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933 るーぷ
しおりを挟む猿まわし。
動物のサルを使った大道芸。そのルーツは古く、紀元前四千五百年前のメソポタミア文明の頃にはすでに存在していたらしい。
イルカショー。
イルカを使った人気の見世物。歴史はそれほど古くなく、もとは海外で行っていたものが輸入されて根付く。しかしいつのまにやら海外では廃れて、国内にて独自の進化発展を遂げるようになった。
サーカス。
動物を使った芸や人間の曲芸など複数の演目を集めたもの。古代エジプトに起源を持ち、ローマ時代に原型が確立されたといわれている。近代になって喜劇的要素も取り入れられ、ピエロなどの道化芸の概念が加わり隆盛を誇る。
他にも動物と関わる職業は古くから多い。
笛で操るヘビ使いなども有名だが、猿まわしに似た、犬まわし、猫まわし、キツネやタヌキを用いたものなどもある。
こんな話もある。
イヌまわしを稼業としていた男がいた。
その芸はたいそうすばらしく、どうしても自分でもやってみたい。コツを教えてくれと頼み込んだ客がいた。
あんまりにもしつこいものだから、ついに根負けした男がひとつコツを教えてやった。
「イヌに芸を仕込むこと自体はそれほどむずかしいことじゃない。問題なのは情を移さないことだ。三年たったら、さっさと食べるこった。でないととんでもない目にあうぞ」
※古代にはイヌを食べる習慣があった。というか国や時代によっては何でも食べた。そうしないと生きていけなかったからである。
せっかく仕込んだ相棒を殺して処分しろ。
なんとも奇妙なこという。金のなる木だというのに。
だからそんな忠告を無視して、客は自分でもイヌまわしを始めたのだが、それはうまくいった。
けっこうな稼ぎが出るようになり、すっかり有頂天になったその者は、助言のことなんてすっかり忘れる。
そんなある日のこと。
さるやんごとなき方のところで、ぜひとも芸を披露して欲しいとの仕事が舞い込む。
身分のある相手なので、きっとご祝儀もたんまりはずんでもらえるとホクホク顔で出かけたのだが、待っていたのは大きな鍋で……。
じつはその依頼はウソ。いいようにこき使っていた自分の飼い犬たちに逆襲されちゃうという怖いお話。
かとおもえばぶんぶくく茶釜のように、人助けをするタヌキもいる。
真偽のほどはどこぞにうっちゃって、とにかくそれだけ人と動物との関わりは深いということ。
一方で近年増えているのが動物愛護を声高に叫ぶ風潮。
なんでもかんでも「残酷だ」「かわいそうだ」と難癖をつける。
猿まわしもイルカショーもやり玉にあげられている。
そのくせサーカスに乱入したりはしないし、イヌにはしつけが必要と広言してはばからない。
あれはかわいいから、これはかしこいから。
けっこう線引きがあいまいで、適当で感情的。
かと思えば、不気味だ不吉だ縁起が悪いとの理由で、魔女狩りのあおりを喰らって猫が殺されまくった時代もあったりと、とかく人間とは身勝手なものである。
そしてそんな身勝手な人間が親になったときに、子どもを傷つけたあげくに、きまって口にするのが「これはしつけだから」の台詞。
いつものごとく仲良しの二人にての下校中のこと。
そんな悲しいニュースがちょいちょい伝わる現状を憂いてミヨちゃんは言った。
「子どもすらろくすっぽ保護できないのに、何を助けるのやら」
これを受けておもむろにヒニクちゃんが口を開いた。
「地獄の無限ループ」
しつけられていない子どもが大人になると、
そういった大人になる。そしてそんな大人が牛耳る
社会で育てられた子どもまた、そんな大人のようになる。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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