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036 ギャバナ国
しおりを挟む緩やかな丘陵地帯にかこまれ、海と見まがうほどに広大な湖を中心にして、栄えているのはギャバナ。
地域一帯の水源を抑えることで、下流域に多大な影響力を保持し、大国として君臨している。
大国らしくゴリゴリの貴族階級社会。
その中央に君臨するのは人間種族の王族たち。
ここでは生まれが一生を決める。いかに能力があろうとも、性別や種族によって越えられない高い壁が存在している。
と、これだけ聞けばなんともムカつく場所のような気もするが、各々の階級にて住み分けがなされており、分相応に生きればそれなりに人生が謳歌できる仕組みにて、実際に住んでみるとおもいのほかに快適なんだとか。
いかにもありがちな特権階級の弱い者イジメみたいなのが稀有。
これは上位の連中が立派だからというよりも、そちらでの権力闘争が激しいから。つけ込む隙や口実を与えたが最後、これさいわいと周囲からボッコボコにされちゃう。
容赦なく蹴落とされてしまい、一度落ちたら這い上がるのは至難の技。
ゆえにお家没落のリスクをおかしてまで、わざわざ愚行には走らない。もしも身内が不始末をしでかしたらバッサリ切られる。
民もその辺は心得ており、これを利用してしたたかに生きているというわけ。
ちなみに勇者保有数は十一。
各人の詳細は不明ながらも、一人だけ調子にのっているアキラとかいうヤバイ坊やがいることだけは判明している。
そんな大国へとお詫び行脚に訪れているのは、リリアちゃん率いるリスターナの使節団。
随行する官僚たちはいつもの面子ながらも、今回は警護役のハイボ・ロードたちを大幅に増員。
先のトカード国を訪問したときは五人ずつだったのが、十五人ずつ。
たぶんギャバナのテッペンをとれる戦力にて、少々過剰かとも思われたが念には念を入れた。
なにせここにはチート勇者が十一人もいるからね。
現在われわれは宇宙戦艦「たまさぶろう」にて、湖の上空をゆっくりと周回中。
もちろんカモフラージュ機能にて姿は隠してある。
せっかくの風光明媚な土地ゆえに、ちょっと前乗りしてこっそり観光しているのだ。
「それにしても、これだけ国力があるのに、どうしてギャバナはリスターナを占領するなり属国化するなりしなかったの?」
眼下の景色を眺めながら、わたしが疑問を口にする。
「こことうちとの間には二カ国ばかり挟んでありますから。たぶんそのせいでは」と教えてくれたのはリリアちゃん。
「それもあるのでしょうが、おそらくはノウハウの問題でしょう」との補足説明を加えたのはルーシー。
水源を抑えて、水の流れを支配し、他者を従える術には長けているギャバナ。
でもそれ以外の方法にて飛び地を管理運営するノウハウはない。
手間暇やかかるコストを考えた結果、「いらない」と判断されたのかもとのこと。
大国から価値ナシと断じられたリスターナ。
情けない話だが、敗戦の賠償交渉においては、かえって侮られていたほうがこちらとしては都合がいいのかな。
「せいぜい下手に出て、おだてて、媚びまくって、相手を調子づかせて、交渉をこちらの有利に運んじゃいましょう」
ルーシーの穢れたアドバイスに「おー」と元気よく答えたリリアちゃん。今日もかわらずゆるふわな金髪がフワッフワ。
これからの外交にはりきるリリアちゃん。ムフンと鼻息荒い姿も愛らしい。
だけど、お姉さんはちょっと心配。
だってこれほどの美少女だもの。
悪目立ちしてヘンなのに目を付けられないといいんだけど。
もしもそんなことになったら、わたしはダークサイドに堕ちてしまうかもしれない。
つい禁断のスイッチをポチっとな。
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