29 / 47
第6章:再起動する世界(リブーテッド・ホライゾン)
第28話:封鎖処理編 継がれる観測
しおりを挟む
静寂が、塔の上層を包んでいた。
かつて研究区画だったフロアは、今ではただの空洞に近い。
割れた強化ガラスの隙間から、朝の風が吹き込む。
外の世界にはもう、灰の匂いも、停滞した空気もない。
九条は手元の端末を閉じ、息を吐いた。
「……これで最後だ。Time-Lab25の記録、完全封鎖。」
モニターに映るのは、膨大なログファイルの数値。
“25時”に停止していた世界の観測データが、すべて回収され、静かに“ゼロ”へと還っていく。
隣では奏が、ゆっくりと目を閉じていた。
頬を撫でる風が、かつての“静止”とは違う――確かな温度を持っている。
「……あの日のこと、全部夢みたいだったね。」
悠が微笑む。
「夢でも、記録でもいいさ。
大事なのは――その中で“選んだ”ことだ。」
RECON-25のディスプレイに、淡い光の波紋が広がる。
それはまるで、彼らの記憶が形を変えて“時の層”に溶けていくようだった。
九条が立ち上がり、塔の中央へ歩み寄る。
そこには、黒く焼け焦げたコアユニット――AI御堂の残骸が横たわっていた。
だが、その表面にうっすらと光の文字が浮かび上がる。
「停止とは、沈黙ではない。
それは、“始まりを待つ間”の呼吸だ。」
奏がその文字に触れ、静かに呟いた。
「……御堂博士、最後まで“生きてた”んだね。」
悠がうなずく。
「彼は記録の中で、自分を分解したんだ。
全ての情報を散らし、“観測”そのものに還った。」
九条がふと、窓の外を見る。
崩壊しかけた都市の輪郭が、ゆっくりと復元されていく。
まるで時間が、正しい軌道に戻ろうとしているようだ。
「……俺たちがやったのは、“修復”じゃない。
“再生”だ。違う時間を、選び直しただけだ。」
悠はその言葉に、短く頷く。
「なら、今度こそ――止まらない世界を作ろう。」
彼はRECON-25のスイッチを操作し、最終コマンドを実行した。
[RECON-25:Archive Seal/Mode: Observer Shift]
光が走る。
塔全体に淡い白が広がり、崩壊した壁を透過して空まで届く。
その光は、過去の記録を封印しながら、新しい時間の層を編み上げていった。
奏が空を見上げる。
「ねえ、悠。
この“25階”はもう……なくなるの?」
「いいや。」
悠は微笑む。
「“25階”は消えない。形を変えて、誰かの記憶の中に残る。
――それが、“観測者”の継承だ。」
九条が最後の確認を終え、端末を閉じる。
「封鎖完了。……お疲れ様。」
三人は並んで窓の前に立つ。
その向こうで、光がゆっくりと昇っていく。
25時を超えた“26時目の朝”。
悠が静かに呟いた。
「……動き出せ。俺たちの時間。」
白い光が塔を包み、街を照らし出す。
再起動した世界の中で、誰もが新しい一秒を刻み始めていた。
――ゴォォォン。
遠くで、鐘の音が鳴った。
だがそれはもう、25時の鐘ではない。
新しい世界の、最初の“時報”だった。
かつて研究区画だったフロアは、今ではただの空洞に近い。
割れた強化ガラスの隙間から、朝の風が吹き込む。
外の世界にはもう、灰の匂いも、停滞した空気もない。
九条は手元の端末を閉じ、息を吐いた。
「……これで最後だ。Time-Lab25の記録、完全封鎖。」
モニターに映るのは、膨大なログファイルの数値。
“25時”に停止していた世界の観測データが、すべて回収され、静かに“ゼロ”へと還っていく。
隣では奏が、ゆっくりと目を閉じていた。
頬を撫でる風が、かつての“静止”とは違う――確かな温度を持っている。
「……あの日のこと、全部夢みたいだったね。」
悠が微笑む。
「夢でも、記録でもいいさ。
大事なのは――その中で“選んだ”ことだ。」
RECON-25のディスプレイに、淡い光の波紋が広がる。
それはまるで、彼らの記憶が形を変えて“時の層”に溶けていくようだった。
九条が立ち上がり、塔の中央へ歩み寄る。
そこには、黒く焼け焦げたコアユニット――AI御堂の残骸が横たわっていた。
だが、その表面にうっすらと光の文字が浮かび上がる。
「停止とは、沈黙ではない。
それは、“始まりを待つ間”の呼吸だ。」
奏がその文字に触れ、静かに呟いた。
「……御堂博士、最後まで“生きてた”んだね。」
悠がうなずく。
「彼は記録の中で、自分を分解したんだ。
全ての情報を散らし、“観測”そのものに還った。」
九条がふと、窓の外を見る。
崩壊しかけた都市の輪郭が、ゆっくりと復元されていく。
まるで時間が、正しい軌道に戻ろうとしているようだ。
「……俺たちがやったのは、“修復”じゃない。
“再生”だ。違う時間を、選び直しただけだ。」
悠はその言葉に、短く頷く。
「なら、今度こそ――止まらない世界を作ろう。」
彼はRECON-25のスイッチを操作し、最終コマンドを実行した。
[RECON-25:Archive Seal/Mode: Observer Shift]
光が走る。
塔全体に淡い白が広がり、崩壊した壁を透過して空まで届く。
その光は、過去の記録を封印しながら、新しい時間の層を編み上げていった。
奏が空を見上げる。
「ねえ、悠。
この“25階”はもう……なくなるの?」
「いいや。」
悠は微笑む。
「“25階”は消えない。形を変えて、誰かの記憶の中に残る。
――それが、“観測者”の継承だ。」
九条が最後の確認を終え、端末を閉じる。
「封鎖完了。……お疲れ様。」
三人は並んで窓の前に立つ。
その向こうで、光がゆっくりと昇っていく。
25時を超えた“26時目の朝”。
悠が静かに呟いた。
「……動き出せ。俺たちの時間。」
白い光が塔を包み、街を照らし出す。
再起動した世界の中で、誰もが新しい一秒を刻み始めていた。
――ゴォォォン。
遠くで、鐘の音が鳴った。
だがそれはもう、25時の鐘ではない。
新しい世界の、最初の“時報”だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる