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008 究極の電池
しおりを挟むただいま宇宙戦艦「たまさぶろう」に乗って、衛生軌道上にて遊泳中。
敵はあの目玉のお化けだけにて、退治して以降、宇宙の海は静かなもの。
どこまでも続く星々の煌めき、色とりどりの七つの月、大地の緑と青さに見飽きることはない。
神鋼精神の持ち主であるわたしは、はじめての環境にもかかわらず、しごく快適に過ごしている。
もういっそ、ずっとこのままでいいんじゃない? と思い始めているほどだ。健康スキル超すげえ。
ルーシーの頑張りもあって、情報は着々と集まりつつあるが、精査するのにもう少し時間がかかるとのこと。
なにせ地球よりも、こっちは星の面積が何十倍も大きいらしいから、それもしかたがあるまい。
「そういえばさぁ、なんでルーシーたちってば、ギフトバーゲンセールのときに、もっと自己アピールをしなかったの? たまさぶろうも富士丸もこんなにスゴイのに」
ただの可愛い西洋人形かと思いきや、歩くデータベースなルーシーさん。
彼女さえいれば知識チートがやりたい放題。なにせ一般非公開のアカシックレコードにアクセスできるんだから。それもこちらとあちらの二つの世界分。
料理なんぞしたこともない、親不幸なわたしですらもがマヨネーズや唐揚げどころか、ソース長者も楽勝だろう。鉄鋼王にだってなれるはずだ。
ただのサメのぬいぐるみかと思いきや、スクスク立派に育って、いまや宇宙戦艦のたまさぶろうくん。
彼さえいれば宇宙の海はオレの海状態。ぶっちゃけ天空からの一撃で一方的に敵勢力を葬れる。移動スピードもとんでもだし、水爆っぽいのバンバンだし。
ただのブリキのロボットかと思いきや、登場するなり単体で魔王勢を一蹴してみせた富士丸。
小細工無用の拳の一撃が敵を粉砕。魔法全盛の世界にあって純粋な力だけってところが逆にこわい。局地的戦闘では無双を誇り、あげくに最後には自爆して広域殲滅。
で、何度もぬくぬく蘇る。そしてレベルアップにともなって、ついにその拳が星をも砕くとか、とんでもスペックに。
だからこそ、しみじみ思うわけよ。
こんなスゴイのが、よくもまぁ、最後まで残っていたものだと。
「あー、なかには『ちょっと見せて』とかおっしゃる物好きな方もおりましたよ。でもすべて冷やかしの類でして。説明うんぬん以前に、召喚されたワタシたちをひと目みるなり、鼻で笑われたものです」
露骨に小馬鹿にした表情を浮かべたり、呆れられたり、蔑まれたり、腹を抱えて「うけるー」と笑われたり。
何度もそんな目にあっていれば、ルーシーたちの態度がかたくなになってもしようがあるまい。
あげくに大部分は彼女たちを無視してスルー。
まぁ、ギフトの選択項目に聖剣だの、勇者の恩恵だの、聖女の癒しだの、絶対防御だの、無限魔力だの、魅了の瞳だのと、ズラズラいかにもな品が並んでいれば目移りしちゃって、人形召喚なんてものにはかまっていられなくて当たり前。しかも早いもの勝ちだったしね。
「でも、わたしもかなりゴネたクチだとおもうのだけど」
ゴネるどころか神さまを締め上げて、めちゃくちゃ抗議した。
あんなに怒ったのは生まれて初めてのこと。もちろんお年寄りに手をあげたのもあれが初めて。ついでに家族以外に大事なところを見られたのも初めて。
なんだか思い出すと、無性に腹が立ってきたな。
やはり一発でも殴っておかなかったことが心底悔やまれる。
そんなわたしにルーシーは言った。
「リンネさまの場合は、最後の最後ということもありましたが、それでもいちおうはワタシたちをちゃんと見て、手に取り、接したうえでのお怒りでしたので。あれは当然の態度にて、他の方々とはぜんぜん意味合いがちがいます。むしろあの状況で何も考えずに受け入れていたら、それこそ正気を疑うところです」
褒められたのか、ディスられたのか、ちょっとわからないルーシーの言葉。
でも話しついでに、わたしはずっと気になっていた疑問も口にする。
それは彼女たちのエネルギー源について。
召喚という形式ならば、それらをまかなっているのもわたしなのか、それとも違う方法にて外部より摂取しているのか。ここが剣と魔法の世界なことから考えれば、まずは魔力がこれに相当すると思われるのだけれども。
どのみち呼び出してからずっと出ずっぱりというのも、やはりふしぎな話であろう。
「あぁ、ワタシたちへのエネルギー供給はリンネさまです。召喚術というのは呼び出して終わりではありませんから。通常は呼び出している間中、ガリガリと魔力が減るものです」
「へー、そのわりにはみんな元気だし、わたしも元気なんだけど」
「そりゃそうですよ。なにせ『健康』なんですから。いくらつかっても目減りしない魔力。しかもとんでもレベルアップのおかげで、総量と出力は桁違い。いまやリンネさまは最強の勇者にして、究極の電池。人類史上、いいえ、全次元において誰も成しえなかった夢の無限クリーンエネルギーを体現されたお方なのです」
使っても使ってもなくならないハイパー電池女。
高出力でドバドバでもへっちゃら。しかも排ガスにて空気を汚すことも、廃棄物の処理に困ることも、環境に迷惑をかけることも、なにより使用料金もちっともかからない。
すごいな、わたし。
「結果的に、我々は相性が最高によかったのですよ」
そう話を締めくくったルーシーさん。
うーん、ちょっとおんぶにだっこが過ぎる気もするけれど、わたしとしても楽だから、これはこれでいい、のかなぁ?
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