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325 無限増殖
しおりを挟む(なんていうか……とらえどころがない女性だなぁ)
というのが、彼女の印象である。
銅鑼の音により開始された天下一武闘会の第四番目。
いざ、戦いが始まっても、禁忌なる者『人工生命体ムジーナ』は、ぼーっと突っ立っているばかり。
顔がないので表情が読めず、何を考えているのかがさっぱりだ。
私とて数々の修羅場を潜ってきた。異形で危険な禍々とも、樹海の奥で幾たびも遭遇している。けれども、あれらは根本的に殺戮衝動やら暴力性、食欲などが前面に押し出されているので、ある意味わかりやすい。
(比べてムジーナは反応が乏しくて、う~ん……やりにくい)
とはいえ、いつまでもお見合いをしていてもしょうがない。
だから私は挨拶代わりに一発、ぶっ放した。
早撃ちにより火を噴く銃口、放たれた弾丸は宮女の額へと吸い込まれて、ヒット!
だがしかし頭部が吹き飛ぶこともなく、貫通もせず。開いた穴はすぐに埋まってしまって、ムジーナは平然としていた。
――銃弾が効かない!?
手応えがない。まるで泥田んぼに踏み込んだかのような感触だ。
ならばと竹侍将軍サクタが大太刀を振りかぶる。
最上段の構えにて突撃しては、気合いもろともズバっと。
脳天から股へとかけて唐竹割りにする。
情け容赦のない一刀により、縦に真っ二つ。
でも、すぐにピタっとくっついてしまった。
そこで今度は竹僧兵のベンケイが金棒でフルスイング、側頭部を殴打する。
衝撃で首が折れねじれては明後日の方を向くも、ムジーナの体がぷるるんと波打ったとおもったら、あっという間に元通り。
――斬撃、打撃ともに通用せず。
すると次は自分だとばかりに竹忍者頭領のコウリンが放ったのは一本のクナイ。
ただし、ただのクナイではなくて末尾に火薬が仕込まれたもの。ブスっとささっとところで、ドカンと爆ぜる仕様だ。しかも刃に猛毒が塗られているオマケつき。
斬っても殴っても、銃でもダメなら爆破してしまえ。
との考えのようにて。
突き刺さったクナイすらも呑み込むムジーナであったが、直後にちゅど~ん!
体内で爆発が生じた。
一瞬にしてその身が風船みたいにパンパンに膨らむ。
かとおもったら、パチンと破裂し四散する。
さすがに内部からの破壊には耐えきれなかったか?
――爆撃はいちおう効果あり。
「……とはいえ、この程度で殺せるような相手が、あのディレクティオのお眼鏡にかなうはずがないんだよねぇ」と私。
案の上であった。
飛び散った欠片たちがうにょうにょと蠢いては、ぶくぶく膨れて、各々が宮女姿となり、ムジーナが増えちゃった!
その数、7体。
しかも銃、刀、金棒、クナイなどの武器まで所持している。
どうやらこちらの得物を模倣したようだ。
今度は自分たちの番だとばかりに、7体のムジーナらが一斉に攻勢へと転じる。
おもいのほかに素早い動き。
さらには銃からはちゃんと弾丸が発射されるし、クナイも爆ぜるから油断がならない。
とはいえ数はこちらの方が多い、囲んで冷静に対処すれば何も問題はない。
……はずであった。
7体と対峙しているうちに、背後に異様な気配を感じて私は「はっ」
カンのいいコウリンや竹忍者たちもふり返ってみれば、新たなムジーナが複数、出現しているではないか。
見落としていた欠片があった?
いいや、ちがう。そうではない。
その正体は、先ほど発射された弾丸であり爆ぜたクナイ。
自身の肉体を変形させて武器を再現しているムジーナ。
当然ながら使用された弾丸なども同じ……彼女の肉体の一部。
ゆえにムジーナにとっての飛び道具類は、攻撃の手段であるとともに自身を増殖する手段でもあったのだ。
とてもやっかいだが、それよりも私はあることに考えが至り、ゾゾゾ。
「えっと……うっかり弾丸とかを受けたりしたら、アレの一部が体内に入り込むことになるんだよねぇ」
もしもそうなれば体内より浸食されて、たちまち体を乗っ取られかねないではないか。
「こりゃあ、いかん!」
もしもネームドメンバーの誰かがムジーナの手に落ちたらなんて、想像もしたくない。
何の対策もせずに突っ込んでいったら、どえらい目に合う。
そう判断した私は「総員、一時撤退! 都の方へ」との指示を出した。
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