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326 両面宿儺
しおりを挟む分裂、増殖をくり返すムジーナ。
クグノチに似た性質っぽいけれども、どうにも得体が知れない。
ちなみにクグノチとは『滅びと再生のクグノチ・グレイ・グー』のことである。
自己増殖性を有する極微細な群体にて、全てのバイオマスを使って無限に増殖することにより、やがては星の生命維持環境をも食べ尽くし、世界に終焉をもたらす。
……かもしれないモノ。
遥か古の失われた時代――
当初は純粋に医療用として開発されたものの、あんまりにも便利だからと濫発乱用していたら、どんどん増えていき、気づいたらシャレにならない量にまで増えていた。
そこで一ヶ所に集めて、管理することにしたのがクグノチ・グレイ・グーである。
あまりにも膨大な量にて大陸の南西部の、海へと突き出た釣り針のような形をした半島を形成するほど。
かしこ。
ムジーナとクグノチは似たような存在なのかもしれない。
よって扱い方を間違えると、とっても面倒臭いことになりかねん。
下手に刺激するのもダメだ。
というわけで、追ってくるのを幸いに、ムジーナの分身たちを個別に捕獲して、クグノチに処理を丸投げにするのはどうであろうか?
なんでもキレイさっぱり分解してくれるゴミ処理場……げふん、げふん、もといクグノチの素晴らしい能力ならば、きっとムジーナを消滅させられるはず……
都合がいいことに、私には『竹牢獄カグヤ』なる拘束技もある。
閉じ込めた対象から養分をちゅうちゅう吸うことで弱体化させるだけでなく、もらった栄養で竹の牢獄は強化される。
虜囚が強ければ強いほどに、檻はより頑強となる脱出不可能の牢獄だ。
「あー、そういえばミライアもいたんだっけか。面倒だし、彼女もいっしょにクグノチに引き渡すか」
などと考えつつ、私たちは散開して個別にムジーナの分身を捕えるべく、霧煙る都にて待ちかまえていたのだけれども、そこへ聞こえてきたのがズシン、ズシンという足音。
地面も若干震えており、付近の石壁からはパラパラと細かい破片が落ちてくる。
「これはいったい……ん? 霧の向こうから何かがこっちに近づい……っ!?」
あらわれたのは全長18メートルほどもあろうかという異形の巨人。
八本の腕に三本の足、頭部の前後両面に顔を持つという奇怪な姿をしている。
ただし顔は鼻筋や輪郭があるだけで、目、鼻、口などはない顔のないマネキンのようであった。
あと参考までに全長18メートルといえば、あの『連邦の白い悪魔』と呼ばれたのと同じぐらいだ。
もっとも私の目には白い悪魔というよりかは『両面宿儺』のように映っているけれども。
ちなみに両面宿儺とは仁徳天皇の時代の飛騨に現れたとされる異形の人物、もしくは鬼神のことで、日本書紀にも記されているほど。
なんでも凄い暴れっぷりだったらしく、力強く敏捷性も凄かったけど、踵はないらしい。
閑話休題。
てっきり都に潜む私たちを、個別に追いかけてくるものとおもっていたらさにあらず。
ムジーナはの分身たちはふたたび集合、合体しては異形の巨人姿にてあらわれた。
「あんな芸当もできるだなんて聞いてないよ!」
おもわずツッコまずにはいられない。
でもそんな私のツッコミに対する返答は激烈なものであった。
八本ある腕のうちの一本をこちらに向けたとおもったら、その腕がぐにゃりと変形して筒状となる。
「これは竹ライフル……いや、ちがう、竹火輪砲だ!」
対パンダクマ用に開発した竹火輪砲、ようは竹製のキャノン砲である。
戦国時代には木をくり抜いて造った大砲モドキがあったらしいので「竹でもできんじゃね?」と開発を始めたモノ。大口径の砲塔にて、そのサイズは大和型戦艦に搭載されていた主砲に匹敵する。
先の不発に終わった霧の都への長距離射撃。
あれを目撃されて、火輪砲を模倣されたっぽい。
サイズ的には本家よりもふた回りぐらい小さいので、威力もその分だけ落ちるだろうけど、脅威であることには変わりない。
あわてて私たちはその場から離脱しようとする。
直後に、発射音が轟く。
超音速に達した弾頭が一条の光となり、霧の都を切り裂いた。
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