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004 引き揚げ
しおりを挟む超超大なイソギンチャクの金禍獣・大喰らい。
そのお腹の中にある海賊船・黒鬼を回収するために、ただいまおじゃまをしている。
目的のブツはすぐに見つかった。なにせ黒鉄の塊だから目立つもの。
でもって、黒鬼の内部をざっくり調べた結果、あることが判明した。
それは大喰らいの栄養摂取の方法について。
船内にあったのは白骨遺体ばかり。
南海の争乱からそこそこ時間は経っているとはいえ、人が骨になるのにはいくらなんでも早すぎる。
どうやら大喰らいは内部にとり込んだ生物の血肉だけを、すみやかに吸収しちゃうらしい。
おかげで欲しいブツは丸々手に入ったけど、あんまりのんびりしていたら、たぶんわたしも危ない。
なので、さっそく引き揚げ作業を開始。
まずは第一の目的である黒鬼をムギの収納空間に呑み込んでもらう。
「お腹の具合はどう?」
ベニオが変じた赤い作業着姿のわたしがたずねたら、ムギは「是、まだまだ余裕」との頼もしいお言葉。
そこで第二の目的へと移行。
というか、むしろ本番はこれから。
なにせここには大喰らいの犠牲になった船舶の残骸が山とあるからね。それすなわちお宝ザックザク。
これらを駄賃がわりにごっそり頂いちゃおうというのが、わたしの狙いである。まぁ、お駄賃と呼ぶには少々、額がえげつないことになりそうだけれども。
できればじっくり宝探しに興じたかったけど、大喰らいの消化事情がそれを許してくれそうにない。夢中になるあまり気づいたらあちこち溶けちゃってたとか、ちょっとしゃれにならない。
だからちゃっちゃと回収しちゃう。
寄せて、集めて、グビリと呑み込んで。細かい分別なんかはあと回し。
ひたすらくり返される単純作業。なにせ量が尋常ではない。よくもこれだけ溜め込んだものである。
こうなると当初のワクワクした高揚感もどこへやら。
すぐに飽きてしまったわたしは、「よっこらせ」と何かの巨大生物の頭蓋骨とおもわれる物体に腰をおろし、娘たちに「じゃんじゃんよろしく」とお願いして監督役に徹することにした。小娘が現場をちょろちょろしたところで、邪魔にしかならないしね。
みるみる片付いてゆく大喰らいのお腹の中。
スッキリしてお腹が軽くなったせいで食欲増し増しとかになったら、ちょっとイヤだなぁ。
とか考えながらぼんやり眺めているうちに、わたしはついウトウト。
でもって近頃、よく見る夢の世界を彷徨っていると……。
「チヨコ母さま、お待たせしました。作業完了ですわ」
ミヤビに揺り起こされて「うーん」と大きく背伸び。
目ぼしいモノを根こそぎさらったせいで、すっかりキレイになった大喰らいの腹の中。
仕事を終えたわたしたちはホクホク顔にて、ササノハさんが待つチューワン港へと引きあげた。
◇
チューワン港にある海軍施設に回収してきた黒鬼を運び込んだところで、わたしの任務は完了。
感謝感激するササノハさんによれば、すぐに黒鬼の調査に着手するんだってさ。中央のみならず、協力をとりつけてあるパオプ国からも専門家たちが多数派遣される手筈になっており、総力をあげて分析や研究開発に乗り出すそうな。
そして引き揚げ作業をしている間に聖都へと向かう河船の準備も整ったらしく、「じゃあねえー」とわたしたちは海軍の人たちに見送られつつ、チューワンをあとにした。
神聖ユモ国を縦断するアマノ河をゆるゆるさかのぼっていく船。
海とはちがって波が穏やかなので、船旅は静かなもの。
遠ざかる潮騒がすぐに聞こえなくなった。次第に薄まっていく磯の香り。
ようやく海風が持つ、あの特有のベタつきから解放されることにホッとしつつも、どこか一抹の寂しさを感じている自分がいる。
あてがわれた客室の窓辺に肘をかけ、茜色に染まりつつある空を眺める。
少しばかり感傷に浸っていたら、卓上に置いてあった鉢がガタゴト。
土が盛りあがってにょきにょき。ひょっこり顔を見せたのは黄色い花弁。鉢植え禍獣のワガハイである。
「やれやれ。ようやく内地に戻ってきたか。ワガハイみたいにやんごとなき深窓の令息には、海の陽射しと潮風は少々キツイ」
深窓の令息というよりかは、鉢植えのひきこもり。
などと言ったらきっとスネるので、わたしは自身の胸の内にとどめておく。
しばしとりとめのない雑談。
のちにワガハイが例の引き揚げについて言及する。
「それにしてもずいぶんとタメ込んでいたものよ」
「うん。根こそぎ拾ってきたのはいいものの、あの量を整理しないといけないのがちょっと憂鬱」
「ムギの能力はあくまで収納するだけで、そちらはムリなのか?」
「残念ながらそうみたい。あくまでだだっ広い倉庫だからねえ。出し入れを手伝ってくれるだけでもありがたいよ」
「……となれば、みなで中に入って整頓するか、荷を外に出して片付けるしかないのぉ。ちなみにナマモノはダメという話じゃったが、だったらワガハイは?」
「どうだろう。ちょっと試してみようか」
早速、やってみたら問題なかった。ワガハイもふつうに入れる。
アンの転移空間もそうだったけど禍獣、それも植物系はイケるらしい。他の禍獣については確認したことがないので、ちょっとわからない。そのうち適当なのを捕まえて試してみないと。
しかしあらためて拾得物のあまりの多さにはゲンナリさせられる。船一隻を漁るのでもけっこうな重労働だというのに。うーん。どうしよう……。
むーんとくちびるをとがらせ悩める小娘。
するとワガハイが妙案を授けてくれた。
「どうせいつもみたいに市井にバラまくのじゃろう? だったら連中にやらせればよい」
連中とは紅風旅団のこと。
元は女三人組の義賊だったのに、成り行きでわたしがめんどうをみるハメとなり、あれよあれよという間に膨れあがって、いまや団員数が百万に届こうかという大規模な慈善団体に。
「丸投げしてしまえ」とのワガハイの言葉に、わたしもうなづく。
うんうん、それがいい、そうしよう。
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