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180 一華の野望(国外版)
しおりを挟むとある大国にて新たに大統領に就任した男が、自国ファーストをかかげ、領内の締め付けを強化するとともに、他国に対して友好路線を捨てた。
あくまで自分の国が第一にて、他国のことなんて知ったこっちゃねえ。
理があるところとは握手をかわすが、そうでないところには「カーッ、ペッ!」と唾を吐き、そっぽをむく。
今までも見えないところでは、そういった側面があったものの、これを隠さなくなった。
外面の仮面を脱いで、なんでもかんでも強気に出る。
で、相手がグチグチ文句を云えば「よかろう、ならば戦争だ!」と言わんばかりの態度にて、脅す。
事実、世界屈指の大国ゆえに、それが出来るから性質が悪い。
とある大国にて経済バブルがはじけた。一党独裁国家ゆえに秘密が多く、都合の悪い情報は隠すがゆえに、以前から危ぶまれていた。
ことあるごとに他国を批判しては、やれ「面子をつぶされた」「礼儀がなってない」「歴史から反省しろ」とか騒ぐくせに、逆の立場になったら、自分たちのことは棚に上げて逆切れしては「内政干渉だ!」「いわれなき中傷、不当に当方を貶めようとしている!」「他国から云われる筋合いはない!」と吠える。
国民の非難の矛先が党や政府に向きそうになれば、きまって仮想敵をでっちあげては愛国心を煽り、そちらへと意識誘導し気をそらそうとするもので、いきなり難癖をつけられる側はたまったものではない。
また闇雲に拡大路線をとっては、強引な海洋進出などもしているから、隣国との関係はかつてないほど悪化の一途を辿っており、そのせいで周辺域にてただならぬ緊張が走る。
とある国が核実験を再開した。
脱原子力社会を目指す一方で、あいもかわらず原発が稼働している。
核のゴミは日々増え続けている。
とある国がある国へと突如として軍事侵攻を開始した。
大国と小国、かつては属国関係であった歴史を持つ二国。
以前から虎視眈々と狙っていたらしく、世界中がオリンピックに湧いた直後の間隙を突いて、いっきに国境を越えた。
両国の軍事力の差を考えれば、戦争はものの一か月程度で収束するかにおもわれた。
だがしかし、仕掛けた側の上層部の予想を大きく裏切り、戦局は一進一退の攻防を繰り返し、年単位で長期化、泥沼の様相を呈す。
世界中でテロが頻発している。
しかし以前とは方法ががらりと様変わりした。
以前であれば反体制を掲げる過激な地下組織が動いていたのに、いまや個人や少数のテロリストの台頭が目立つようになっている。
いかにも過激派といった連中が暴れるのではなくて、どこにでもいそうなごく普通にしか見えない人間が、いきなり牙をむく。
インターネットなどより得た情報にて、ホームセンターで売っている商品などから、自作の爆弾を作ったり、3Dプリンターなどで銃火器類を作成しては襲撃を行う。
SNSなどを通じて知り合った者を、実行犯として差し向けるケースも増えており、活動が表面化しにくいこともあって、追跡したり、事件を未然に防ぐのが難しくなっている。
世界各地での紛争が発端のとなり、原油高や食料の高騰化を招き、それが物価高へと繋がり、流通に不具合が生じ経済はまわらず、格差を助長する。
ナゾのウイルスによる病気が世界的パンデミックを引き起こした。
ワクチンの開発に成功したのと、ウイルス自身が弱体化したこともあり、どうにか人類は窮地を脱すも、追い詰められた時ほど本性があらわとなるもの。
国と国同士、組織と組織同士、人と人同士、あらゆる単位でのコミュニティにて相互不信の種がまかれる。
それを助長するのが、いまだに解明されていないウイルスの出処と、その後の一部の者たちにとっては都合のいい流れだ。
通常、ワクチンの開発には基礎研究から臨床試験や承認を得るまでに十年ほどもかかるのが一般的だ。
なのに、アレのときには急にポンっと出た!
緊急時だからと、いろんな課程をすっとばして、急いだというけれど……
環境問題はより深刻化を続けている。
北極の氷が溶け続け、猛暑にて連日四十度前後まで気温が上がることが当たり前になりつつある。そのせいで熱中症という言葉が、すっかり身近になった。
台風がより狂暴性を増しており、被害甚大となる。
空気が乾燥することで、大規模な山火事が起きた。二千平方キロメートル――東京都の面積に相当する森林が灰燼に帰す。そんな山火事が世界各地にて起きている。
海洋汚染もちっともおさまらない。大量のマイクロプラスチックゴミが漂い、これに地球規模での気温上昇による海流の変化にて、海の中の環境が激変しつつある。
――すべては、ほんの数年でのことだ。
これまでのツケといえばそれまでだが、一度にどっと噴出する。
世界には暗雲が垂れ込め、誰もが「あれ? もしかして世の中、なんだか悪い方へ、悪い方へと向かってないかな」と首を傾げるようになった。
このイヤな流れを食い止めようと動く者たちも大勢いるが、それらが逆に新たな騒動の火種になったりと、本末転倒なことも少なくない。
☆
誰も彼もが不満を抱え、怒りを抱えている。
そのやり場に困り、ますます頭にカッカと血がのぼる。
ときに感情が理性を押しやっては、大衆は炎上し暴発する。
踊る世界に、ひとりほくそ笑むのは、いまや世界屈指のグローバル企業へと成長した「UME」の総帥・馬酔木一華(あせびいちか)である。
情報をばらまき、資金を投入し、国をも欺き、人心を惑わし、世界中を巻き込み渾沌へと誘う。
すべては彼女の手の平の上であった。
目的はもちろん神の手によって攫われた兄の奪還である。
神隠し、その裏にいるであろう存在――便宜上、神と呼称している。
自分の大切な人を奪った神なる存在を、一華は敵と定めた。
そして敵を自分と同じ土俵に引きずり降ろすために、画策したのが現在の渾沌としつつある社会情勢である。
とどのつまり、一華は世界そのものを人質にして、神に交渉を持ちかけるつもりなのだ。
「さて、いい具合に場が温まってきたわね。そろそろ最終フェイズへと移行するとしましょう」
――七日後、世界中の原発が一斉に暴走、メルトダウンを開始した。
それにともない、ありとあらゆる通信チャンネルを通じて、世界中に配信されたのは、一華による犯行声明である。
『さぁ、神よ……選びなさい。私の願いを叶えるか、それとも人類を見殺しにして世界を滅ぼすのかを』
この日……
ひとりの女の一途な狂気が、神の喉元へ刃を突きつけた。
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