異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝

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36 レベル9の戦士たち。

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 近頃の私はわりとゴロゴロとして過ごしている。
 その原因はチクワ戦士たちだ。
 強い云々の話は別にして彼らはとっても器用なのだ。それこそ家事仕事から戦闘までなんでもござれ。我が家は有能な家政婦を手に入れた。おかげでこちとら上げ膳据え膳の怠惰な生活を謳歌している。

「レベル9は久しぶりに当たりだったね」
「まあ、6と7が凶悪過ぎたからのぉ。あの組み合わせはやりようで世界を滅ぼせるから、それと比べるとかなり優しい仕様じゃの」

 私が素直な感想を述べると珍しくシルバーが褒めてくれた。

 現在、総勢百ものチクワ戦士たちが廃村内をうろちょろとしている。
 畑仕事から村の整備にまで、彼らはその能力をいかんなく発揮している。
 大工道具片手に廃屋を修繕したり、我が家の改修をしたり、道の石畳を直して雑草を抜き、井戸の底をさらい水を清め、日に日に廃村が立派な辺境の村へと姿を変えていく。
 それだけでなく村で眠っていた各種設備を復活させ職人ばりの腕を披露し、近隣にバラ撒くか死蔵するしかなかった貴重な素材の数々を加工して、村にもとからあった温泉浴場から我が家へと管を引き、内風呂までをも増設してくれた。
 そうやって朝から晩まで頑張ってくれた彼らの最期のお勤めは、森の仲間たちのお腹に収まること。人型のチクワ戦士が寄ってたかって畜生どもにムシャムシャとされている食事シーンは中々に猟奇的ではあったが、そんな光景にもじきに慣れた。

 いつもの日課を終えて、少し村の中を散歩がてらぶらつく。
 それにしても不気味な廃村が綺麗になったらなったで、なんとも言えない雰囲気になったな。なにせそこを往来しているのは、森の仲間たちとチクワ戦士ばかり、そして畑に行けば巨大植物モンスターのビショウカが「シャー」と威嚇してくる。村はずれの原っぱでは空中要塞が着陸しているし……、ってリリイちゃんのお母さん来てたんだ。
 うん? でもその隣になんか見たことないのが一匹いるぞ。

「朝早くに突然、お邪魔してすみません」

 デッカイ翼の生えたトカゲがぺこりと丁寧に頭を下げた。
 これまでウチに来た連中の中でも屈指のまともさだ。ここのところ寄って来るのがロクデナシどもばかりだったので、私はちょっと感動しちゃったよ。
 自分をドラゴンだと紹介してくれた彼、なんでもリリイちゃんのお母さんから話を聞いて、わざわざ出向いて来たんだって。それで用向きは「産後の肥立ちが悪い妻に栄養のある美味しいモノを食べさせてあげたいから、現在、神域の森にて話題沸騰中のチクワを分けて欲しい」とのこと。
 そんなまっとうな理由ならば喜んでと、丸太サイズの奴を五十本ほどででんと出して、これをチクワ戦士たちに手伝ってもらい荷造りして渡した。

「もっと欲しかったらいつでも言ってね。あと奥さん元気になるといいね」と愛妻家のドラゴンさんに言ってあげたら凄く喜ばれて、お礼だと緑色の玉を貰った。どんぐり飴ぐらいの大きさの綺麗な玉だ。
 リリイちゃんのお母さんと愛妻家のドラゴンさんは二人して、大量のチクワを担いで大空へと飛び立つ。並んで飛んでいる姿はまさに空中要塞と空中戦艦だな。
 それを見送ってから家へと帰った。
 うちに戻ってから緑の玉をシルバーに見せたら「それは竜玉じゃな、ドラゴンどもの友愛の証じゃ、天にかざして願えばゾロゾロと助っ人にやってくるぞ」というシャレにならないウンチクを教えてもらえた。

「じゃあ、とりあえずコイツは死蔵ということで」

 私はシルバー選別による「コイツは外に出しちゃ駄目!」という品をまとめた地下室に緑色の玉を放り込んでおいた。


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