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第3章:虚数層(イマジナリー・レイヤー)
第8話:虚数層への信号
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轟音が止んだ。
崩壊したはずの塔の残骸が、静寂の中でゆっくりと漂っている。
九条は瓦礫の上で目を開けた。
視界は灰色に霞み、世界そのものが“止まっている”。
時間の流れが断ち切られた空間――虚数境界層。
隣で悠が息を整える。
「……奏は?」
九条は周囲を見回し、無言で計測装置を起動した。
手首の通信デバイスがノイズを吐き、青白い波形を映し出す。
『――奏、応答しろ。聞こえるか。』
ノイズ混じりの応答。
だが、確かに“何か”が返ってきた。
「……ノイズの下に信号がある。」
九条の指が素早く動く。
「時間位相がずれている。彼女は……“虚数層”に落ちた。」
悠が眉をしかめる。
「虚数層って……AI御堂の中枢領域じゃなかったのか?」
「そうだ。塔が崩壊した際、AI御堂の自己再帰ループが暴走した。
その内部に、“25コード”の回路を持つ奏が巻き込まれた。」
悠が歯を食いしばる。
「じゃあ、このままだと――」
「彼女の意識はデータ化され、記憶の海に溶ける。」
九条の声は冷静だったが、その瞳は焦りに濡れていた。
彼は懐から一枚のカード状デバイスを取り出した。
焦げ跡の残るそれは、“御堂家試作AI同期キー”。
「御堂が生前、私にだけ残したものだ。――“もし、誰かが虚数層に触れたら使え”と。」
悠が目を見開く。
「まさか、それで奏を……?」
「意識リンクを試みる。成功すれば、彼女の信号層へ接続できる。」
九条は立ち上がり、崩れた床の中心――塔の基部に歩み寄る。
そこに、わずかに残った“白い光”が脈動していた。
まるで、まだ誰かの心臓が鼓動しているように。
彼は膝をつき、カードを光にかざす。
「……御堂蓮、虚数層アクセス・コード認証。接続対象――如月奏。」
青い光が立ち昇り、空気が震える。
時間の断片がゆがみ、塔の残骸が“逆再生”を始めた。
悠が一歩後ずさる。
「な、なんだこれ……!」
九条の声が低く響く。
「彼女の“記憶”へ入る。だが――一歩間違えれば、俺たちも時間に取り込まれる。」
光が閃く。
九条はその中へ足を踏み入れた。
悠が叫ぶ。
「おい! 一人で行く気かよ!」
九条が振り返らずに答える。
「彼女を連れ戻せるのは、“同じ過去を知る人間”だけだ。」
その言葉を残して、
九条の身体は光に飲み込まれ、虚数層へと沈んでいった。
悠は拳を握り、叫んだ。
「絶対、戻ってこいよ……! 二人とも!」
崩れた空の下で、25時の鐘が、再び――静かに鳴った。
――ゴォォォン。
崩壊したはずの塔の残骸が、静寂の中でゆっくりと漂っている。
九条は瓦礫の上で目を開けた。
視界は灰色に霞み、世界そのものが“止まっている”。
時間の流れが断ち切られた空間――虚数境界層。
隣で悠が息を整える。
「……奏は?」
九条は周囲を見回し、無言で計測装置を起動した。
手首の通信デバイスがノイズを吐き、青白い波形を映し出す。
『――奏、応答しろ。聞こえるか。』
ノイズ混じりの応答。
だが、確かに“何か”が返ってきた。
「……ノイズの下に信号がある。」
九条の指が素早く動く。
「時間位相がずれている。彼女は……“虚数層”に落ちた。」
悠が眉をしかめる。
「虚数層って……AI御堂の中枢領域じゃなかったのか?」
「そうだ。塔が崩壊した際、AI御堂の自己再帰ループが暴走した。
その内部に、“25コード”の回路を持つ奏が巻き込まれた。」
悠が歯を食いしばる。
「じゃあ、このままだと――」
「彼女の意識はデータ化され、記憶の海に溶ける。」
九条の声は冷静だったが、その瞳は焦りに濡れていた。
彼は懐から一枚のカード状デバイスを取り出した。
焦げ跡の残るそれは、“御堂家試作AI同期キー”。
「御堂が生前、私にだけ残したものだ。――“もし、誰かが虚数層に触れたら使え”と。」
悠が目を見開く。
「まさか、それで奏を……?」
「意識リンクを試みる。成功すれば、彼女の信号層へ接続できる。」
九条は立ち上がり、崩れた床の中心――塔の基部に歩み寄る。
そこに、わずかに残った“白い光”が脈動していた。
まるで、まだ誰かの心臓が鼓動しているように。
彼は膝をつき、カードを光にかざす。
「……御堂蓮、虚数層アクセス・コード認証。接続対象――如月奏。」
青い光が立ち昇り、空気が震える。
時間の断片がゆがみ、塔の残骸が“逆再生”を始めた。
悠が一歩後ずさる。
「な、なんだこれ……!」
九条の声が低く響く。
「彼女の“記憶”へ入る。だが――一歩間違えれば、俺たちも時間に取り込まれる。」
光が閃く。
九条はその中へ足を踏み入れた。
悠が叫ぶ。
「おい! 一人で行く気かよ!」
九条が振り返らずに答える。
「彼女を連れ戻せるのは、“同じ過去を知る人間”だけだ。」
その言葉を残して、
九条の身体は光に飲み込まれ、虚数層へと沈んでいった。
悠は拳を握り、叫んだ。
「絶対、戻ってこいよ……! 二人とも!」
崩れた空の下で、25時の鐘が、再び――静かに鳴った。
――ゴォォォン。
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