星の勇者たち でも三十九番目だけ、なんかヘン!

月芝

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104 飛空艇

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 中央から離れ小島であるコウケイ国までの道のりは、とても遠い。
 強行軍でも五日はかかる。いくども列車を乗り継ぐ必要があり、さらには馬車や船の利用に徒歩も強いられる。
 なお途中、山賊や列車強盗に飢えた獣に禍獣なんぞにも襲われるオマケつき。
 あとうっかり乗り継ぎに失敗したら、びゅうびゅう乾いた風が吹きすさぶ寒空の下、外敵の脅威に怯えながら無人駅で野宿することになりかねない。
 ここギガラニカの大陸において、国を幾つもまたぐ長距離移動の旅は、基本的に戦いである。

 えらく物騒なのだがそれもしょうがない。
 なにせ中央から離れるほどに、治安が悪くなるのだから。
 辺境はもとより環境が過酷である。加えて生きている者たちはみなワイルドだ。もしくは生きるのに必死と言えなくもない。ぼんやりしていては生き残れない。
 諸事情で中央を追われた連中が、こぞって流れてくるのもやっかいだ。
 そのわりにコウケイ国の治安がいいのは、島民の穏やかな気質もさることながら、離島であることと、国土が小さいがゆえにしっかりと目が行き届くから。
 ぶっちゃけ最果てのきわきわにあるので周囲には野生の脅威がいっぱい。
 だから島内で遊んでいる余裕なんぞはないのだ。それからヒトやモノの流通経路が限られているから監視がしやすい。外部から不審人物が入島してきたらすぐにバレる。良くも悪くもド田舎だということだ。

 まぁ、それはさておき……
 いよいよ連合評議会の開催が間近に迫ってきた。
 あまり気乗りはしないけれども、これは国際的な決まり事なので欠席はできない。中央に向かわねばならない。
 同行するメンバーはエレン姫、ジャニス、枝垂、飛梅さん、赤べこのフセ、四人と一匹である。

 エレン姫が王様の代理にて、近衛士のジャニスは警護兼補佐役、枝垂は星クズの勇者なのでもちろん強制参加、飛梅さんとフセは枝垂の従者とペット枠だ。
 いちおう事前に先方へ「ペットの同伴は可なのか?」とのお伺いをたてたところ、「周囲の迷惑にならなければ、常識の範囲内で問題ない」との回答を頂いてある。
 はたしてフセが常識の範囲内に収まり、なんら問題もなく、ましてや周囲に迷惑をかけないのかといえば、正直なところ飼い主としては小首を傾げざるを得ない。
 しかし置いていくリスクと連れて行くリスクをかんがみて、いざという時にそばにいた方がいいだろうと枝垂は判断した。旅の間中、ずっと気を揉んで胃がキリキリするのはイヤだ。

 今回は枝垂の亜空間収納「梅蔵」があるので、荷物をいちいち担がなくていいのはうれしい。一刻を争うギリギリの乗り換えのときに、ホーム内を全力疾走するのがかなり楽になるだろう。
 とはいえ、またぞろ腰とお尻を酷使する乗り継ぎ地獄を体験することになるのは同じ。
 行く前から枝垂がはやくもげんなりしつつ、ぼちぼち荷造りなんぞを始めていたら、そこへおもわぬ朗報が届いた。

 なんと! 中央が特別に迎えの飛空艇を派遣してくれるとのこと。
 コウケイ国だけでなく周辺国を巡って、星の勇者らを回収するそうな。
 過酷な乗り換えよ、さらば。
 おいでませ、快適な空の旅。

 これはとてもありがたい。
 が――理由を知れば枝垂は素直に喜べなかった。
 派遣理由が先のイーヤル国での対赤霧戦において、友軍として参加して栄誉の戦死を遂げたチバー国の勇者ヴィクターの件を考慮してであったからだ。
 対星骸戦における貴重な戦力をこれ以上、無為に失うわけにはいかない。
 それは暗に「ほれみろ、だから辺境の小国なんぞに大切な勇者の身柄を預けるのなんて反対だったんだ。身の程を知れ」と云われているようなもの。

 一方で中央はうしろめたさも抱えている。
 不幸にも荒野とイーヤル国とでほぼ同時に赤霧が発生したために、連合軍は荒野の方の討伐を優先した。
 これは「中央ばかりを偏重して、地方をないがしろにするのか!」と辺境国から責められてもいたしかたない。
 とはいえ、あながち間違った判断でもない。
 イーヤル国に派兵するにしても、到着までに三日ないし四日はかかる。
 連合軍は第二十一次・星骸討伐戦において多大な被害をこうむってガタガタ、再編の真っ最中と聞いている。とてもではないが二ヶ所同時に派兵する余裕はなかった。
 戦力、時間、距離、補給線……などなどを考慮すれば「まずは手近な方から着実に片付ける」と軍上層部が決定するのは妥当だろう。

 だが、その結果、ヴィクターは死んだ。
 いや、実際のところ大地を埋め尽くすほどの残土穢の大群と、東京タワーほどもある超大な女王を相手にして、中途半端な援軍なんぞは意味を成さなかったことであろう。
 すべては「たられば」の話にて、本当のところは誰にもわからない。
 しかし辺境の窮地、それも国家存亡の危機に際して、中央が動かなかったというのが問題であった。正しくは動けなかったのだけれども、辺境の人々からすれば見捨てられたようなもの。

 なんやかやと出すモノだけ出させておいて、いざという時に働いてくれないのでは、さすがにちょっと……

 との不審の種が辺境各国にて大量にばら撒かれた格好だ。
 それらが今後、どのように芽吹くのかは、ちょっと予想がつかない。

 いささか話が横道にそれたが、とにもかくにも飛空艇である。
 せっかくの剣と魔法とスチームパンクの異世界にやってきたというのに、ずっとのどかな島暮らし。島での乗り物なんて、それこそ漁船ぐらいしか見かけない。
 それらしい乗り物なんて、最初に乗ったリニアモーターカーみたいなのぐらいしか枝垂は知らない。
 だから、ワクワクしながら準備万端整えて旅立ちの当日を迎える。
 一行は港にて飛空艇が来島するのを待ちわびていたのだけれども……

「おっ、あれかな……って、なんだかずいぶんとフラフラしているような」
「というか煙が出てないか? ボヤ騒ぎでも起こしたのか?」
「いいえ、そんな程度ではなさそうですけれども」

 枝垂たちは桟橋にて、空の彼方から近づいてくる飛空艇を凝視していたのだが、すぐに全員がその目を大きく見開くことになった。
 なぜなら飛空艇が巨大な虫たちの群れに襲われていたからである!


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