こちら第二編集部!

月芝

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第三の怪 歩道橋の影 前編

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 校舎一階、廊下の掲示板に、少し距離をとって、二枚の大判紙が並んで張り出されている。学級だよりの一部を拡大コピーしたものだ。
 華やかな紙面にて、特に女子生徒らが集まっているのが、第一編集部発行の『パンダ通信』である。
 ごく一部の男子生徒らが、じっくり舐めるようにして眺めているのが、我ら第二編集部が発行している『エリマキトカゲ通信』である。
 五枚つづりのフリーペーパーの山が、掲示板前の棚の上に置かれている。
 はやくも第一のほうは無くなりかけており、重版がかかったらしく、部員たちが対応に追われていた。
 比べて、第二の山は、まだまだ健在であった。
 地元の都市伝説的なものの検証をする企画が掲載されたときには、ばんっと跳ねて『パンダ通信』を追い抜く『エリマキトカゲ通信』であったが、それはあくまで一時的にすぎない。

「ふぅ、しょせんはイロモノ企画だからねえ。王道にはかなわないよ」

 四年生の松永美空は、小さなため息をこぼす。

「だよね。にしても、前から気になっていたんだけど、エリマキトカゲって、何でなんだろう」

 同じく四年生である明智麟は、ずっと疑問に感じていたことを口にした。
 第一のパンダは、なんとなくわかる。
 だって、あの動物園のほっこり系アイドルだもの。
 なのに、第二はエリマキトカゲである。
 爬虫類を好きだという女子は少数派であろう。でもって、ちっともかわいくない。もしも、走ってくるのを見かけたら、麟はきっと逃げ出す。
 じつは以前、六年生の先輩たちに理由を聞こうとしたのだけれども、五年生の里見翔に無言で首を横に振られてしまった。
 どうやら触れてはいけないことであったらしい。
 けれども、何事にも好奇心旺盛である美空は、とっくに独自で調べており、その辺りの事情を知っていた。

「あー、リンちゃん、それはねえ。いまから、さかのぼること三十年以上も前に――」

  ◇

 かつて、大人も子どももイケイケどんどん、モーレツな時代があった。
 玉川小学校は、膨大な数の生徒を抱え隆盛を誇っていた。
 そのうちに、有志が集って本格的な学級だよりを発行する、第一編集部が立ちあがったのを皮切りにして、第二、第三と続き、最盛期には第七まで数えるようになる。

 では、なぜ、そんなことになったのか?

 当時は現在とちがって、娯楽が限られた時代であった。
 テレビはあれどもゲームはまだない。マンガはあったけれども、読めば大人たちがいい顔をしない。もちろんスマートフォンどころか、その前身である携帯電話も登場しておらず。家には黒い電話があって、町中には電話ボックスが我が物顔にて、でんとそびえ立っていた。
 塾や習い事に通っている子なんてクラスでもごくわずか。大半は日が暮れるまで遊びほうけていたものである。
 そして、いつの時代にも、凝り性な人間というのはいるものだ。
 まぁ、いまでいうところのオタクというやつだ。その子たちが心血をそそいで作った紙面に、生徒たちはたいそう衝撃を受けた。

「うそ……すごい、子どもでもこれだけのことが、できちゃうんだ」

 カメラや手帳片手に、まるで本物の記者みたいにあちこち駆け回っては、写真を撮って、メモをとり、記事を書き、それを刷って新聞にする。
 それが、子どもたちの目には、たまらなく格好良く映った。
 結果、「ぼくも」「わたしも」と、やってみたいとおもう生徒が続出する。
 かくして玉川小学校に七つの編集部が乱立し、覇を競う学級だより戦国時代が幕を開けた。競争は激化の一途をたどり、戦いは熾烈を極めたという。
 だが、しばらくして、読者からこんな投稿が寄せられた。

『第一とか第二とか、どれもこれも学級だよりという同じ名前で、ややこしい』

 云われてみれば、たしかにそうである。
 そこで第一から第七まで、すべての編集部の編集長が一同に集い、協議をした。
 しかし会合はもめにもめ、最終的には各々が紙片に動物の名前を書き、これを箱に入れてシャッフルしたものを、ひとりずつ引いて、当たったクジの名前を自分たちの学級だよりに使うということに決まった。
 もしもかぶれば、その時はジャンケンでということで、さっそくやってみたのだけれども、奇跡的にかぶりは発生せず、すんなり名前は割り振られた。
 そのとき第二編集部が引き当てたのが、誰かがふざけて書いたエリマキトカゲであった。
 ちょうどその頃、テレビのコマーシャルで起用されていたそうで、そこそこ人気があったらしい。嘘か誠か、キャラグッズやら玩具、プロモーションビデオなるものも制作されるほどには、知名度があったというから驚きだ。

 しかし、栄枯盛衰が世のならわし。
 少子化による生徒の減少、深刻な後継者不足、人気の低迷、主義主張の相違、内紛による離合集散、流行の移ろい、もう飽きた……などなど。
 一つ減り、二つ廃刊し、気づけば残っていたのは、第一と第二編集部のみとなっていた。
 そして厄介なことに、ずっと続けてきたものを変えるのは、気が引けるとあって、エリマキトカゲの名前は、そのまま使われ続けて、現在に至っているという次第である。

「パンダとエリマキトカゲ、おもえばその頃から、第一と第二には差があったんだね。持てる者と持たざる者という、明確な差が」

 そんな言葉で美空は話をしめくくった。
 これを聞いて麟は言った。

「しょうもな!」

  ◇

 掲示板での負けっぷりをしばし眺めてから。
 明智麟と松永美空の四年生コンビは、いつものごとく第二編集部の部室へと向かった。
 でも、部室の扉を開けようとしたところで、なかから言い争う声が聞こえてきた。
 なにごとかと、恐るおそる扉を開けてのぞいてみれば、五年生の里見翔が六年生で編集長でもある上杉愛理に、くってかかっているではないか。

「だから、どうして駄目なんですか?」
「あのなぁ、当然だろう。私たちはまだ小学生なんだぞ。学級だよりの発行は、あくまで部活動のいっかんだ。生徒だけの夜間活動なんぞ許可できるか」
「しかし!」
「とにかく駄目なものは駄目だ。よって、そのネタはボツ」
「っ!!」

 珍しい。いつもにこにこ、愛想笑いを絶やさない里見翔が、感情をあらわにしている。
 美空が、黙って様子を見守っている六年生で副編集長の村上義明に、つつつと近づき小声で「どうしたんですか?」と尋ねたところ、こういった経緯であった。

 隣町の国道にある歩道橋に、雨の夜になると不気味な影があらわれるという。
 まだ玉川小学校界隈にまでウワサは流れてきていないが、いずれは届くはず。
 その前に先取りして、これを例の企画で取り扱おうと里見翔は提案するも、編集長は先に述べたような理由にて、まるで取り合わない。
 それでムキになるあまり、つい声を荒げていたというわけだ。

 交渉は決裂し、「ちっ」と舌打ちにて里見翔は、ぷりぷり怒りながら部室を出て行ってしまった。
 上杉愛理はそれをため息にて見送るも、部室内にはなんともいえない空気が残る。
 すると、村上義明が四年生コンビに言った。

「やれやれ。こっちは俺が引き受けるから、おまえたちは翔のほうを頼む」

 第二編集部は五人きりの少数精鋭である。もしも、このまま里見翔が辞めるとか言い出したら、いよいよもって廃部の話が現実味を帯びてくる。
 それに、この手の揉め事は、早々に対処しないと修復がむずかしくなりがち。気まずくなってそれっきり、なんてこともあるから油断ならない。
 うなづき合った麟と美空は、急いで里見翔を追いかけた。

  ◇

 校内をあちこち探し回って、里見翔の姿をようやく見つけたのは、校庭の隅にあるブランコのところであった。ブランコに腰かけギイギイと揺らしている。
 四年生コンビが姿をあらわしたのを目にして、里見翔は唇を尖らせ、ぶつぶつ。

「ったく、村上先輩の指図か。あの人、いつも不愛想なくせして、妙なところで余計な気を回すんだから……」

 言葉とは裏腹に、アヒル口を浮かべる里見翔の顔には、もう怒りはなかった。いつもの彼に戻っている。
 でもだからこそ、麟たちは余計に気になった。
 部活動をそつなくこなしてはいるものの、あまり自主的には動かない里見翔が、あれほどムキになっていたことに、である。
 後輩二人よりじーっと見つめられること、しばし。
 ついに根負けした里見翔は、しぶしぶ重たい口を開いた。

「はぁ、……君たちも知ってるだろう。僕がみんなから、陰でなんて云われているのかを」

 里見翔は、やや小柄で、マッシュルームカットと萌え袖がよく似合う、とても可愛らしい男子である。愛想もよく、あまり我を出さない。ゆえに一見するとクラスでも人気が高そうではあるが、じつはそうでもない。
 いや、個々からは人気がある。でも、それが集団になると、とたんに敬遠されるのだ。
 個人間でのつきあいならば問題は起こらない。なのに、それが三人以上になると、何故だかこじれる。里見翔を巡って三角やら四角に五角関係、はては陣営が分かれて、いがみあいが生じ対立が激化する。結果として、その集団が壊れてしまう。
 ゆえに、ついた渾名が、クラッシャー翔。
 当人はもちろんそんなことは望んでいない。なのに自然とそうなってしまう。
 事実、それを理由に、彼は第一編集部への入部を断わられた過去を持つ。
 ちなみに、これを拾いあげたのが、上杉愛理であった。

「あれ、その子、いらないの? だったらうちがもらうよ」

 といった具合に、横からひょいとかっさらったのだ。
 でもって第二編集部では、いままで特に問題が起きていない。
 それは良くも悪くも個性的な面々が集っているがゆえであった。

 里見翔は話を続ける。
 彼は隣町の学習塾に自転車で通っている。わざわざ隣町の塾にまで通っているのは、先に述べた理由からである。下手に顔見知りが多いと、またぞろ揉める。それを避けるためだ。
 片道ニ十分の距離はちょっと大変だけれども、通っているうちに塾で友だちもできた。
 その子は里見翔の事情を知ってもなお、態度を変えることなく、気軽に付き合ってくれる貴重な存在だ。

 なのに、そんな友だちが、このところ塾を休みがちになっている。
 里見翔が心配し、家までお見舞いに行ってみると、とりあえずは元気らしいとわかって、ほっとするも、なにかに怯えているみたい。
 そこで詳しく聞き出してみれば、白状したのが「歩道橋の影」であった。
 塾の帰りにたびたび遭遇するばかりか、一度なんぞは追いかけられたらしく、それですっかり怯えてしまっていたのである。
 このままでは怖くてとても塾には通えない。それにあんまりこんな状態が続けば、親に塾を変えられてしまうかもしれない。
 そうなればせっかく仲良くなれたのに、会えなくなってしまう。
 友だちを失いたくない里見翔は言った。

「だったら僕がなんとかしてあげるよ。まかせておいて」

 しかし、大見得を切ったものの、一人ではいささか心もとない。
 そこで第二編集部の例の企画にかこつけて、みんなを巻き込んで調べさせちゃえ、と目論んだものの、上杉愛理編集長にあっさり却下されたのであった。
 話を聞き終えた四年生コンビは、そろって「「はぁ」」と嘆息する。

「途中まではなんとなくいい話っぽかったのにねえ」

 と、麟は首を振る。

「最後のくだりが余計だわ。でも、いかにも里見先輩っぽいけど」

 と、美空は苦笑した。

 とはいえ、である。
 さしてお世話になってはいないけれども、部の仲間が困っているのはたしか。
 そして、先輩を立てるのは後輩の義務である。
 順当に進めば次期編集長は里見翔になるであろう。
 などということも加味しつつ、四年生コンビはひそひそ相談を始めた。

「横断歩道の影か、ちょっと気になるよね、ソラちゃん」
「いかにも読者が喰いつきそうなネタ、これをみすみす見逃すのは惜しいかも。となれば、問題は編集長の説得か」
「でも、上杉先輩の言ってることも、もっともなんだよねえ」
「そうなのよ、リンちゃん。そこで、こういった感じで説得するのはどうかしら?」

 編集長の首を縦に振らせる秘策を、美空からごにょごにょと耳打ちされた麟が「わかった、それじゃあ行ってくる」と、一人とてとて駆けてゆく。向かうは第二編集部の部室である。
 これを不審そうに見ていた里見翔に、美空はにへらと顔を歪ませる。

「べつに変なことは頼んじゃいませんよ、里見先輩。たんに、夜、調べるのが駄目ならば、昼間だけ限定でやらせて欲しいと、直談判するように言っただけですから」
「ふぅん、だったら、僕たちみんなで行ったほうがよかったんじゃないのか」
「あー、それだとたぶん逆効果です。なにせ私や里見先輩みたいに、腹に一物持っているタイプがそろったところで、相手に警戒されるのがオチです。その点、リンちゃんは素直で裏表がありませんから」
「うっ、たしかに。僕が言うよりも明智が言ったほうが、上杉先輩も話を聞くか……。まぁ、それはともかくとして、前から気になってたんだけど。おまえたちって、まるでタイプが真逆なのに、どうしてそんなに仲がいいんだ? 幼稚園の頃からのつきあいなんだろう」

 明智麟という少女は、どちらかといえば何事にも受け身がちである。
 松永美空という少女は、好奇心旺盛で自分から積極的に動く。
 一見するとそりが合わなそうだが、二人はとても仲良し。
 人間関係にいろいろと悩みを抱える里見翔は、そんな二人がいつもべったりなのが、ずっと不思議であったからこその、この質問であった。
 けれども、美空は「ふふふ」と笑みを浮かべるばかり。口元に人差し指をあてて「それは乙女の秘密です」と教えてはくれなかった。

「なんだよ。人の話を聞くだけ聞いて、自分のほうはだんまりか。ズルいぞ、森永」
「そのうち気がむいたら教えてあげますよ、里見せんぱい」


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