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027 駄菓子屋 ― ガチャポン戦士
しおりを挟む「あぁ、ここがあの夢にまでみたお菓子の楽園なのですね」
メインの通りから路地を一本奥へと入ったところにある袋小路、その突き当りにある一軒の木造二階建ての家。
波板でところどころ補強されている板張りの壁、屋根は赤茶けたプレハブ造りにて、建屋そのものがちょっと右に傾いているかも。
吹けば飛ぶような外観ですが、なんともいえない趣があります。
ずっと貼りっぱなしなのでしょう。日に焼けて色褪せたポスターが味わい深い。役割りを放棄してただのオブジェと化している看板もまた良し。これぞ侘び寂び。
「あらら? 軒先に並んでいるあの機械は、もしかしたら、もしかして……」
硬貨を投入し、つまみを回すとガチャポン!
小物の入ったカプセルが出てくるというやつでしょうか。
ええ、きっとそうでしょうとも。
正式名称はたしか『カプセルトイザマス』だったはず。
こうやって実機を前にするのは初めてですが、どういう物かはクダンちゃんも知っています。以前にテレビで特集が組まれていましたのを拝見しましたので。
なんでもこの機械……
困ったことに何が出てくるのかわからないそうでして。さらにハズレやダブリもあるそうです。なのでムキになって引き際を誤ると、トンデモナイことになるんだとか。
夢中になり病みつきになったが最後、硬貨をたくさん用意しては、機械の前に陣取り、朝から晩までひたすらガチャポン、ガチャポン。
そのうちに目的が欲しい品を当てることから、たんにガチャポンという音を耳にすることに快楽を覚えるようになって、肝心のカプセルがどうでもよくなり、ついにはそれが原因で身を持ち崩す方もいるという。
まるで死兵のようにひたすら突撃を続けることから、そういう方々をガチャポン戦士というそうです。
うーん、とっても射幸的ですね。
袋小路の奥は、まるでここだけ時間の流れが止まっているかのよう。
とってもステキな昭和モダニズム建築。ゆくゆくは有形文化財入り確実でしょう。
ですがそうなったら自由に立ち入ることはできなくなりますから、うれしいような悲しいような……
風情ある憧れの駄菓子屋を前にして、クダンちゃんは感無量です。
ようやく来ることが叶いました。
「じ~ん。あら、いけません。感動するあまり涙が」
クダンちゃんは取り出したハンカチで、そっと自分の目元を拭いました。
そんな友人に「おおげさだなぁ」とちょっと呆れ顔なのはカエちゃんです。
あれは五月の連休明けに実施された一学期の中間テスト終わりのこと。
ようやく勉強漬けの日々から解放されて、やれやれ。
だからがんばった自分へのご褒美として、駄菓子屋で打ち上げとしゃれこもうということになりました。はじめはクダンちゃん、カエちゃん、ハッちゃん、チヨちゃんの四人だったのが、他のクラスメイトたちも「いっしょに行きたい」「ボクも」「私も」と手をあげて、あれよあれよとクラスの半数近くが参加を表明する。
ええい、こうなったらもう、みんなまとめてレッツらゴー!
意気揚々と教室を出ようとしたところで――ピンポンパンポ~ン♪
校内放送によりクダンちゃんは職員室に呼び出されてしまいました。
そのため打ち上げには参加できず。
ひとりだけ行きそびれてしまいました。
まぁ、呼び出された理由については割愛するとして……
自分だけ打ち上げに行けなかったクダンちゃんは、ガッカリしてしょんぼり。
これを不憫がって、「だったらあたいが連れていってあげる」と誘ってくれたのがカエちゃんでした。
あいにくと本日はハッちゃん、チヨちゃん、ともに部活があって参加は出来ず。
そのお詫びといってはなんですが、ふたりはアメ玉とアイスの当たりをクダンちゃんに渡して「楽しんできてね」と送り出してくれました。ありがたいことです。
というわけで、本日はふたりで駄菓子屋へとやってきました。
「ほら、そろそろ中へ入るよ、クダンちゃん」
店の前で「へー、ほー」と感心してばかり、その場からちっとも動こうとしない友人に、しびれを切らしたカエちゃんが手を引き、ふたりは店の中へと。
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