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923 しゅう
しおりを挟む集団が形成される一方で、はじき出される個がある。
群れたがるのが人の習性なのかはわからないけれども、いたるところでグループが発生しては、くっついたり離れたり、拡大したり収縮したり。ときには対立して消滅することもあれば、またひょっこり復活したり。
政治の風景でもよく見かけるアレだが、じつはこれってとっても身近な光景でもある。
幼稚園でもあった。
小学校でもあった。
中学校でも高校でも、大学でもあった。
社会に出てからもいたるところにあって、身の回りから無くなることがない。
行く先々について回る。
人はひとりでは生きていけず、二人にならば必ず争いが起こり、三人以上になるとやたらとつるみたがる。
そして今日も今日とて公園の片隅では……。
小さな子の親同士がまとまるママ友集団。
子育てに悩む似た境遇ゆえに、いろいろ相談しあえたり協力しあえたりできるから、グループに所属できたらとっても心強い。
でも反面、一度もめるとその余波は子どもたちの関係にまでおよぶからやっかいだ。
母親から面と向かって「もううちの子とは遊んじゃダメ」とか言われるのは、子どもにとってはとてもツライこと。
ある親子連れが公園に顔を出した。
とたんに、それまでにこやかに会話をしていたママ友集団がパタリと静まりかえる。
その変化は不気味で異様であった。
たまさか近くにて遊んでおり、第三者の立ち場から目撃することになったミヨちゃんたちがギョッとなるほどに。
だから当事者はさらに驚いたことであろう。
「こんにちわ」との挨拶にはおざなりに応じるばかりで、ろくすっぽ目も合わせずに、とってつけたような理由にてその場からちりぢりになる集団。
ぽつんと残された一組の母子。その戸惑いと狼狽は、痛々しいほどであった。
ママさんたちの間に何があったのかは知らないけれども、これはとても怖い光景。
「大人になっても仲間外れとかあるんだねえ。なんだかイヤなものを見ちゃったよ」
ミヨちゃんが顔をしかめて想いを吐き出す。
ヒニクちゃんもコクコクうなづく。
が、捨てる神あれば拾う神ありではないけれども、みんながみんな右にならえではない。
流されてしようもないことに加担する人もいれば、くだらないと一蹴できちゃう強さを持ったママさんもいるようで……。
つき合いをめんどうがって、集団とは適度な距離を取っているさるママさんがちょいちょい、はじかれへこんでいる母子を手招き。
「これはちょっと聞きかじっただけだから」との前置きにて、どうしてあんなことが起きたのかを話してくれた。
なんでもあのママ友グループのリーダー格の旦那が、はじかれたママさんと仲よくしていたのが原因らしい。
嫉妬深い奥さん。「人の夫に馴れなれしい、このドロボウネコめ」とか思っちゃったそうな。
しかしそれは誤解。
仲よくもなにも、たまさか顔を会わせて向こうから挨拶をしてきたから応じただけなのに。
と、はじかれたママさん大激怒!
するとこの情報を教えてくれた人は「まぁ、そんなもんだよ。あの人はいっつもそうだから。わかってるやつはわかってるから、あんまり気にしなくていいよ」とケラケラ笑って慰めていた。
べつに聞き耳を立てていたわけじゃないけど、たまさか一部始終を聞いてしまったミヨちゃんたち。
「ママ友ってこわい」
ミヨちゃんがぼそり。
するとヒニクちゃんもぼそり。
「積極的で行動的なんだけどねえ」
他者に対してなにかとマウントをとりたがる人がいる。
集団にてなにかと中心で仕切りたがる人がいる。
問題は意気込みに対して能力や度量が足りないこと。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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