おじろよんぱく、何者?

月芝

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879 獣王武闘会本戦 一回戦第四試合 前編

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 いよいよAブロックも残すところ一試合となった。
 一回戦第四試合、かむかむVS新生パンドラ。
 新生パンドラは、オコジョくのいちのかげりが率いる聚楽第の紐付きのチーム。
 この試合だけはじかに見届けるべく、おれたち尾白探偵事務所チーム一同は控室から出て、闘技場脇にある関係者用の通路口へと足を運ぶ。客席からではなく同じ視点で、その強さを肌で感じ、とっくり敵情視察をと考えたからだ。

「わざわざチーム名に新生ってつけているぐらいだから、きっとメンバーを大幅に入れ換えているんだろうね、四伯おじさん」
「だろうな。新規加入のメンバーも気になるところだ。なにせ新生パンドラの連中、レセプションにも抽選会にも顔を出さなかったからな」
「まぁ、入れ替わったメンバーってのはだいたい予想はつくけど」

 そう言ったのはトラ美。
 これに「そうですね」と零号もうなづく。ひとり蚊帳の外であったのは、獣王武闘会の西国予選にも、聚楽第との抗争にも関わっていないタエちゃん。金髪リーゼントのヘビ娘は「ふん、誰が来たってぶっ飛ばすだけだ」と腕組みにて憮然としている。
 そうこうしているうちに両チームが入場してきた。
 ついに新生パンドラの顔ぶれが明らかとなるも、とたんに会場中がどよめきざわざわざわ。おれたちもぽかんとなる。

 オコジョくのいち・かげり。
 動物至上主義を掲げる過激派、聚楽第の中心メンバーにして、世界各地で起きた数多の動物絡みの陰謀争乱を画策してきた人物。実力もさることながら、真に危険なのは彼女の歪んだ気質。「楽しそう」という理由だけでバイオテロを実行しようとするなど、とにかく言動がとち狂っている快楽主義者。

 アニマルロボ天狼しりうす
 ネコ頭に女体という雌型の高性能アニマルロボ。聚楽第の研究部門を統括するマッドサイエンティスト暮来真理くれこまりの最高傑作にして、わくわくギミック満載。その基礎設計をアニマルメイドロボ零号と同じくすることから、零号を「姉サマ」と呼び、一方的にライバル視している。

 英円はなふさまどか
 顔に三本傷を持つ銀髪の女。暴力、刃傷沙汰、抗争なんぞは当たり前。秩序を嘲笑い、闘争を好み、勝手気ままに奪い、犯し、喰らうを繰り返す。本能のままに、いいや、歪んだ欲望のままに動くトラ。狡猾で残虐で執拗、かつて尾白四伯と弧斗羅美を散々に苦しめたこともある。お尋ね者の賞金首にて「銀禍」とも呼ばれている烈女。

 宮本めざし。
 舎乱螺二刀流しゃらんらにとうりゅう免許皆伝の腕前を持ち、剣やチカラに対する想いの強さから周囲より「生まれてくる時代をまちがえた」と言われていた流浪のネコ剣豪。だが聚楽第の総帥ウルとの出会いにより、彼に心酔傾倒し主人と定めて闇堕ち。大江一門が残した三つの遺産のうちのひとつ、炎龍の剣のチカラを我が物としたことにより獣外の領域へと踏み込んだ武人。

 ルクレツィア・ギアハート。
 世界をまたにかけて活躍しているトップモデル。パーフェクトボディ、美のカリスマ、黄金比の具現者などとも呼ばれており異性同性を問わず大人気。彼女の一挙手一投足により何千億どころか何兆円もの大金が動き、世界中の人たちが右往左往する。とんでもない影響力を持つ最強のインフルエンサー。だがその内には激烈な破滅願望を持ち、世界が滅びるところを特等席で眺めながら、自分も地獄の劫火に焼かれたいと思っている。

 会場がどよめいた理由はふたつ。
 ひとつに大罪人である英円が不敵な笑みを浮かべながら堂々と登場したこと。
 いまひとつは美の女神ルクレツィア・ギアハート優雅にドレス姿で降臨したこと。
 理由がわからずこれを見ていたみんなの頭の中にハテナが浮かんだところで、スピーカーから流れてきたのは運営側からのアナウンス。

「えー、ご来場のみなさまが驚くのも無理はありませんので、ここで補足説明をさせていただきます。まず英円氏の参戦については事前に各界の了承を得ており問題ありません。そしてルクレツィア・ギアハート様の方は、あくまで友人枠でのご参加ということになっております」

 賞金首の英円については事前に根回しがすんでいる。このごり押し、おそらく大金をばら撒いたのであろう。
 そしてルクレツィア・ギアハートはあくまで数合わせ要員。もとより彼女に戦闘能力は皆無なので、リングサイドの特等席で戦いを拝見しようということらしい。
 とどのつまり新生パンドラは四人で十分、ひとりぐらいオマケを抱えたところでどうということはないということ。
 ふざけた話である。
 当然ながら、対戦相手であるチームかむかむは「舐めてんのかっ!」と激昂する。
 そんな波乱含みにて、試合はスタート。
 なお対戦形式は二対二のタッグによる変則戦となった。


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