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17 それが乙女の生存戦略。
しおりを挟むリビングにてソファー代わりに置いてある特大チクワの取り換え作業に勤しみつつ、私の口からついて出たのは、先日の出来事の話題。
「この前のって、やっぱりアレの影響かなぁ」
「あー、なんか村の周りをちょろちょろとしていた連中か……、おそらくこの前の奴が戻って報告を受けた冒険者ギルドが派遣してきたんじゃろう」
少し前に変な気配がするとシルバーに言われて、レッドに上空から様子を見てもらったら数人の男たちがこちらを見張っているのがわかった。とりあえず害意はないみたいなので放っておいたら、じきにいなくなった。
いずれはなんらかの反応があるかもとは考えていたが、思いのほかに動きが早い。
どうやらギルドとは私の知っている腐乱した役所みたいなのとは違って、しっかりと仕事をしている組織のようだ。
「でもあんまり気分のいいもんじゃないなあ。あれならいっそ声でもかけられたほうがまだマシ」と私がぼやいたら、連中がこっちに接触しようとしていたことが発覚するも、どうやらシルバーたち三匹や森の仲間たちにビビッて近寄れなかったらしい。なまじ優秀さが仇となって、相手の気配とか力量を的確に判断したがゆえの忌避行動なんだって。
ひと目みて「こいつはヤバい」とか分かるのって何気に凄いと思う。
だって私なんていまだに見分けがつかずに、全てが警戒対象なんだもの。
この廃村に勝手に住み着いて半年以上もたっているが、おっかなビックリしている私は、わりと世の中のすべてに要警戒中。知れば知るほどにここが異世界だと痛感し、こちらの生き物と自分とのパワーバランスを思い知らされる日々。
私は弱い……、単体ならば神域の森にて最弱を誇る下等生物。
おかげで私の目には小動物だろうが神獣だろうが同じ危険生物にしか見えない。
朝も早くから寝台の下に敷き詰めていたチクワを入れ替え、リビングのソファーも新品のチクワソファーに交換し終えた私は、それらをシルバーに担いでもらい村の広場へと向かう。
能力がスクスク育っているせいか、チクワの匂いや固さも調整できるようになったので、無臭にして柔らかくしたら低反発クッションみたいになったから、主食だけでなく日常生活でもわりと重宝している。いまではチクワソファー、チクワベッド、チクワ枕にチクワクッションにと大活躍さ。
いちおうは生ものなので定期的に取り換えている。そして古くなったものを森の仲間たちにばら撒いて処分する。自分の投げたチクワに群がる畜生どもの姿を眺めているのは、わりと愉しいし、いい気分転換にもなる。
それになにもストレス発散目的ばかりじゃないんだぞ。
これはいわば餌付けだ。私というチクワ製造機の価値を世に広く知らしめ、私という存在の価値を確立するための深謀なる一手。戦って勝てないのならば懐柔しようという、前向きな考えにもとづく後ろ向きな生存戦略。
まあ、これは途中で思いついた後付けの理由なんだが……、それでも着々と効果を発揮しつつある。
たまに一人のときに森の仲間たちと遭遇しても、襲われて無闇に追いかけられなくなった。それどころかバッタリ顔を合わせたら「なんだチクワ娘か」ぐらいの顔をされてスルーされるぐらいには認知されつつある。
ちなみに現在のチクワ能力のレベルは6。
レベル3の段階でのサイズ変更の限界は、せいぜいが土管ぐらいまでであったのに対して、レベル6はちょっと洒落にならない。その気になったら、たぶん銭湯の煙突ぐらいイケちゃうかもしれない。以前に村の中でうっかり試して廃屋が一軒、巨大チクワの下敷きになってお亡くなりになってしまった。
何故だか毎回、天に向かってそそり立った状態で出現するので、気をつけないと自分が出した巨大チクワの下敷きになってぺちゃんこ、なんていう悲惨な最期を迎えることになってしまう。
広場でチクワを森の仲間たちに与えながら「一度、能力の限界値を試してみたい」とシルバーに相談すると、「それならば湖もどきのところに行こう」という話になった。
あれぐらいデカい奴ならば、超巨大チクワもペロリと平らげてくれるだろう。
シロに頼んで黒サイカの群れに処理させてもよかったのだけれども、今回はあのスライム野郎に頼むとしよう。たまにみんなと遠出もしたいしね。
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