27 / 71
026 推参、御庭番衆部
しおりを挟むモズラが飛び立ってしまう!
空の上に行かれたら、クダンちゃんたちには手も足もでません。
あぁ、万事休すか!?
「させるかーっ!」
諦めムードの一同にあって、ひとり気を吐くのは大谷部長でした。
園芸の鬼がビリビリ槍を手に、モズラへ単身特攻をかけようとするも、それはいくらなんでも無謀というもの。
だから三年生の男子部員らがふたりがかりで、「ダメダメ」「危ないですってば」と懸命に押し留めています。
クダンちゃんもどうにか立ち上がろうとしましたが、すぐにクラクラしちゃう。
眩暈がして膝をついてしまいます。
あぁ、口惜しい。もう少しだったというのに。
悔しさのあまりクダンちゃんの目には涙がじわり。
にじんで視界がぼやけます。
ですが、その時のことでした。
てんてん、てててん、てててて、ころころころ……
不意にどこからともなくピンクのボールが転がってきました。
小さな子どもが遊ぶのに使う、ふにゃんふにゃんした柔らかいゴム製のやつです。
高校の部活で使うようなシロモノではありません。
(どうしてこんなところに毬があるのかしらん?)
クダンちゃんが訝しんでいると、そのボールがいきなり、パンッ!
盛大に爆ぜたもので、その場に居合わせた者らは一様に「わっ」と驚きました。
ですが、これで終わりではありませんでした。
割れた玉から、ぼわわわわん。
大量の白い煙が溢れ出しては、たちまち一帯を覆い尽くしてしまったのです。
警戒レベル5に相当する濃霧のようにて、自分の足下どころか姿すらもわからないほど。
わわわ、何も見えません。
いきなり目隠しをされたような状況に、園芸部一同は混乱し、煙の奥から聞こえてくるのは戸惑いの声ばかり。
ですがそれらの声に混じって、別の音もしていました。
キンキン! シュバババ! スチャ! ズバッ! ギャリン!
えーと、よくわかりませんが、時代劇のチャンバラシーンを彷彿とさせる音です。
いったい煙の向こうでは何が起きているのでしょうか?
〇
しーん……
物音が止みました。
風がびゅるりと吹き、煙も薄まり、次第に視界が回復していきます。
そして待っていたのは驚愕の光景でした。
なんと! モズラが地面に仰向けに倒れては、白目をむいてヒクヒクしているではありませんか。
見たら気分が悪くなるやっかいな翅の模様には、赤ペンキでバッテンが入れられており、おかげでもう惑わされることはありません。
そして額のところには藁半紙が貼られており、そこには『義によって助太刀いたす。御庭番衆部』と殴り書きされてありました。
御庭番衆部。
それはつばくろ高校七不思議のひとつに数えられる存在。
部活動で密かに学園の平和を守っているという影たち。
どこに部室があるのか? 部員の数は? その規模は? 活動内容は? 顧問は? 所属しているのは誰?
一切がわからない。
誰も知らないし、知られてもいけない。
けど、たしかにいる。
それがナゾのベールに包まれた、つばくろ高校御庭番衆部。
よもやそんな部があっただなんて……クダンちゃんは目をぱちくり。
部活の紹介イベントの時に見かけなったのは、その在り方ゆえでしょうか。
もしもそうだとしたら、どうやって新入部員を集めているのやら。
きっとこれもまた彼らを彩るナゾのひとつなのでしょう。
残された張り紙を穴が開くほど眺めて、大谷部長は「そうか、彼らがきてくれたのね」とだけ。上級生であり部長という立場で部員らを束ねる身ゆえに、いろいろと彼らについて知っていることもあるようですが、多くは語らず。まるでそれがせめてもの礼であるかのように。
音はすれども姿は見えず。
風のようにやってきては――ズバッ、ビシッと悪即斬!――風のように去って行く。
御庭番衆部の助太刀により、モズラは無事に退治されました。
あとは保険局に通報して、のびているモズラを引き取ってもらえば任務完了です。
一転して笑顔になった園芸部員たち。
ふぅ、クダンちゃんはおもわず安堵の吐息を零しました。
とにもかくにも、これにて一件落着です。
11
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜
野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」
「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」
この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。
半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。
別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。
そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。
学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー
⭐︎第3部より毎週月・木・土曜日の朝7時に最新話を投稿します。
⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。
※表紙絵、挿絵はAI作成です。
※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる