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17 坊主
しおりを挟む「これも時代かねぇ。バラエティ番組に坊主が出演するだなんて……」
ボヤいたのはミヨちゃんのおあばちゃん。
ハキハキとした物言いにて、かくしゃくとしており、いろんなサークル活動にて老後を謳歌しているため、あまり家にはいない人。
日曜日のお昼に自宅にいるなんて非常に珍しい。
そんな彼女がリビングにて、昼食のチャーハンをレンゲでつつきながら、見ていたテレビに対して文句をたれている。
その席に一緒にいたのはミヨちゃんとヒニクちゃん。
朝からミヨちゃんの部屋で遊んでいたので、ヒニクちゃんは昼食をご相伴中。
テレビ画面の中で、もっともらしい話をしては、ドッと客を沸かせているお坊さま。
もともと自分の寺にて行っていた説法が面白いと話題になったことをきっかけに、メディアに登場するやいなや、あっという間に人気者の仲間入り。
「寺や檀家をほったらかして、何をしているんだか」
おばあちゃんは、このお坊さまが気に入らないのか、ブツブツ独り言。
お坊さんとしては、少しでも仏法に親しみをもってもらい、寺社仏閣に足を運んでもらえればうんぬんとの主張ながらも、近頃の浮かれ具合を見るに、ちょっと本筋から外れつつあるようだ。
お坊さんの発言にて笑いが起きる。
おばあさんが、ちっ、と舌打ち。彼の大衆へと迎合する姿勢に憤っている。
ミヨちゃんは、仏ジョークがよくわからないのか、ぼけっとテレビを眺めているだけ。
ヒニクちゃんは黙々と目の前のチャーハンを口に運んでいる。おばあちゃん特製の生シラスとチクワの入った焼飯と、幼女は真摯に向き合っていた。
いち早く食べ終わり、ごちそうさまと手を合わせていたヒニクちゃんが、ぼそりとつぶやく。
「生ぐさにハエはたかるもの」
この言葉に、おばあちゃんが噴き出し、「違いねえ」とケタケタ笑いだす。
ミヨちゃんは意味がわからず、キョトンとしていた。坊主と大衆をかけた笑いは、小学二年生には、いささか高度すぎたようである。
世俗にまみれた破戒僧だけど、みんなに慕われている。
戒律を重んじる高僧だけど、みんなに敬遠されている。
くさっていようが、いまいが、坊主が煮ても焼いても食えないのは一緒だと思うの。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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