ミヨちゃんとヒニクちゃんの、手持ち無沙汰。

月芝

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565 続池掃除

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 市長のどうでもいい挨拶が終了して、担当者の説明がスタート。
 とたんに参加者らの顔がマジメなものとなった。
 外来種やゴミの扱いなど、いろいろと頭に叩き込んでおく必要がある。
 たぶん大丈夫だとは思われるが、中にはキケンなモノもあるかもしれないので。

「ケガなく、ムリせず、わからないことはすぐに相談してください。それではお願いします」

 さすがに現場を仕切るだけあって、簡潔かつ要領を得た説明。
 小学校二年生にもわかる内容に、「うんうん」と感心するミヨちゃんとヒニクちゃん。
「格好だけの市長とはおおちがいだぜ」との大人たちの文句を尻目に、いざ、池の中へと。
 でも小さい子が奥までいくと危ないので、彼女たちの担当は岸辺の浅いところのみ。そばには大人たちの姿。
 それでもミヨちゃんたちはドロに足を取られて四苦八苦。

「うぎぎぎぎ、ぬっ、抜けない。にゃーっ!」

 かわいい絶叫の後に前にぐらりと倒れたミヨちゃん。
 四つん這いの格好にて手足を拘束されて、完全に固まる。
 要救助となった涙目の幼女。すぐさま大人たちが笑いをこらえつつ手を差し伸べる。
 それこそネコの子のように、ひょいと持ち上げられての生還。
 ヒニクちゃんもまた汚泥半ばにて、身動きがとれなくなりカカシ状態のところを助け出されることに。
 この様子を受けて、二人は池の中に入るのは禁じられて、陸の上での仕分け係に回されることになった。

 次々と大きな四角いポリ容器に入れられては、持ち込まれる様々なモノ。
 ウシガエルのオタマジャクシにて、たちまちバケツが満杯。
 いかにも外国産というサイズの魚も何匹も見つかった。
 ブラックバスにブルーギルのお馴染みさんも大量。
 生き物以外では空き缶を筆頭に、ビニール傘、ハンガー、鉄パイプ、自転車、カバン、財布、携帯電話、タイヤのホイール、小さな冷蔵庫、ビデオデッキなんでモノまで。
 どうやらこっそりとゴミを捨てている悪い人がいるらしいと知って、参加者たちは憤慨。

「今度みつけたら、とっちめてやる」と鼻息が荒い。

 ここの公園の歴史自体はそれほどでもないので、城のお堀のようにお宝発見みたいなことはない。
 だからひたすら拾う、分別、ドロの処理のくり返し。
 つまり盛り上がりに少々欠ける。
 はじめのうちこそは、みな「きゃあきゃあ」とはしゃぎつつ作業をしていたが、じきに無言となり、淡々と目の前のブツを処理するように。
 物珍しげに集まっていた見物客らもじきに散り、池の周囲は閑散としていった。
 市主催のイベントとしては「うーん」といった雰囲気。
 勢いはどんどんと落ち、作業効率もずんずん下がる。
 おまけにずっと水と接しているからカラダも冷えてきて、体力もみるみる減少。
 それでもみんながんばった。痛む腰をなんども伸ばしつつ、それはもうがんばった。
 途中であったかい甘酒やかす汁なんかを振舞われて、意気を盛り返し、互いをはげまし鼓舞。
 最後の方なんて、市長の悪口をぶちぶちみんなで言い合いながら、ついにやり遂げたのは黄昏前のこと。
 たいへんだったので、おもわず「ぐすん」と涙ぐむミヨちゃん。大人たちの目元にも美しい雫がキラリ。
 これを見てヒニクちゃんがおもむろに口を開く。

「人を動かす原動力って、五徳じゃなくて憎」

 儒教でいう五つの徳。仁、義、礼、智、信。
 私利私欲に走らず、真っ当に生きるための指針だけど、哀しいかな。
 人を突き動かすのは「くそったれ」という衝動だと思うの。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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