星の勇者たち でも三十九番目だけ、なんかヘン!

月芝

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213 集結

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 決戦の地。
 乾いた風が吹き、赤茶けた砂塵が舞う荒野――

 上空から見下ろせば地面のそこかしこが抉れており、大小のクレーターが点在している。
 すり鉢状の穴の底にて鈍光りするものがある。
 石河原のように積もっていたのはガラス化した石くれたち。
 おそらくはかつての戦いの名残り、激戦により生じた高熱により変質したものであろう。

 地平の彼方が砂埃によって歪んでる。空と大地の境界があやふや。
 ときおり旋風が渦を巻く。その際に巻き上げられた礫たちが、パラパラと地面に降り注いだ。
 かとおもったら不意に突風が轟っと唸っては横切り、一切をまとめて無造作に薙ぎ払う。

 盾として身を隠せそうな場所も、視界を遮るものも何もない。
 度重なる星骸との戦いにて、山も丘も岩も、地面より突出していたすべてが砕けてしまったから。

 どこにでも根をはる雑草すらもが見当たらないのは、ここが死の大地だからだ。
 災い星が降る地にて、糧となるものがないがゆえに、いかなる生き物も寄りつかず。
 渡りの習性を持つ鳥や蟲に禍獣らも、ここの上空を飛ぶことはない、迂回する。
 みな知っているのだ。
 この地が地球側から墜ちてくる星骸によって汚染されていることを。
 地が汚染され、砂が舞い上がり、大気と交わることで、空気も汚染されている。
 いかに屈強な兵士や、召喚時の恩恵により各種耐性が増している星の勇者たちですらもが、この地に長期滞在すればするほどにカラダに変調をきたす。ばかりか場所に染みついた死の濃厚な気配と寂寥がココロをも蝕む。
 生きとし生ける者たちが、忌避感を抱かずにはいられない不毛地帯……

  ☆

 飛空艇ヒノハカマが現地に到着したとき、すでに連合軍の主力が駆けつけていた。
 ばかりか星骸の降臨ポイントの推測も完了しており、後方には陣地を構築し飛空艇の発着場や、兵站の集積所なども設置済み。

 連合軍にとっても、ギガラニカ全土にとっても、まず対処すべきは星骸である。
 とはいえ背後の火事を放置しては、集中して戦えない。
 ゆえにこの度、連合軍は部隊を三つにわけて運用した。
 選抜された勇者隊を有する主力を荒野へと向かわせる一方で、ザレックス共和国には別働隊を派遣して共和国軍と共同にて事態の収束に務める。
 けれども、ラグール聖皇国に関しては介入を拒んでおり、下手に首を突っ込んだら、こちらにまで飛び火しかねない。
 だから国境付近にて自軍を展開しつつ難民キャンプを開設し、紛争から逃げてくる聖皇国の民たちを保護し、人命優先の対応をとっている。

 こんな状況下にあって、かなり速い段階にて迎撃準備がスムーズに整いつつあるのは、鉄道輸送のおかげだ。
 前回の戦いでは、初動の遅れによって手痛いダメージを受けた。
 それを猛省し、密かに五ヶ国から荒野へと敷かれていたのは鉄道のレールである。
 これにより短時間での大量輸送が可能となり、早急な陣地構築と派兵が適ったのであった。
 そのレールだが、たんに各国の物資集積地や軍の駐屯地と現地を繋ぐだけでなく、荒野をぐるりと囲むようにもしかれている。
 どうやら単なる輸送手段というわけではなくて、別の使い道があるっぽい?

 自陣営には他にも気になることがあった。
 パッと見には、巨大な棺桶のような箱がデンと置かれてある。
 箱のまわりでちょこまか、忙しなく動いているのは、クランコスタとドラゴポリスの魔導士や技官たちだ。
 片や魔道国家、片や技術大国……五ヶ国のうちのふたつがいっしょになって作業をしていることからして、あの箱の中身は今回の戦いのために用意された決戦兵器といったところか。

 そうそう決戦兵器といえば、ムクラン帝国も新造の飛空艇を投入するとの話である。
 エレン姫が提供した情報と技術を用いて造ったものにて、この短期間のうちに完成させたばかりか実戦配備にまで漕ぎつけるとはおそれいった。さすがは大国である。
 まだ到着していないようだが、あの女帝がたんなるコピー品に甘んじるとはおもえない。きっと帝国独自の改良を施しているはず。どのような機体なのか楽しみだ。

  ☆

 管制塔の指示に従って、指定された場所へと着陸する。
 飛空艇の扉が開きタラップへ一歩出るなり、枝垂は「へっくしょん!」
 う~空気が埃っぽい。荒野に降り立つなり、たちまち唇はカサつき、肌がひりつく。

「おい、枝垂。ここでは極力、口元を隠しておけよ。砂で喉をやられるぞ。ゴーグルも着用しておけ。それからこまめに水分補給をするのも忘れるな」

 そう言ったジャニスはゴーグルを着け、襟巻を引っ張り上げて顔の下半分を隠していた。
 エレン姫や他の隊員たちもすでに同じような格好をしており、慌てて枝垂もこれに倣う。
 荒野での戦闘用の装備品として、いちおう防塵マスクはある。
 だが、前線の部隊に優先して配備されているので、飛空艇を用いての後方支援に携わるであろうコウケイ国軍のところにまではまわってきていない。
 なおゴーグルは自前だ。
 枝垂はゴーグル越しに、左腕に装着した金の腕輪の輝石の色を確認する。

(現在の色は青……魔力は満タンにて問題なし)

 この腕輪は星の勇者に支給される装備品にて、身分を証明する物でもある。
 もちろんただのタグなんぞではない。シンプルなデザインながらも高性能な魔道具、いくつも機能が付いているのだが、さらにエレン姫が魔改造を施して防護機能をも持つ唯一無二の腕輪にて、虚弱体質である枝垂にとっては生命線ともいえるシロモノ。
 使用できるのは三回のみ。
 シールドを使うごとに青、黄、赤と色が変わっては残りの使用回数がひと目でわかるようになっている。

 戦地特有のピンと張りつめた空気に臆することなく、さっさと司令部へと向かうエレン姫やジャニスたちを、枝垂も早歩きにて追いかけた。


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