神造小娘ヨーコがゆく!

月芝

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27 四者面談

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 孤児院兼寄宿舎学校の院長ラマンダさん。
 元トップランカーの冒険者にして、オッドアイの鑑定眼持ち。ひと目で私の異様さに気がついた妖艶美魔女。炎の魔法がえぐいらしい。
 ギルドマスターにして私の師匠であるハウンドさん。
 元トップランカーの冒険者にして、生ける伝説の武人。昆虫人という種族で、見た目はまんま昔の特撮番組の主人公のようなヒト。めっちゃ強い。
 ハムート国の王子であり魔甲騎兵団を預かるイクロスさん。
 剣の達人にして金髪碧眼の美青年ながらも、腹の中はかなり黒々な御方。妹にはかなり甘いお兄ちゃんとのこと。
 以上のお三方によって現在、私は囲まれている。
 場所はギルドの執務室。
 ちなみに本日のお題は「ヨーコとは何者?」である。

「初めて会った時からヘンな子だとは思っていたけれども、まさかこの短期間でイクロス王子まで引きずり出すなんて」

 やや呆れ顔のラマンダさん。あいかわらずお胸がけしからん。

「まあ、それに関してはオレにも責任がある。まさかギルドの出入りを見られていたとはな」

 ポリポリと頭をかいてみせるハウンドさん。
 師匠と院長ってば一緒にパーティーを組んでいたそう。あと二人のメンバーを合わせた四人組にて、かつてはブイブイいわせていたんだそうな。

「以前ならば見過ごしていたか、情報を精査しようとは思わなかった。ここのところ細々とした問題が続いていたから、普段より市井の動きに目を光らせていた。それが功を奏したというわけだ」とイクロス王子。
 金髪碧眼の美形がソファーの背もたれに身を預けながら、足を組んでいる姿はたいそう絵になる。

「それにしても異世界渡りだったとはねえ……。てっきりお伽話の類かと思ってたのに本当にいるだなんて」

 ラマンダさんの言葉に「うんうん」と二人の男たちも頷く。
 異世界渡り……、それは私のように違う世界からやってきたヒトやモノのことを指す言葉。
 長い歴史の中では不意に現れる異物が存在する。
 技術であったり、知識であったり、想像もつかない発想だったり、とにかくこれまでの常識を覆すような、突拍子もないことが幾たびか起こり、世界に変革あるいは混乱を招いたことがあった。
 それらの裏には異世界渡りが関与していたと、まことしやかに囁かれているという。
 私は変身能力のこともあり、これまでの経緯を彼らに洗いざらい白状した。
 信じてもらえなければ、それも仕方があるまいと考えていたのだが、予想外のマジメな反応に、かえってこちらが面喰らったほどである。

「オレも初めて聞かされたときには驚いた。だがあの変身した際の珍妙な姿や、その秘めた能力を目にすれば信じるしかあるまい」
「私も同じだ。とくにあの『黒猫』の造形は、この世界には無い。あんな姿で暴れていたら、そりゃあ領民からバケモノ呼ばわりされてもしようがあるまい」

 師匠から「珍妙」、王子からは「バケモノ」と云われ、ファーストコンタクト時の苦い想い出が脳裏をよぎる。あれは本当に辛かった。
 トラウマをグリグリされてへこんでいる私にラマンダさんが声をかける。

「私はまだ、その変身というのを見てないわ。ちょっとやってみせてよ」

 ちゃっちゃと黒猫の着ぐるみ姿になったら、何故だか爆笑された。
 美魔女が腹を抱えて笑っている。
 草臥れ具合とヤル気のない目がツボに入ったらしい。
 釣られて男二人も肩を震わせる。
 酷い大人たちだ。
 と冗談はここまでにして、イクロス王子が急に真顔になった。

「まあ、ざっと話を聞いた限りでは変身能力以外は問題なさそうなので、当面はこの三者のみで情報を秘匿しようと思うが、どうだろう?」
「オレは賛成だ。ふざけた容姿でも巨大モンスターと単独で戦える時点で、悪用されたら目も当てられない」
「私も異議なし。無自覚に垂れ流した異世界の知識が、どのような波紋を起こすか想像もつかないしね」
「あー、情報や知識に関しては大丈夫ですよ。たいしたの持ち合わせていないので」

 心配する三人をよそに、へらへら顔にてそんなことを口にしたら、イクロス王子に顔面を鷲掴みにされた。
 ……い、イタいです、王子。
 華奢な見た目に反して、きちんと鍛錬を積んでいるからチカラが強い。おかげで私の頭がメキメキと嫌な音を立てている。だからそろそろ放して。

「料理、服飾、道具、思想、その他もろもろ。おまえにとっては取るに足らないことであろうとも、こっちにとって目新しい何かであれば、それだけで下手をしたら社会変革へと繋がりかねないんだ。いい加減に自覚しろ。おまえはこの世界にとって、毒物劇薬にも等しい存在だということを」
「りょ、了解しました」

 言うだけ言って満足したのか、イクロス王子がぺいっと私を放出。
 ソファーでぐてっとのびている間にも、大人たちは何やらごにょごにょと小難しい相談をしていたが、急激に頭の血の巡りがよくなって、ぼーっとしている私の耳にはまるで入ってこなかった。


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