その彼氏、俺でよくないですか?

竹野こきのこ

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第16話 作戦と計画

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 その日作戦を立てる為、千佳に呼ばれバイト先のちかくにあるカフェに来ていた。

「あれ? 清水さんは?」
「ちょっとね……」
「これ無くなったのか?」
「ちょっと後出来てもらう事にしたの」

 千佳は、わざと時間をずらした様子だった。そういう風にしたという事は、俺に話があるのだろう。

「3人で話す前に、優と話しておこうと思って」
「まぁ、いきなりの話だからなぁ……」
「優はあの子の事どう思う?」
「どうって……あんまり良くは思ってはないけど……」

 俺はそう言うと、とりあえずメニューを広げる。彼女は覗き込む様に顔を寄せ小声で言った。

「あたしは、危ない子だと思うんだよね」
「普通にヤバい奴だろ……」

 千佳は清水さんが誘惑して来た事を知らない。というか俺には言えなかった。だからと言うわけではないけど、彼女より警戒しているとは思う。

「一つだけ約束して、お互いまずいと思ったら何か合図しよう」

 急に話をまとめようとする千佳に慌てて頷く。その理由はすぐに分かった。

「ちょっと遅かったかな?」

 背後から声が聞こえ、振り向くと清水さんが立っていた。彼女は自然に、俺の隣に引っ付く様にすわるとメニューを見始める。

「あのさぁ……なんで優の隣に座るわけ?」
「どちらかには座るわけだし、別によくないかな?」

 昨日ほど、感情は出ていない様子で、どちらかと言うとファミレスで会った時に近い雰囲気だった。

「まぁ、別にいいけど……」

 千佳と清水さんの空気がピリ付いているのが分かる。俺は真っ直ぐに千佳だけをみる様に意識した。

「色々考えたんだけどさ、あんたは現場に居たのよね? 何もしなかったの?」

 少し言い過ぎじゃないかと思う所もあるが、どう見ても小柄な清水さんが何か出来るようには見えない。

「由紀が私を突き飛ばしたの。だから……刺されて……何か出来ると思う?」

 清水さんは唇を噛んで涙目になる。俺はそれを見て彼女は実は見た目通りか弱いんじゃないかと思い始めた。

 肩の近くに頭を寄せる。
 撫でるべきなのか?
 可愛らしい女の子が涙目になり、甘い香りと共に少し高くなった体温を感じる。頭に手を伸ばすと、すねに激痛が走った。

「ぐっ……」

 前を見ると千佳が俺を見ている。これは……サインなのか?

 そう思っていると清水さんは上目遣いで俺を見つめていた。

 潤んだ目、小さな鼻にプルプルした唇。
 色白で小顔の彼女はかわいい……。
 だけどこの状況でかわいいのはおかしい。
 千佳の蹴りのおかげで冷静に彼女を見る。

「ま、まあ。浅井さんは助けたから刺されたって事でいいのかな?」

 彼女はコクリと頷いた。

「それで。犯人が捕まったのはすぐ後?」
「周りの人が捕まえてくれて……」

 ショックを受けたのか、そういう風に見せているのかはわからない。今までの行いのせいで正確に読み取るのが難しかった。

「なんであんたは元カレが黒幕だと思ったの?」

 千佳の尋問は続く。同性のせいか淡々と質問を投げかけてくれるのは助かる。

「アイツから連絡が……来ていたの」
「連絡? 寄りを戻そうとか?」

 清水さんは首を振る。

「俺の顔に泥を塗ってくれたな……とか、どうなっても知らないとか……」
「そのメールがあれば警察に言えたんじゃない?」

「電話なの……事情聴取で話しても犯人は自供しているからって言われて……」
「まぁ、別で動いている可能性もありそうね」

 そう言うと、清水さんは俯いて黙ってしまった。

「それで……そいつと会う予定があるんでしょ?」
「なんでそれを?」
「だから優を連れて行こうとした。違う?」

 俺は頷いた清水さんの思惑よりも、千佳の推理力の方が気になる。こいつ何者なんだ?

「優は喧嘩とかした事ある?」
「バスケ部の時に修平とつかみ合いになった事はあるけど……ボコボコだったぜ?」

「修平くんって彼を?」
「いや。俺が……」
「あんたがなのね」
「体格差的に奴に勝てるわけないだろ?」

 嘘は言ってない。部活に対する熱量の違いで掴みかかって来た修平に直ぐに投げられ、馬乗りで殴られた事はある。

「こんなの連れて行ってどうする気なのよ?」
「こんなのって言うなって……」

 余計に泣きそうな清水さんに、千佳は見た目通りヤンキーなのか揉め事の経験値の違いを感じる。

「当日あんた一人で会いに行くのはどう?」
「そりゃ無茶だろ?」

 いくら相手がひ弱そうでも彼女なら強気に出るというのは電話の内容から分かる。

「あたしと優は隠れて付いて行く」

 千佳の言葉に、俺は彼女の足を軽く2回蹴る。お人好し発揮してヤバいと思ったからだ。

 だけど、彼女はニッコリ笑う。

「あたしに任せなさいって!」
「やっぱり、ヤンキーだから喧嘩とか強いのか?」
「ちょっと、あんたそんな風に思ってたの?」
「だって……蹴られたし……」

 あの時の千佳の蹴りは重く、翌日まで引きずったのを思い出していた。

「ヤンキーじゃない。護身術よ、ご、し、ん、じゅ、つ!」
「身を守るためのなんとかって奴か……」
「そ! だから逃げるくらいは出来ると思う」

 まぁ、そういう事にしておこう。
 なにかしらの勝算が有るのは間違い無さそうだった。

「どう? 元々の予定よりはマシだと思うけど」
「仕方ないよね」

 清水さんの俺を見る目は頼るから心配に変わっている様に感じる。

「俺は千佳も心配だけどな……」
「ありがと!」

 千佳はそう言って笑う。

「何か武器になりそうな物持って行った方がいいかな?」
「そんな事したら、あたしらが捕まっちゃうでしょ?」
「ま、まぁ」

 手ぶらで行くというのも怖い気がするけど、逆に言えば相手が武器を出せば目的は達成する。

「タイミングみて録音や警察を呼ぶ! あたしらがするのはそこまで!」

 明確か線引きに、やや不服そうな清水さんではあった。それでも、彼女も何となく危険は感じているのだろう。

 ただ、ナイフで刺す様な仲間が居る可能性のある奴に、ちょっと浅はかすぎないかと俺は気になっていた。
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