剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?五本目っ!黄金のランプと毒の華。

月芝

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008 女王の羽

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 ロクエバチの持つ帯のように長い薄羽が優雅にゆらめく。それらに触れたとたんにクロヅカの首が、手が、足が、胴体が、容赦なく裁断され飛び散る。
 個々のチカラでは空を自在に飛び、敵を一刀のもとに伏す羽を持つロクエバチの方が強い。
 けれどもいかなる名刀とて、斬り続けていれば、切れ味も鈍る。
 クロヅカたちは個体差を数の優位性で埋める。仲間たちのカラダを肉の壁とし、盾とし、ときには屍すらをも利用して、必殺の一撃をしのぐ。そしてロクエバチの羽ばたきが衰えた瞬間を狙い、空からひきずり落とし、群がり圧殺する。
 無数の生がぶつかり合い、死ばかりが累積されていく。
 一見すると人間の戦争のようであって、そうではない戦い。
 つまらぬ矜持や感情なんかは微塵もない。
 そんなものが介在する余地のない。これは種の存続をかけた生存競争。
 あるのは殺るか、殺られるか。
 ただそれだけ。

  ◇

 いまのところ戦況は六対四でロクエバチ側が優勢を保っている。
 クロヅカは数こそは多いものの、全体としての動きの統制がいまいち。
 けれどもロクエバチは女王の下、ほぼ完璧な行軍行動をとっている。
 時間が経つほどに、その差が如実になりつつある。
 この分では、ロクエさんたちが勝つだろうとわたしとカノンが安堵した矢先のこと。帯革内にて白銀のスコップ姿のミヤビが告げる。

「チヨコ母さま、東側になにやら怪しげな気配が強まっておりますわ」

 その言葉の通りにて、地下空間の東端の壁面から敵勢が湧き出す。
 ロクエバチたちの注意を南に集めたところで、背後から挟撃する目論み。
 数を活かした物量作戦!
 するとこれを前にして、女王ロクエさんがついに自ら動く。
 ふわりと飛び立った彼女が、七色の羽をたなびかせながら、東方面から出現したクロヅカのところへと向かう。
 南方面の敵勢に比べたら、規模こそは小さい集団ながら、それでも数はかなりある。軽く数千は超えているであろう。
 いくら自身が銀禍獣にて相手が銅級とはいえ、それに単騎で立ち向かうとかムチャがすぎる。

「おねえちゃん……」

 カノンが心配のあまり、いまにも泣き出しそう。
 だからわたしは帯革内のミヤビ、アン、ツツミらに、「いざとなったら、助太刀してあげて」とお願いし、ひそかに準備を整えさせておく。
 そうこうしているうちにも、早々に敵勢のもとへと到達したロクエさん。
 すぐさま戦闘が開始されるのだが、わたしとカノンはこのときの光景を一生忘れることはないであろう。
 凄惨だったから?
 あまりにも圧倒的で一方的であったから?
 ちがう。
 とてもキレイであったからだ。
 ロクエさんの口から澄んだ音色が発せられた。
 リーン、リーンと謳う彼女を中心にして、宙に幕をおろしたような薄い光があらわれた。
 七色の帯がそよ風にゆれているよう。
 淡くはかない光が、じょじょに色味を増していく。
 やがて色彩が極光となったとき、その現象は起きた。
 幾筋もの光が地上を照らし、降り注ぐ。
 光線に触れたはしから、クロヅカが絶命してゆく。
 しかもただの死ではない。乾いた砂のようにパラパラと崩れてしまい、一片すらも残らない。
 それは文字通りの消滅であった。

  ◇

 女王が放つ滅びの極光が戦場を席捲する。
 あまりのことに、わたしたちはあんぐり。

「ロクエさん、すごい!」

 女王さまの無双っぷりを目にし、むじゃきにはしゃぐ愛妹カノン。先ほどまでのおびえもどこへやら。
 わたしは「そうだねえ」とうなづきつつ、内心では彼女と友好関係を築いてくれたご先祖さまたちに深く感謝していた。

「さすがは限りなく金等級に近い銀禍獣ですわね」
「……やるな、ロクエ」
「自ら率先して戦場に立つとは、将たる者の鑑。それがし感服でござる。にんにん」

 ミヤビ、アン、ツツミたちもその戦いっぷりに惜しみない賛辞を贈る。
 東南の戦場ともに、ロクエバチ側が優勢。
 この調子ならば勝敗が決するのも時間の問題かとおもわれたとき、北部にて異変が発生する。
 ここにきてクロヅカの第三陣が出現っ!
 猛然と中央の城めがけて突っ込んできた。
 二方面からの挟撃ではなく、戦線が広がりきったところを、本丸に突っ込むという作戦であったのだ。
 クロヅカたちが全体としてのまとまりがいまいち?
 とんでもない! 行き当たりばったりどころか、めちゃくちゃ周到に攻めてきているよ。
 でも致命的に足りないモノがひとつあった。それは……。

「残念だけど、運がなかったね」

 なぜなら、いま、この場所にはわたしと天剣三姉妹がいる。
 そしてなにより愛妹カノンがそばにいる状態のわたしは、はっきりいって容赦しない。たとえ毛筋ほどにでもカノンに危害がおよぶ可能性があれば、これを全力でもって排除することも、やぶさかではないのだ。


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