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431 続化粧
しおりを挟む近所のドラッグストアに来ていたのはミヨちゃんとヒニクちゃん。
最近のドラッグストアは薬だけでなく、食料品や日用品も扱っており、お値段もとってもお買い得。
本日は二人してアイスリームを買いに来ていた。
広く明るい店内には試供品がいっぱい展示されているので、本命をゲットするまえにブラブラ。
芳香剤の香りを楽しみ、ハンドクリームをちょっとつけてみたり、青汁の試供品を飲んでみたり、やたらとキラキラしている化粧品コーナーを興味津々にて見学したり。
するとミヨちゃんの足がある場所でとまる。
それは男性用化粧品の棚のまえ。
「たまにタカ兄ちゃんも眉毛の手入れとかはしているけれど……」
ミヨちゃんの高校生になる次兄も、お年頃ゆえにそれなり見栄えには気をつかっている。
もっともそれは異性の視線を気にしてというよりも、末妹の目を気にしてのこと。シスコン気味な次兄は、目の中に入れても痛くないぐらいにミヨちゃんを溺愛している。それゆえに不潔な格好をして嫌われたくない。いつまでもカッコいいお兄ちゃんと思われたい。それはもう切実に!
ちょっとぐらいラフな格好でもミヨちゃんはまるで気にしないのだが、兄の方がいささか神経質になっているということを、末妹は知らない。
「最近の男子はスキンケアにもチカラを入れているんだって」とミヨちゃん。
幼女の中では基本的にお化粧をするのは女の人。
お芝居をする役者さんや、ヴィジュアル系バンドのメンバーとかならばわかるけれでも、一般の男性となると、どうにも首をかしげてしまうのである。
「テレビに出る人とかもメイクさんのお世話になるのはわかるの。でもその辺の男の人がやたらと気にするのはどうなんだろう。おばあちゃんなんかは『自意識過剰なんだよ』って言うし、お母さんは『さすがにファンデーションはやりすぎかなぁ』って言うの。わたしとしては男の人がやたらとリップクリームをぬりぬりしている姿が、ちょっと……」
これには「あー」とヒニクちゃん。
たしかに冬場になると、やたらめったらぬりぬりしている男性がいる。
ぶっちゃけ「あんたのクチビルになんて微塵も興味ねえよ」とは思うけど、個人が好きで行っていることにケチをつけるのも無粋な気がするし。
なによりそんなことを男性陣に言い出したら、そのまま女性陣にブーメランしかねない。
「わたしとしてはどっちでもいい気もするんだけど、でも男の人が化粧をしだしたのってわりと最近だよね? これってやっぱりメーカーの策略なのかしらん」
流行の裏にはつねに大人の打算アリ。
もちろん自然発生するモノもあるけれども、たいていは仕掛け人がいる。
小学二年生ながらも早くも世の中の敏感な部分を、おぼろげながら理解するミヨちゃん。
文化の変遷を肌で感じ、ミヨちゃんが複雑な心情を吐露したところでおもむろにヒニクちゃんが口を開いた。
「もともと男性の方が熱心に化粧をしていたらしい」
信仰の場にて、あるいは戦場に赴く前に。死に化粧も大人気。
エジプト、ローマ、ギリシャ、隆盛する古代文明と共に男化粧あり。
それだけ現代文明も栄えており、国が豊かということなのかもね。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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