ミヨちゃんとヒニクちゃんの、手持ち無沙汰。

月芝

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992 でふぉ

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 タイムリープ。
 現代から過去へと戻って、禍根や後悔を断ったり、新たな未来を模索する。
 小説、アニメ、マンガなどではお馴染みの設定にて、高い人気を誇るジャンルでもある。
 戦国時代に行って有名な武将に手を貸し、歴史を変える。
 未来から過去へと渡って、未曾有の災厄を回避するために悪戦苦闘する。
 あるいは大切な人を守るためにひとり孤独に奔走する。
 などなど……。
 すっかり手あかがついて、目新しさもないけれども、やはり人気がある。
 大なり小なり、人間が生きていれば後悔が生じる。

 あの時、べつの選択をしていたら。
 あの時、ちがう相手を選んでいたら。
 あの時、ほんの少し勇気を出して一歩を踏み出していたら。
 何かがちがっていたのかな?

 ゆく川の流れのごとく、時間はただ流れていくばかり、
 上から下へと伝うことはあれども、その逆はない。
 だからこそすぎ去りし時、思い出を前にして願わずにはいられない。
 そんな願望をかなえてくれるのがタイムリープ。
 心の奥底に眠る「もしも」の可能性。
 よりよくなるとは限らない。現状よりもずっと悪くなることもあるだろう。
 なのについつい夢を見るのは、現状に満足していないからか? あるいは別の何かを抱えているせいか?

 そんな話をくどくどと教壇にて語るのは担任のヨーコ先生。
 この前のお見合いはけっきょくダメだったらしい。だが、わりと機嫌がいいのはひとつの出会いがダメになったその帰り道に、べつの出会いがあったらしいとのウワサがある。
 さすがに面と向かっては訊けないけれども、態度からしてうまくいっているみたい。
 で、そんなヨーコ先生がいきなりタイムリープのことを話しだしたのにはちゃんと理由がある。

「家に帰って、お母さんやお父さんに『もしも子どもの頃に戻れるなら、何をする?』ってたずねてみな。するとたいていがこう答えるはずだ。『もう少しちゃんと勉強しておくかなぁ』ってな」

 みんな大人になってから、ふと過去を振り返るときがある。
 そのときにしみじみ思うのがコレ。
 ずっとあとになってから、失ってから気がつく、恵まれた子ども時代のこと。
 もしも戻れるのならば、今度こそはムダにしない。

「……とはいえ、やっぱりダラダラ過ごしそう。子どもは基本、三日坊主がデフォだからねえ」

 ミヨちゃんがいささか懐疑的。
 これを受けておもむろにヒニクちゃんが口を開いた。

「失言や同じ過ちをくり返すのもデフォ」

 学びはする。注意もする。でも忘れる。うっかりする。
 過去どころが現在進行形のことすらもなかったことにする。
 そんな図々しさが、ときおりうらやましく感じる。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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