線も捨てがたいけど。
でもって無理くり仕上げたせいなのか、調整が甘かったのか、さっそく弊害が……。
「とぉりゃー」と気合い一閃、両手剣を振り回すダークナイト。
「おうさ」と勇ましく、ハルバートを振り回すホワイトナイト。
片や二メートル近くもあり、ほとんど鉄板みたいな長剣。
片や三メートルほどもあり、ほとんど鉄骨みたいな長斧。
ともに長物にて、それを身長二メートルぐらいもある甲冑姿がドタバタ、各々好き勝手にぶんぶん振り回すものだから、いかに広めの室内とはいえ、当たったりかすめたりして、危なっかしいったらありゃしない。
「うわっ、あぶない。この下手くそ、もっとあっちいけ! こっちくんな!」
「おまえこそどこを見ている。目のレンズにヒビでも入ったか? それともコンピューターにカビでも生えたか?」
「あん、なんだこの野郎! 上等だっ、てめえから先にやってやんよ!」
「いいだろう。前々からきさまは気に喰わなかったんだ。第二の塔のボスは私ひとりいれば十分だからな」
いきなり揉め始めたとおもったら、おれたちそっちのけで喧々やり始めるダークナイトとホワイトナイト。
じつは仲がめちゃくちゃ悪かった。そして礼儀正しかったのも最初だけ。見た目こそは騎士っぽいけど、中身はバリバリのヤンキー気質であった。
◇
ダークナイトの両手剣が閃き、ホワイトナイトのハルバートが唸る。
ガキンガキンと重たい音が響く。
得物同士が宙にてぶつかり火花が盛大に散っては、はじかれる。けれどもすかさずひらり、急旋回しては、ふたたび衝突する。
ダークナイトが最上段より相手を一刀両断しようとすれば、これをホワイトナイトが長柄にて器用にいなす。
ホワイトナイトが鋭い刺突からの横薙ぎを狙えば、これをダークナイトが剣身にて受け流し、くい止める。
よほど優れた武人のデータをもとにしているのか、両雄の動きは豪快にして優麗。
もしもまともに対峙していたらそれなりに苦戦を強いられていたことであろう。
フム。こいつらの頭の出来がいまいちで助かった。
壁際にて二人の騎士たちの戦いの行方を見守るおれたち。
扱っている武器とカラダの色がちがうだけで、基本スペックはどんぐりの背比べ。互いの手の内も知っているみたい。実力伯仲につき、こりゃあ当分終わらなそう。
なのでこの待機時間を利用して、おれたちは燐火さんたちがもちこんだ携帯食にて食事休憩をとることにする。
「もぐもぐ、おっ! けっこういけるな、この忍者バー。忍者の食事といえば、栄養だけは補えるけど、くそマズイ兵糧丸みたいなのを想像していたんだが……」
「その辺で売ってるスイーツより、よほど美味しいです。充分にお金がとれるレベルですよ。とくにこのバター風味が絶品、もぐもぐ」
探偵と助手は携帯食に舌鼓を打つ。
「それはよかった。開発部の者らもきっとよろこぶよ」
うれしそうに目を細める燐火さん。覆面越しに口元がもごもごさせている。食べるときでも素顔をさらさないのがポリシーみたい。さすがはデキるクノイチ、忍ぶことに徹底している。
えっ、ちがう。仕事のプライベートはきちんと分けるタイプ。あと身バレはいろいろとめんどうくさいからですって。
はぁ、そうですか。
◇
激闘は一時間近くも続いた。
勝者はダークナイト。
ホワイトナイトの敗因はハルバート。三メートル級の重量武器を振り回し続けることによって、バッテリーの消耗が激しく、活動限界を迎えてしまったのである。
動きが鈍くなって、省電力モードへと切り替わったところを、いっきに攻め込まれてしまい、ついに膝を屈し「ぐぬぬ、おのれ、無念なり」とあいなった。
だがその無念はすぐに晴らされることになる。
なぜならダークナイトとてバッテリー残量がわりとギリギリであったから。
「おっといかんいかん」
勝利の余韻もそこそこに、すぐに充電スペースへと向かおうとするダークナイト。
もちろんそれをみすみす見過ごすおれたちではない。充電なんてさせてあげない。
正々堂々? ふっ、そんな単語、おれの辞書にはない。
ただし卑怯ならばしっかり明記されてある!
応援ありがとうございます!
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