星の勇者たち でも三十九番目だけ、なんかヘン!

月芝

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218 デコイ

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 広い陣地内を横断し、会合があった建屋からコウケイ国軍が布陣している場所へと枝垂が戻ると、隊員らはみなすでに飛空艇ヒノハカマに乗船していた。

「急げ枝垂、すぐに発進するぞ!」

 タラップで待ってくれていたジャニスにうながされて、枝垂は急ぎ階段を駆けあがり船内へと飛び込む。
 乗船口の扉が閉まるのを待ちかね飛空艇が浮上を開始する。
 飛空艇は空の上にあってこそ、のんびり地上に留まっていてはタダの的だ。
 とはいえ現在の荒野の空には、列車砲による光弾が飛び交っている。
 このまま浮上すれば弾幕に巻き込まれるのでは?

 船内通路をブリッジに向かう道すがら、枝垂がそんな懸念を口にすれば、先を歩くジャニスが「問題ない。管制塔が進路を指示してくれる」と教えてくれた。
 激しい包囲攻撃の中にあって、一ヶ所だけ通り抜けられる経路が設けられているとのこと。全体からみればか細い糸みたいな道筋だけれども、自陣から飛び立ちそちらへ向けて進めば弾幕を無事に抜けられるという算段だ。

 おかげで枝垂たちがブリッジへと着く頃には、飛空艇ヒノハカマは無事に離陸できた。
 すでに荒野に垂れ込めていた濃霧は打ち払われており視界は効くので、枝垂たちは高々度から地上戦の様子を見守る。

 一方的に砲撃にさらされている星骸二十二号は爆炎に翻弄され、爆発が起こるたびにその巨体が右へ左へと揺れ動く。
 十本の角と七つの頭を持つ獣、猛攻を受けてすでに顔がふたつ潰れていた。
 だというのに、気持ち悪い面相をいっそう歪めては長い首をゆらゆらさせながら笑っている。潰れた顔までもがへらへらしている。
 痛みを感じないのか?
 だが攻撃が通るたびに苦悶しては「ギャーッ」と耳障りな悲鳴をあげている。表情と態度がちぐはぐ、喜怒哀楽がごちゃまぜにて、それがまたヤツの薄気味悪さに拍車をかけている。
 カラダの方にも破損が生じており、ダメージは確実に蓄積されている。
 だというのにその歩みが止まらない!
 信じられないことに、ヤツはじりじりとだが前へ前へ、連合軍の陣地めがけて近づいている。
 抑えきれない。
 勇者隊は何をしている? このままでは――

 枝垂がやきもきしているとエレン姫が「心配いりません。作戦通りです」と言った。
 じつは星骸二十二号が本陣を狙ってくるのは想定済み。
 だからこそあえて目立つように大きな陣地を、これ見よがしに構築した。
 その真意はデコイ――囮である。
 陣地というエサをチラつかせ、星骸二十二号がこれに喰いついたところを、四方より砲撃する。
 あらかじめ決められた道を星骸二十二号が進むことで、行動予測が立てられ狙いが絞られる。
 やたらと砲撃の命中精度が高かったカラクリはこれであったのだ。

「まさかそんな大胆な作戦があったなんて知りませんでした。この陣地そのものが囮だったなんて」

 信じられない……枝垂は目をぱちくりさせる。

「すみません。このことは機密事項だったのです。なにせ鉱人らの意を受けた者がどこに潜んでいるのかわかりませんから」

 エレン姫の言葉に、枝垂は「あっ」
 ついつい忘れがちであったが、今回の星骸の出現にまるで呼応するかのようにして起きた、ラジール聖皇国とザレックス共和国での争乱。
 陰で糸をひいているとおぼしき鉱人たち。
 行動のはしばしに見え隠れしているのは害意にて、彼らはかつて自分たちを裏切り見捨てたギガラニカの住人たちを憎んでいる。
 その敵愾心は、地球とギガラニカのふたつの世界の垣根を越えるほどにまで強いもの。

 鉱人は核となる部位があって、それさえ無事であればカラダをいくらでも再生できる特性を持ち、もっとも不死不滅に近い種族だ。
 だからこそ悠久の刻を越え、復讐すべく暗躍してきた。
 高価な宝石類に身をやつすことで、地球人類を操り、欲望を刺激し扇動し、国同士の対立を煽り、軍拡競争をうながし、ときに経済を暴走させては格差を助長し、環境破壊をも誘発させる……
 これにより生まれる星骸たちを次々とギガラニカ側に堕とす。
 ばかりか、星骸に自身をまぎれ込ませることにより、こっそり帰還を果たしてはこちらの世界でも工作を続けている。
 鉱人らの狡猾なところは、けっして自分たちは矢面に立つことなく、他者を動かすこと。

 ――執念や妄執を通り越し、すでに狂気の域に達している。
 そんな鉱人らの目を欺き、星骸に勝利するためには、こちらも相応の覚悟と策でもって当たる必要があったのだ。
 第二十二次・星骸討伐戦は序盤から激しい動きをみせた。
 だがついに列車砲の弾が尽きて、砲撃が止む。
 かなりダメージを与えたものの、星骸二十二号はいまだ健在!
 そして作戦は第二段階へと移行する。


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