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51 乙女の一撃。
しおりを挟むこの世界に生きるすべての者たちの存亡を賭けた戦いが行われている平原。
というか、もうすでに完全に荒地だ。地表を埋め尽くしていた死の軍団が一掃された代償として、大地も完全に死んだ。
チクワ肥料を投入しても蘇えらせる自信がないぐらいの荒廃っぷりだ。キノコ雲が立つ奴とか墜としたらこんな感じになるのかな。
『やるではないか聖女よ。たったそれだけの数で百万の軍勢を屠るか。くくくく、これは愉快愉快。気に入ったぞ、お主らは殺した後に、我の直属の部下として特別に蘇らせてやろうぞ。そして未来永劫、我の慰み者として過ごすのだ』
ワンゲルオールが丸ごと耳の頭を揺らして喜んでいる。
この分だと奴にとってはこの程度の損失、屁でもないんだろうなあ。
そこで私たちは当初の予定通りに作戦を発動する。
「シルバー!」
「応さ!」
彼の背に飛び乗った私はそのまま巨人の周りを駆けてもらう。
同時に風が巻き起こり竜巻が発生。
そこに空からレッドが炎の弾を投下。
風と炎が混じり合って火災旋風が起こる。天をも焦がす勢いのソレが何本も発生し、ワンゲルオールを取り囲む。さらにフェンリルの放つ蒼い炎も加えられて、数段階凶悪さを増したものが立ち昇り、やがて一つの巨大な破壊の渦と化し、中心部にいる者を呑み込んだ。そこにシロが音波攻撃にて追撃を加える。
『なかなかやる……、だがヌルい!』
大雑把に数度、腕を振るうのみで地獄の炎にも等しい攻撃を払ってしまうワンゲルオール。
そんな彼が足下をちょこまかと走り回る銀のフェンリルを鬱陶しそうに見るが、いつの間にやら背中から聖女の姿が消えているではないか。一体どこに消えたと思っていたら、遥か頭上より小娘の声が聞こえてきた。
「ねえ、チクワって食べたことある? せっかくだからちょっと味わってみてよ。たぶん気に入るからさ」
そんな言葉とともに顔面へと飛んできた不死鳥の放った火の玉を打ち払うと、その後方より何やら巨大なモノが天より降って来るのをワンゲルオールは視認する。
自分よりも遥かに大きな物体、圧倒的質量を持つ何かが空から落ちてくる。
あまりの巨大さゆえに古の災いすらも、思わず呆気にとられ見上げる格好となった。
『なんだ……アレは?』
先の火災旋風もフェンリルによる陽動も、すべてはこの攻撃を確実に当てるための布石。
ハナコの持つチクワ能力、そのレベル6超巨大化とレベル7の視界内任意配置の組み合わせによる、チクワコロニーアタックがここに炸裂する。
レッドの背に乗って高高度まで上昇してから、更に視認限界ギリギリの高度地点からの降下爆撃。
高さと位置エネルギーは比例するらしい。
色々と小難しい理屈はあるのだろうが、なんとなくより高いところから落としたほうが威力が増すだろうと考えた私は、この手段を行使した。
これをしょせんはチクワと考えるか、されどチクワと考えるかは人それぞれだが、摩擦熱にてこんがりと焼き上がった超特大チクワ、摩天楼や塔なんて目じゃないほどのシロモノが落ちてくるのだから、直下にいる者は堪ったもんじゃない。
シルバーやシロたちサイカたちは技の発動と同時に、すでに戦線を一目散にて離脱している。
独りポツンと戦場にとり残された形となっているワンゲルオール。
その頭上へと迫るチクワコロニー。
遅まきながら罠に嵌められたことに気づいた古の紅い災いが吼えた。
『おのれぇい、聖女め! 小賢しい真似を……』
両手を天にかざし防ぐ体制をとるワンゲルオール。
両手が黒い霧で覆われ、なにやらチカラを発動させる。
すると彼の身を護るかのように漆黒のドームが出現した。
天より迫るモノと地にて防ぐモノが激突する。
しかし食い止められたのは、ほんの一瞬であった。
パリンと卵の殻が割れるように砕けた漆黒のドーム。そしてそこに超特大チクワコロニーがのしかかるかのように突き刺さる。
次の瞬間、この地は破壊のエネルギーのみが満ちる場所となった。
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