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本編
第12話
しおりを挟むヤバい。
嫌な予感がすると思った次の瞬間には、既にことは起きていた。
視界がグラりと歪み、目が廻る。
「ちゃんと虎珀に掴まっとかな、透ちゃんバラバラなってまうで」
ゲラゲラと笑いながら虎目がそんなことを言うが、酔いが回って今はそれどころではない。
虎珀の着物の袖をギュッと掴み目を瞑ると、それに気づいた虎珀が俺を優しく抱きしめる。
「大丈夫やで、すぐ終わるから。
ちょっとの間だけわいにもたれとき。」
背中をポンポンと丁度いいテンポでさすられ、酔いが少しだけマシになる。
虎珀の胸に頭をもたれさせて浅く息を吸うと、着物の端で、軽くだが汗を拭き取ってくれた。
「ちょー、なに自分らだけイチャイチャしてるん。
わいだって透ちゃんにしたいわそんなん。」
「しゃーないやろ、お前以外はわいに触れとかな移動できひんねんから。」
「ちぇ、まぁええわ。
着いたら思う存分甘々のドロッドロにしたるからな。」
「ほんまめんどくさいな…あ、透。
着いたわ、目開けてみ。」
「…和室?」
いつの間に着いたのか、気がつくと先程の目が廻る感覚は消えている。
虎珀にもたれかかったまま、うっすらと横目で辺りを見回す。
だが、見えたのはどの家にもありそうな10畳ほどしかない和室で、目に付くものといえば床の間にある掛け軸と生けられた桔梗くらいだ。
障子の外からは鳥の鳴き声と鹿威しの鳴る音が聞こえ、落ち着いた雰囲気が部屋に漂う。
「あ"ー、やっと帰ってきたわ。
ほんま疲れたな。
ていうかこの着物ちょっと丈が短なった気がするんやけど」
「久々に外出たらもうあかんのぉ。
わいらも他の子らよりは歳とってるから、なんとも言えんわ…
毎日毎日ぐうたらしとるから太ったんちゃう?」
状況が読めない俺をおいて、2人は着ていた着物を脱ぎ始める。
自分が女だったらイチコロなんだろうな~、なんて考えながら手際良く別の着物に着替える2人を見ていると、こちらをチラリと見た虎目と目が合ってしまった。
「どうしたん透ちゃん、そんなに見られたら穴空いてまいそうやわ。
あ、透ちゃんに服用意したらな。
いつまでもそんなん見せられとったら嫉妬してまうで」
俺の着ていたバスローブを見た虎目は、そう言って手をパンっと叩く。
次の瞬間、ぬいぐるみのような小さな白い虎が数体、襖を開けて入ってきた。
「か、かわいぃ…」
目の前まで着てお辞儀をした一体の頭を撫でると、ギャプッと鳴いて頬を擦り寄せてくる。
それを見たほかの数体も、自分も撫でてくれというように俺の周りにわらわらと集まってきた。
「何してんねんお前ら、はよ着替えさせや!
透ちゃんも、そいつらの頭撫でんねやったらわいのん撫でて!」
「しゃあないやろ、わいらの意思と共有されてんねんから。
ほら、おまえ達もはよ着替えさせたり」
撫でられて満足したのか、小虎達は持ってきた着物の準備を始める。
着物かぁ…。
着るのはお母さんとお父さんと3人で初詣に行った以来だな…。
懐かしく思いながらどこか寂しさを感じていると、顎がクイッと持ち上げられる。
上をむくと、虎珀と虎目が心配そうにこちらを見つめていた。
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