竹林にて清談に耽る~竹姫さまの異世界生存戦略~

月芝

文字の大きさ
332 / 475

332 烽火のラブコール

しおりを挟む
 
 霧煙る都を切り裂く一条の紅蓮。
 立ち昇る業火の旋風。

「グルガァァアァァァーッ」

 渦中に囚われているハートの絶叫が響くも、その声は周囲で荒れ狂う紅の風によりたちまちかき消されてしまった。
 ヘミに跨り、いち早くその場から離脱していた私であったが、背後からヒシヒシと迫る熱波と爆風に内心ではドキドキしっぱなし。

(なによあれ? 前に見た時よりも格段に威力があがっているじゃない!)

 おそらくはウンサイさんが魔改造したんだろうけど、めちゃくちゃ火力が増していた。もはやレベル2の域を越えている。
 そんな危ない兵器の行使に気がついたヘミが、いち早く連れ出してくれなかったら、私もどうなっていたことか……

「……って、えっ、ちょっと待ってよ。だったらそんなのを使ったコウリンもただじゃすまないのでは? もしかして相討ち覚悟とかじゃないでしょうね」

 サーっと血の気がひいていく。
 いくらリブートできるとはいえ、特攻とかは断じて容認できない。精一杯、足掻いた末ならばともかく、打算的なのはノーサンキューだ。
 だから慌ててふり返って彼の安否を確認しようとするも、そのタイミングで私たちの頭上をバサリと飛び越える影があらわれたもので「へ?」

 何かとおもえば、当のコウリンであった。
 両手足を広げては装備している特殊な布を広げ、風を受けては舞い上がり宙を滑空している。爆風を利用したムササビの術だ。
 ちゃんと逃走手段も確保していたらしい。
 そのちゃっかり具合に、私はほとほと感心する。

 はからずもコウリン、ヘミと合流できた。
 でも、他のメンバーたちの居所はまだわからない。彼らも知らないらしく、引き続き捜索することになる。
 なおハートの方はいったん放置で。
 あれほどの炎と爆発に巻き込まれたのだ。ふつうならば黒焦げの焼死体になっているところだが、なにせ相手はあのハートだもの。あの程度の炎では倒せまい。
 せいぜい、ちょっとした足止めといったところだろう。

 はたせるかな、火柱はじきにかき消え、聞こえてきたのは低い唸り声。
 腹の底に響く重低音にて「グルルルル……」
 そこに込められてあるのは、怒り。
 続けて耳に飛び込んできた咆哮により、霧の都中の大気がビリビリと振るえた。
 純然たる害意が波となり、津々浦々へと浸透していく。
 目には見えない波に触れられた瞬間、心臓に氷の塊を押しつけられたかのような感覚に襲われた。
 都の中心で声高に叫んでいたのは「おまえは必ずぶっ殺す」との熱烈ラブコールといったところか。

「まぁ、どのみち全員、殺すつもりなんだろうけど」

 それはさておき、みんなとはやく集合しないと。
 ここで調子に乗って追い打ちとしたところで、きっと返り討ちにされてしまうだけだろうから。
 さっきの派手な烽火ほうかのおかげで、ハートの位置と誰かと戦っているのは、はぐれた仲間たちにも知れ渡ったはず。

「ということは下手にうろちょろするよりも、この付近にいたほうがいいのかしらん?」

 でも、あんまりちんたらしていたら、怒り狂ったハートに追いつかれて狩られてしまう。
 いまのヤツの強さはかつての比ではない。
 現在のうちの戦力でも、けっこうギリギリのはず。
 個別で当たったらサクタやベンケイらネームドメンバー以外は、かなり危うい。

 ――えっ、私?

 ハハハ、たぶんまともにひっぱたかれたら、一撃で粉砕されちゃうかも。
 試合開始直後に喰らったアレは、速度重視で威力や正確さを欠いていていたから、致命傷にならずに助かったけど、本腰を入れられたら耐えられるのは、せいぜい一撃ぐらいだろう。二発目はたぶんムリ!

 我がカイザラーンの竹人形たちはみな兄弟。地下茎とリグニンコードで繋がった同士にて、一糸乱れぬ連携こそが華である。
 その強みをもっとも活かせるのは集団戦だ。
 だからこそ、みなとの合流を急ぐ必要がある。
 そして当初の作戦通りに、ヤツに黒雷ドームを使わせるのだ。
 用意した対策により生じる隙、そこにすべてを賭ける所存にて。


しおりを挟む
感想 322

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

狐侍こんこんちき

月芝
歴史・時代
母は出戻り幽霊。居候はしゃべる猫。 父は何の因果か輪廻の輪からはずされて、地獄の官吏についている。 そんな九坂家は由緒正しいおんぼろ道場を営んでいるが、 門弟なんぞはひとりもいやしない。 寄りつくのはもっぱら妙ちきりんな連中ばかり。 かような家を継いでしまった藤士郎は、狐面にていつも背を丸めている青瓢箪。 のんびりした性格にて、覇気に乏しく、およそ武士らしくない。 おかげでせっかくの剣の腕も宝の持ち腐れ。 もっぱら魚をさばいたり、薪を割るのに役立っているが、そんな暮らしも案外悪くない。 けれどもある日のこと。 自宅兼道場の前にて倒れている子どもを拾ったことから、奇妙な縁が動きだす。 脇差しの付喪神を助けたことから、世にも奇妙な仇討ち騒動に関わることになった藤士郎。 こんこんちきちき、こんちきちん。 家内安全、無病息災、心願成就にて妖縁奇縁が来来。 巻き起こる騒動の数々。 これを解決するために奔走する狐侍の奇々怪々なお江戸物語。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

処理中です...