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009 白き雷
しおりを挟む城へと迫るクロヅカの第三陣。
脇目もふらずに向かってくる姿は黒い濁流のよう。
「ミヤビとアンで迎撃を。ツツミは残ってわたしとカノンを守って」
帯革内より飛び出した、白銀のスコップ、漆黒の草刈り鎌、金づち。
ピカっと光って本来の姿となる。
白銀の大剣・勇者のつるぎミヤビと漆黒の大鎌・魔王のつるぎアンが、すぐさま戦場へと向かう。
蛇腹の破砕槌・大地のつるぎツツミが、わたしのかたわらに浮かび警護についた。
◇
敵勢へと並んで飛びながら向かっていたミヤビとアン。
「さて、すべてを斬り伏せるのは可能ですが、いささか数が多いですわ」
「……撃ちもらしが城に辿りついてもツツミがいる。とはいえ、尻ぬぐいを末妹にさせるのは、姉としてはいかがなものか? 沽券にかかわる?」
「ですわよねえ。かといって白き焔で殲滅するわけにもいきませんし」
「……たちまち地下空間が地獄の窯と化す。敵味方ともに全滅必至、そして母激怒」
「うっ、それは論外ですわ。とはいえ、チマチマなんてやっていられませんし。まぁ、いい機会ですので、ちょっと新技を試してみましょうか」
「新技?」
「ほら、南海に行ったときにカミナリの直撃を喰らったでしょう。あのときに、ちょっと、ね。少し準備に時間がかかるので、アンには連中の足止めをお願いしますわ」
「……がってん」
すぐさま先行した漆黒の大鎌。
巨大な首刈りの刃をふり回しながら敵勢へと正面から突っ込む。
とたんに細切れにされたクロヅカたちのカラダの部位が、盛大に散らばる。
だが面で押しよせる敵勢に対して、個の武ではろくに流れをふせぐことができない。
そこでアンは中空へと舞い上がり、我が身を激しく回転させて竜巻を起こす。
これに巻き込まれたが最期、内部にて乱舞する風刃にて切り刻まれる。
意思を持つ竜巻が戦場を席捲。クロヅカたちを撃破していく。
しかしもともと地に伏して生きるクロヅカたちには三対もの強靭な足がある。こと大地に踏ん張ることにかけては、他の生物よりもはるかに優れている。そのせいでおもいのほかに、竜巻に巻き上げられる個体数が少ない。
即座に散開しては暴風域をくぐり抜けた個体たち。すぐさま新たな集団を形成しては進軍を再開。
これにはアンの方があわてた。
が、そんな集団の鼻先に立ちふさがったのは、青白い聖光をまとう白銀の大剣。
精緻な模様が浮かぶ剣身。その表面に走っていたのは数多の小さなイナヅマ。
ひとつひとつは小さい。けれどもそれらが、ぶつかり合い、からみ合うほどに、大きくなっていき、じきに雷のイバラのようになってミヤビの全身を覆う。
「おまたせしましたわ」
勇者のつるぎから発せられたのは、目もくらむような白き閃光。
解き放たれたのは膨大な数のイカヅチ。竜と呼ぶには線が細く、かといってヘビというにはあまりにも凶悪がすぎる。
それらが一斉に地上にいる敵勢へと降り注ぐ。
白い雷がクロヅカたちの身を貫いては、体内を蹂躙し、またたく間に命の糸を焼き切ってゆく。
運良く直撃をまぬがれた者もいたが、すぐさま仲間たちのあとを追うことになる。
おそるべきは白き雷。
なんと、途中で軌道を変えては逃れたクロヅカへと襲いかかったのである。
雷光に追尾されては逃れようもなく、範囲内に居たすべてが沈黙するまで、さほどの時間はかからなかった。
しかし、それをなした当のミヤビは……。
「ふむふむ。弱ならばある程度の細かい操作も可能のようですわね。では、次はもう少し出力をあげてみましょうか」
◇
白き雷を帯びた黒い竜巻。
ミヤビとアンの合体技がクロヅカの第三陣を一蹴。
その戦いぶりを眺めていた愛妹カノンはあんぐり。はじめて目にする天剣(アマノツルギ)たちのすさまじい戦いぶり。いろいろと衝撃だったらしく、美幼女はずっと口が開きっぱなしである。その顔もまたかわゆい。
隣にいるわたしは「いつのまにあんな技を」とちょっとあきれ顔。
そして護衛役であるツツミは、ときおりこちらに飛ばされてくるクロヅカをペチペチ叩き落とすのに忙しい。
クロヅカとロクエバチの生存競争。
東南北の三方面で展開されていた戦いの中で、最初に終わったのは東方面にて孤軍奮闘、というか無双していた女王ロクエさんのところ。
続いてミヤビとアンが担当していた北方面も終了。
ともに敵は全滅である。
そして一番最初に戦端が開かれた南方面でも、すでに掃討戦へと移行し始めていた。
かくしてクロヅカたちの侵攻作戦は失敗に終わり、ロクエバチたちの勝利にて戦いは終結する。
しかしこれですべてが終わったわけではない。
なぜなら敵勢の中にクロヅカたちの女王の姿がどこにもなかったのだから。
◇
おもいがけず戦いの場に居合わせることになった、わたしとカノン。
勝ったとはいえ、いろいろと後片付けがたいへんそうなので、「そろそろお暇を」と腰をあげた。
別れ際、女王のロクエさんから「来年のハチミツは期待しててね」みたいなことをいわれた。
……そういえば、アリのなかにはお尻のところに蜜を貯め込んでいるのもいたっけか。
エサもたくさん手に入ったことだし、この分ではロクエバチの地下大帝国はますますの隆盛を誇ることであろう。
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