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040 消えた宮司一家、妄想迷走、サスペンス
しおりを挟む鈴の人への通じるであろう新たな手がかり。
消えた宮司さん一家。
その行方はとんと掴めないまま、早や三日が過ぎようとしている。
あれからわたしと生駒は廃村近隣の集落にある役場を片っ端からあたってみた。けれどもどこにも転居届などの記録が見当たらない。ゆえに捜索範囲をさらに拡大することに。
そうなるとさすがにわたしたちの手には余るので、生駒が稲荷総会に助力を請う。
おかげさまで宮司さん一家の情報がぽつぽつ判明してきた。
宮司さん一家、苗字を赤原さんといい、あの地で代々社を守り祭事をつかさどっていたという。家族構成は夫婦にお子さんが一男一女の四人家族。
たまさか家族写真も一枚手に入った。けれども、いかんせん古くて画質もいまいち。それでもハッとさせられるのが奥さんの容姿である。
見た瞬間、わたしが連想したのは一輪の白百合の花。劣化した写真でこれなのだから、もしも実物ならばどれほどの器量良しか。
手元にある家族写真から受ける印象はとてもしあわせそう。
だがしかし……。
「いくらなんでもおかしい。不自然だ。若いのが一人でふらふら各地を放浪するのならばともかく、家族そろって消息がわからないだなんて」
稲荷総会からの中間報告に生駒がむずかしい顔をしている。
なにやら雲行きが怪しくなってきた。
というか、むちゃくちゃキナ臭い。
陸の孤島ばりに世間から隔離された山奥の村、古い慣習が色濃く残る閉鎖空間、突発的に発生した不審火、目の醒めるような美人妻、消えた宮司一家、穢された山、バラバラになった神楽鈴……。
「えーと、不安要素がてんこ盛りなんですけど。まさか二時間サスペンスのドラマ的な展開とかは、さすがにないよね?」
わたしがおずおずたずねるも、生駒はムムムと眉間にしわを寄せたまま。「アリかナシかといえば、六対四であるかも」と言われ、わたしも「うーん」
ここから先はあくまでわたしの勝手な妄想なのだが……。
◇
山奥の村で祭事を仕切る家柄ということは、赤原家には相応の発言力とか地位がありそう。
一方で村でもっともえらい人は誰かと考えた場合、やはり村長となり、影響力が強いのはその一族ということになる。
政治と信仰。
それは車の両輪みたいなもの。
両者が仲良く手を結んでいるうちは、村の運営もうまくいくはず。でも関係がぎくしゃくしたら、たちまちまともに進めなくなるだろう。
だから双方ともにいろいろ含むところがあったとて、表面上は波風を立てないように過ごしてきたはず。
が、ここで登場するのが、白百合の花のように可憐な美人さん。
あれほどの器量よし。それこそ時代が時代ならばお殿様の側室とかに迎え入れられてもおかしくはないほど。さぞやモテたことであろう。周囲の男どもはみんな夢中になったはずだ。
そんな彼女が自分の生涯の伴侶にと選んだのは、誠実で実直な宮司。
かくして誕生した夫婦、一男一女の子宝にも恵まれ、順風満帆といったところ。
なのに、そんなしあわせな一家に忍び寄る不吉な影があった。
秘めた淡い想いが邪恋にかわったのか、あるいははじめから人妻への横恋慕という邪恋だったのかはわからない。
とにかくその人物は宮司を妬み嫉み憎み、そして美人妻を欲してやまない。
その人物とは村長のところの放蕩息子。(※本当にそんな人物がいたのかは不明。あくまでこれはわたしこと奈佐原結の勝手な妄想なので、あしからず)
親の権威をかさにきて、村ではやりたい放題。
しかし唯一、思い通りにならなかったのが美人妻。すぐそこにいるのに手が届かない。おあずけを喰らったイヌのように、ヨダレたらたら。
どうしても欲しくて欲しくてしようがない。それにあの赤原家は何かとたてついてくるので、前々から忌々しいと考えていた。
そんなときに起こったのがドロボウによる社の火事。
小賢しい放蕩息子はこれを利用した。立場のある彼が声高に責任問題を糾弾する以上、村人たちもおいそれとは逆らえない。
時期も悪かったのだろう。
時代はますます近代化へと移行しており、信仰のチカラは下がる一方。かつては権威の象徴であった宮司もまたしかり。
もしかしたら放蕩息子は表で赤原家に難癖をつけつつ追い詰め、裏では美人妻に「このままだとマズイことになるぜ。どうしたらいいかはいちいち言わなくてもわかってるよな。げっへっへっ」とゲス根性丸出しにて言い寄ってさえいたのかもしれない。
これに対して宮司は屈することなく毅然と対応。
ならばと家や伝統よりも家族を選び、村を出ることに決めた。
しかしここで悲劇が起きる!
それは激しい雨の夜だった。
思い通りにいかなかった放蕩息子が逆上し、暴挙におよぶ。
村を出ようと準備をしていた赤原家に刃物片手に乗り込んだのだ。
これに驚きあわてて逃げ出す赤原一家。
ロクに視界も効かない暗い雨の中を、必死に逃げ惑いながら村へと向かい助けを求める。だがいくらドンドン扉を叩いて窮地を訴えようとも、誰も家から出てこようとはしない。みな関わりあいになることを恐れたのだ。
孤立無援を悟った宮司は家族を連れて、村からの脱出を試みる。
しかし幼子二人に女を抱えた身での歩みはたかが知れている。ついに道半ばにて悪鬼に追いつかれてしまった。
悲鳴と怒号、血飛沫が舞う。
宮司は妻と我が子たちをかばい凶刃に倒れながらも叫ぶ。
「おまえは逃げろ! 子どもたちを頼む」
「あなたーっ」
◇
……なーんてね。
という妄想話をわたしがしたら生駒が「あきれた!」でも「いかにもありそう!」
三尾の灰色子ギツネはしかめっ面。
そしてわたしもウゲェと顔をゆがめる。
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