【R18】フォルテナよ幸せに

mokumoku

文字の大きさ
16 / 43

16

しおりを挟む
「刺繍作戦は大成功だったわ」
フォルテナは朝日に照らされて眩しさに目をパチリと開けた。



「おはようございます奥様、本日も庭に行かれませんか?」ハーネットが、部屋に入ってきたフォルテナを見るなりそう提案してきたけれど、今朝はなんだか庭師から花をもらいたい気分ではなかったので「……今日はやめておくわ」と断った。
ハーネットは何度もフォルテナを誘ってきたけれどフォルテナは頭を縦には振らなかった。
昨夜はクロードととても仲睦まじくできたような気がしたからだ。一番でなくともあんなに優しくしてもらえるのなら問題はない。庭師が本人の意志でメッセージカードを書いたにしても、クロードの指示だったとしても受け取っていいことは今は何もない。
(……仲良くなる方がいいわ。絶対)
過去にクロードがフォルテナと離縁しようと庭師に指示を送っていたとしても、本人から聞いたわけではないのだし……なかったことにしよう。とフォルテナは決めていた。
疑って嫌な思いをしてする結婚生活は上手くいかない。
旦那様が直接与えてくれるものを信じて私は幸せにやっていくのよ……フォルテナはそう心に決めた。

ハーネットは少し残念そうにすると諦めたのか「では私がいただいてきますね!」と明るく言い、部屋から出て行った。

「ありがとう」

ハーネットが受け取ればメッセージカードなども見つけ次第処分してくれるだろう。もしハーネットが気付かずついたままになっていたとしても、読まずに捨ててしまおう。

トントン……とノックの音がしたので立ち上がる。
「ハーネット?早いわね。もういただいたの?」
フォルテナはそう声を掛けながら扉を開けた。その先にいたのは大きな花束を抱えたクロードだった。
「……あ、旦那様。ハーネットは今いなくて……」もしかしたら自分の為に持ってきてくれた……?そんな思いを振り払うとクロードを部屋に案内した。
クロードは先を行くフォルテナの手をそっと掴んだので驚いたフォルテナはクロードを見た。
すると彼は床に跪いて花束を差し出しているではないか

「え?……わ、私に?」

クロードは頭を縦に振ると顔を真っ赤に染めた。
フォルテナはとても嬉しかった。
旦那様がまたお花をくれるなんて……
とても大きな花束でフォルテは両手でそれを抱えた。「ありがとうございます!」にっこり微笑むと花束を見た。中には小さな封筒が入っていて中のメッセージカードには
『大切に思っています』と書いてあった。

「……ええ!?……わ、私にこれを……!?」

フォルテナが顔を真っ赤にしてクロードを見上げると彼もまた顔を真っ赤ににして俯き小さく頷いた。
花束の中にはジプソフィラと黄色いガーベラ……フォルテナは勘違いでも幸せな気分になれたから良い、と「嬉しいです……ありがとうございます」とクロード以外に聞こえぬよう小さい声で言うと目を潤ませた。

クロードはそんなフォルテナをぼんやりした様子で眺めると彼女を包み込むように抱き寄せた。
「……え?……」
フォルテナは一瞬動揺したものの、クロードがそうしてくれるのなら受け入れるべきだと思い胸に頬を寄せる。
クロードはフォルテナにソファに座るように促すと手を握った。
フォルテナはドキドキと高鳴る胸の音を感じながらクロードを見上げる。二人は見つめ合った。
クロードはフォルテナの頬にそっと触れると唇を寄せてきたので目を瞑る。ドキドキと胸が高鳴る。
二人の唇が合わさってクロードが舌を隙間から差し込んできた。クロードの舌に触れるフォルテナの唇は滑らかでぷにゅぷにゅしている。
フォルテナもそれに応えて口を開けるとお互いの舌が触れ合って背すじに心地よいゾクゾクが駆け抜けていく……フォルテナが抱えたままだった花束はクロードがそっとテーブルの上に置いた。

ソファに押し倒されてフォルテナは舌を絡めるのに集中できるようになった。身を起こしているのが辛い位心地よかったのだ。
クロードも興奮しているからか荒い息を口の端から吐いている。
フォルテナはそれが嬉しいというか喜ばしく感じていた。

クロードが服の上から胸に手を寄せた。
フォルテナの腹部には硬くなった男性器が当たっている。「……ん……」フォルテナは営みを想像してしまい、思わず声を上げてしまった。……早く中に入って来てくれればいいのに……

するとクロードは腰を引き、それが当たらないように身体を離したので「……あ、ち、違います。嫌なわけじゃなくて……あの……なんだか営みを思い出して……変な心地に……」そうフォルテナが言った瞬間、クロードは身体をビクつかせて彼女から離れると俯いた。
「あ……す、すみません。嫌でしたか……?あの……」
「……」
クロードは胸ポケットから手帳を取り出してサラサラとペンを走らせると顔を真っ赤にしてフォルテナの前に突き出した。
「……え?」
フォルテナはそれを読んで変な声を上げてしまった。
その時トントンとノックの音がしてハーネットが入ってきた。「奥様……申し訳ありません。今日は庭師から花を……」そう言いながら入室してきた彼女はクロードとフォルテナが二人でソファに乗っているのに気付いたようで目を丸くしている。
フォルテナは慌てて身を起こすと
「そ、そう?……いいの。今日は旦那様がお花をくださったから……」フォルテナがちらりとクロードを見上げるとクロードはフォルテナを見ておらずハーネットを見ていた。

(……やっぱり旦那様の一番好いてる女性はハーネットのままなのかしら……)フォルテナは胸がキュッと痛むのを無視することができなくてそっと手で押さえた。


しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

婚約者の番

ありがとうございました。さようなら
恋愛
私の婚約者は、獅子の獣人だ。 大切にされる日々を過ごして、私はある日1番恐れていた事が起こってしまった。 「彼を譲ってくれない?」 とうとう彼の番が現れてしまった。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

処理中です...