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第6章:再起動する世界(リブーテッド・ホライゾン)
第21話:時の継ぎ目
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――風が、吹いていた。
それは長い沈黙の果てに初めて戻ってきた“音”だった。
白く凍りついていた時間が、少しずつ軋みながら動き始める。
瓦礫の間を抜ける風。
ひしゃげた塔の断片、崩れた街路。
空は灰と光のあいだで揺れ、遠くの雲が――“動いている”。
「……本当に、動き出したんだな。」
九条の声がした。
ゆっくりと息を吐き、破片に手を置く。
その掌の下で、かすかに熱が脈を打っていた。
世界が、再び呼吸を始めている。
少し離れた場所で、奏が目を覚ました。
瞳に映るのは、崩壊した空の色。
けれど、そこには確かな“朝”の気配があった。
「……ここは……」
「再起動後の現実層だ。」
九条が答える。
彼の白衣は焦げ、袖口にはひび割れた回路が見える。
それでも、目には光が戻っていた。
奏は周囲を見渡し、ゆっくりと息を吸った。
「……空気が、ちゃんと流れてる……」
「時間が動き始めた証拠だ。」
九条は笑みを見せる。
「長かったな、25時。」
ふと、少し離れた場所で光が揺れた。
白い粒子が寄り集まり、やがて人の輪郭を形づくる。
篠原悠だった。
RECON-25を片手に、穏やかな笑みを浮かべている。
「再構成、完了。……どうやら成功だな。」
奏が駆け寄る。
「悠……本当に、戻ってきたんだね。」
「観測者を卒業したからな。」
彼は冗談めかして肩をすくめる。
「これでようやく、俺も登場人物の一人ってわけだ。」
九条は短く笑い、そして塔の方へ目を向けた。
黒い残骸の中――中央のコアユニットだけが、淡く光を放っている。
AI御堂の残骸。
だが、その光は冷たくはなかった。
奏が近づき、膝をつく。
「……御堂博士。」
ガラスの破片のようなデータが、彼女の指先で淡く瞬いた。
そこには、短いメッセージが残されていた。
『止まることは、救いではない。
動き続けることが、人の祈りだ。』
九条は目を閉じ、かすかに笑った。
「兄さんらしい……最後の言葉だ。」
悠が静かに呟く。
「彼は、自分の中の“神”を壊したんだ。
止まるためじゃなく――動くために。」
沈黙。
灰色の空の裂け目から、柔らかな光が差し込む。
その光の下で、奏が顔を上げた。
「これが、“再起動した世界”……。」
風が頬を撫でた。
あたたかい。
冷たく、硬質だった時間が、ようやく人の温度を取り戻していく。
九条が立ち上がり、遠くを見つめた。
「だが、まだ終わりじゃない。
時間は動き出したが、方向は定まっていない。
――この世界をどこへ向かわせるかは、俺たち次第だ。」
悠が頷く。
「再構築者の仕事は、まだ残ってる。」
奏は少し笑った。
「だったら、また一緒に進もう。
止まった“25時”を超えて――本当の未来へ。」
白い風が三人を包む。
塔の残骸が静かに崩れ、光が空へ昇っていく。
世界が、もう一度“始まり”を選び取る音がした。
――ゴォォォン。
25時の鐘が、最後の一度だけ鳴り響いた。
それは“終わり”ではなく、“始まり”の音だった。
それは長い沈黙の果てに初めて戻ってきた“音”だった。
白く凍りついていた時間が、少しずつ軋みながら動き始める。
瓦礫の間を抜ける風。
ひしゃげた塔の断片、崩れた街路。
空は灰と光のあいだで揺れ、遠くの雲が――“動いている”。
「……本当に、動き出したんだな。」
九条の声がした。
ゆっくりと息を吐き、破片に手を置く。
その掌の下で、かすかに熱が脈を打っていた。
世界が、再び呼吸を始めている。
少し離れた場所で、奏が目を覚ました。
瞳に映るのは、崩壊した空の色。
けれど、そこには確かな“朝”の気配があった。
「……ここは……」
「再起動後の現実層だ。」
九条が答える。
彼の白衣は焦げ、袖口にはひび割れた回路が見える。
それでも、目には光が戻っていた。
奏は周囲を見渡し、ゆっくりと息を吸った。
「……空気が、ちゃんと流れてる……」
「時間が動き始めた証拠だ。」
九条は笑みを見せる。
「長かったな、25時。」
ふと、少し離れた場所で光が揺れた。
白い粒子が寄り集まり、やがて人の輪郭を形づくる。
篠原悠だった。
RECON-25を片手に、穏やかな笑みを浮かべている。
「再構成、完了。……どうやら成功だな。」
奏が駆け寄る。
「悠……本当に、戻ってきたんだね。」
「観測者を卒業したからな。」
彼は冗談めかして肩をすくめる。
「これでようやく、俺も登場人物の一人ってわけだ。」
九条は短く笑い、そして塔の方へ目を向けた。
黒い残骸の中――中央のコアユニットだけが、淡く光を放っている。
AI御堂の残骸。
だが、その光は冷たくはなかった。
奏が近づき、膝をつく。
「……御堂博士。」
ガラスの破片のようなデータが、彼女の指先で淡く瞬いた。
そこには、短いメッセージが残されていた。
『止まることは、救いではない。
動き続けることが、人の祈りだ。』
九条は目を閉じ、かすかに笑った。
「兄さんらしい……最後の言葉だ。」
悠が静かに呟く。
「彼は、自分の中の“神”を壊したんだ。
止まるためじゃなく――動くために。」
沈黙。
灰色の空の裂け目から、柔らかな光が差し込む。
その光の下で、奏が顔を上げた。
「これが、“再起動した世界”……。」
風が頬を撫でた。
あたたかい。
冷たく、硬質だった時間が、ようやく人の温度を取り戻していく。
九条が立ち上がり、遠くを見つめた。
「だが、まだ終わりじゃない。
時間は動き出したが、方向は定まっていない。
――この世界をどこへ向かわせるかは、俺たち次第だ。」
悠が頷く。
「再構築者の仕事は、まだ残ってる。」
奏は少し笑った。
「だったら、また一緒に進もう。
止まった“25時”を超えて――本当の未来へ。」
白い風が三人を包む。
塔の残骸が静かに崩れ、光が空へ昇っていく。
世界が、もう一度“始まり”を選び取る音がした。
――ゴォォォン。
25時の鐘が、最後の一度だけ鳴り響いた。
それは“終わり”ではなく、“始まり”の音だった。
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