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25 何処かの誰かのポリシー。
しおりを挟むどんなに頑張っても眠れない夜ってあるよね? その原因にも心当たりがあった。
昼間にお茶の試作品をがぶ飲みし過ぎたせいだ。なんか適当に葉っぱを乾燥したり煎ったら、お茶っぽくなるかなぁと試行錯誤しているうちに、お腹がタプタプになった。
そこまで頑張ってどうにか形になったのは、とっても苦いドクダミ茶っぽい何か。慣れればイケると思うのだが、三匹の同居人らにはすこぶる不評であった。
私は眠るのを諦めてチクワベッドから起き出すと、台所に水を飲みに行こうとして何気に窓の外を見る。するとそこにはシロの姿があった。
こんな時間に何をしているんだろう……、興味を覚えた私は小さな家族の後をつけるために、そっと外へと出る。
月の明るい夜だった。
異世界だからとて月は月らしく普通に空に存在している。ただしその姿が三日月とかに欠けることはない。年中無休でまん丸だ。おかげで天気さえよければ夜でもそれなりに明るく、森の仲間たちも一部が絶賛稼働中。
月光の下をタタタと駆けていく白い小動物。
まるで絵本の中に登場するワンシーンのよう。
こんな神秘的な夜だから、ファンタジーな世界だし、もしかして月の光を浴びて変身とかしちゃうかもとか、そんなことを妄想しつつも尾行したら、辿り着いたのは村外れの原っぱだった。リリイちゃんのお母さんがいつも離着陸するのに使っている空き地。
そこをびっちりと黒いサイカが埋め尽くしていた。
真っ黒な絨毯に、紅く小さな目が無数に光る。
その中に悠然と歩いて行く白い王様。
どうやら今夜はサイカの集会だったようだ。
普段はのほほんと私の上着の胸ポケットの中に納まっているシロだが、これでも一族の長。彼がひと声「ちー」と鳴けば数百万もの手下が駆けつけるという大親分。
さすがですと物陰からこっそりと覗いていたら、すぐに見つかって王様のところにまで連行された。数百ものサイカの集団が、まるで空飛ぶ絨毯みたいになって私の身柄を運んでいく。小さきもののチカラも寄りて集まれば、乙女の一人ぐらいは軽々と持ち上げてしまうようだ。
そうして私はシロの隣に座らされて、集会に参加することになったのだが……。
はっきり言って彼らが何をどう話しているのかなんて、まるでチンプンカンプン。
「ちー」と鳴いたら「ちーちちー」とか「ちっ」とか「ちーちー」と受け答えをするサイカたち。イルカとかカラスみたいに独自の意志疎通方法が確立されているみたい。どうやら脳の大きさと知能の高さはまるで別物のようだ。
しばらくぼんやりとそんな光景を眺めていたのだが、不意にクイクイと袖を引かれた。見るとシロがこっちを見上げてじっと見つめてくる。これはおねだりのポーズ、すぐにチクワを出してやるとハムハムと食べだした。
しばしその愛らしい姿に魅入っていると、周囲からなにやら視線を感じて見てみたら、その場にいたすべての黒サイカの紅い目が、じっとこちらを凝視していた。その視線の先にはチクワがある。
「しゃーねえな。今夜は特別だかんな。全員、一列に並べ」
私がそう言うなり、ザザっと黒い絨毯が動いてすぐさま大行列へと変じる。
さながら軍隊の行進のごとき整然とした無駄のない動きに、思わず「おお」と声を上げてしまった。
そこから先、私は無念無想の境地にて、ただのチクワ製造機と化し、全員にいきわたるまでチクワをひたすらポコポコと出し続けた。
明け方近くまで作業を続けて、ようやく皆にいきわたったのを確認したところで私は意識を手放した。
もう無理、さすがにもう限界……サイカ……多すぎ。
目を覚ましたら自宅のチクワベッドの中だった。
どうやらサイカたちが運んでくれたらしい。
そして短時間で超大量にチクワを輩出したのが悪かったのか、私の能力がピコンと上がってレベル8になってしまった。
レベル6で超巨大化、レベル7で任意の空間に出現させられるようになった能力。果たして次はどんなとんでも進化を遂げたのやらと、戦々恐々としていたらなんてことはない、チクワ型のバズーカが出ただけであった。
これにはシルバーともども心底ほっとした。
試しに神域の森に生えてる木に向かって撃ってみたら、あのぶっとい幹を軽く貫通して粉砕していたが、それでもレベル6と7の極悪コンビネーションに比べたら可愛いものだ。なにせあっちはチクワコロニー墜としで、たぶん都の一つぐらい軽く消し飛ばせる破壊力だからな。
「これでハナコもようやくまともな攻撃手段を手にいれたのぉ」
「でももらってもあんまり使い道がないんだけどねえ。シルバーやレッドやシロがいれば必要ないし。それに一番活躍しているのってレベル4の味付きだし」
そんな事を言ったらレッドが「ケンケン」、シロが「ちーちー」と鳴いて、嬉しそうにすり寄ってきたので存分に撫でまわしてやったとも。愛い愛い。
過剰気味なスキンシップを終えてから、手にしていたチクワバズーカをしげしげ眺めていて、ふと思いついたようにかぶりついてみたら普通に喰えた。
味はレベル2の皮つき高級チクワと同じだった。
どうやらあくまで食い物ベースの設定を押し通すようだな、私の能力は。
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