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「刺繍作戦は大成功だったわ」
フォルテナは朝日に照らされて眩しさに目をパチリと開けた。
「おはようございます奥様、本日も庭に行かれませんか?」ハーネットが、部屋に入ってきたフォルテナを見るなりそう提案してきたけれど、今朝はなんだか庭師から花をもらいたい気分ではなかったので「……今日はやめておくわ」と断った。
ハーネットは何度もフォルテナを誘ってきたけれどフォルテナは頭を縦には振らなかった。
昨夜はクロードととても仲睦まじくできたような気がしたからだ。一番でなくともあんなに優しくしてもらえるのなら問題はない。庭師が本人の意志でメッセージカードを書いたにしても、クロードの指示だったとしても受け取っていいことは今は何もない。
(……仲良くなる方がいいわ。絶対)
過去にクロードがフォルテナと離縁しようと庭師に指示を送っていたとしても、本人から聞いたわけではないのだし……なかったことにしよう。とフォルテナは決めていた。
疑って嫌な思いをしてする結婚生活は上手くいかない。
旦那様が直接与えてくれるものを信じて私は幸せにやっていくのよ……フォルテナはそう心に決めた。
ハーネットは少し残念そうにすると諦めたのか「では私がいただいてきますね!」と明るく言い、部屋から出て行った。
「ありがとう」
ハーネットが受け取ればメッセージカードなども見つけ次第処分してくれるだろう。もしハーネットが気付かずついたままになっていたとしても、読まずに捨ててしまおう。
トントン……とノックの音がしたので立ち上がる。
「ハーネット?早いわね。もういただいたの?」
フォルテナはそう声を掛けながら扉を開けた。その先にいたのは大きな花束を抱えたクロードだった。
「……あ、旦那様。ハーネットは今いなくて……」もしかしたら自分の為に持ってきてくれた……?そんな思いを振り払うとクロードを部屋に案内した。
クロードは先を行くフォルテナの手をそっと掴んだので驚いたフォルテナはクロードを見た。
すると彼は床に跪いて花束を差し出しているではないか
「え?……わ、私に?」
クロードは頭を縦に振ると顔を真っ赤に染めた。
フォルテナはとても嬉しかった。
旦那様がまたお花をくれるなんて……
とても大きな花束でフォルテは両手でそれを抱えた。「ありがとうございます!」にっこり微笑むと花束を見た。中には小さな封筒が入っていて中のメッセージカードには
『大切に思っています』と書いてあった。
「……ええ!?……わ、私にこれを……!?」
フォルテナが顔を真っ赤にしてクロードを見上げると彼もまた顔を真っ赤ににして俯き小さく頷いた。
花束の中にはジプソフィラと黄色いガーベラ……フォルテナは勘違いでも幸せな気分になれたから良い、と「嬉しいです……ありがとうございます」とクロード以外に聞こえぬよう小さい声で言うと目を潤ませた。
クロードはそんなフォルテナをぼんやりした様子で眺めると彼女を包み込むように抱き寄せた。
「……え?……」
フォルテナは一瞬動揺したものの、クロードがそうしてくれるのなら受け入れるべきだと思い胸に頬を寄せる。
クロードはフォルテナにソファに座るように促すと手を握った。
フォルテナはドキドキと高鳴る胸の音を感じながらクロードを見上げる。二人は見つめ合った。
クロードはフォルテナの頬にそっと触れると唇を寄せてきたので目を瞑る。ドキドキと胸が高鳴る。
二人の唇が合わさってクロードが舌を隙間から差し込んできた。クロードの舌に触れるフォルテナの唇は滑らかでぷにゅぷにゅしている。
フォルテナもそれに応えて口を開けるとお互いの舌が触れ合って背すじに心地よいゾクゾクが駆け抜けていく……フォルテナが抱えたままだった花束はクロードがそっとテーブルの上に置いた。
ソファに押し倒されてフォルテナは舌を絡めるのに集中できるようになった。身を起こしているのが辛い位心地よかったのだ。
クロードも興奮しているからか荒い息を口の端から吐いている。
フォルテナはそれが嬉しいというか喜ばしく感じていた。
クロードが服の上から胸に手を寄せた。
フォルテナの腹部には硬くなった男性器が当たっている。「……ん……」フォルテナは営みを想像してしまい、思わず声を上げてしまった。……早く中に入って来てくれればいいのに……
するとクロードは腰を引き、それが当たらないように身体を離したので「……あ、ち、違います。嫌なわけじゃなくて……あの……なんだか営みを思い出して……変な心地に……」そうフォルテナが言った瞬間、クロードは身体をビクつかせて彼女から離れると俯いた。
「あ……す、すみません。嫌でしたか……?あの……」
「……」
クロードは胸ポケットから手帳を取り出してサラサラとペンを走らせると顔を真っ赤にしてフォルテナの前に突き出した。
「……え?」
フォルテナはそれを読んで変な声を上げてしまった。
その時トントンとノックの音がしてハーネットが入ってきた。「奥様……申し訳ありません。今日は庭師から花を……」そう言いながら入室してきた彼女はクロードとフォルテナが二人でソファに乗っているのに気付いたようで目を丸くしている。
フォルテナは慌てて身を起こすと
「そ、そう?……いいの。今日は旦那様がお花をくださったから……」フォルテナがちらりとクロードを見上げるとクロードはフォルテナを見ておらずハーネットを見ていた。
(……やっぱり旦那様の一番好いてる女性はハーネットのままなのかしら……)フォルテナは胸がキュッと痛むのを無視することができなくてそっと手で押さえた。
フォルテナは朝日に照らされて眩しさに目をパチリと開けた。
「おはようございます奥様、本日も庭に行かれませんか?」ハーネットが、部屋に入ってきたフォルテナを見るなりそう提案してきたけれど、今朝はなんだか庭師から花をもらいたい気分ではなかったので「……今日はやめておくわ」と断った。
ハーネットは何度もフォルテナを誘ってきたけれどフォルテナは頭を縦には振らなかった。
昨夜はクロードととても仲睦まじくできたような気がしたからだ。一番でなくともあんなに優しくしてもらえるのなら問題はない。庭師が本人の意志でメッセージカードを書いたにしても、クロードの指示だったとしても受け取っていいことは今は何もない。
(……仲良くなる方がいいわ。絶対)
過去にクロードがフォルテナと離縁しようと庭師に指示を送っていたとしても、本人から聞いたわけではないのだし……なかったことにしよう。とフォルテナは決めていた。
疑って嫌な思いをしてする結婚生活は上手くいかない。
旦那様が直接与えてくれるものを信じて私は幸せにやっていくのよ……フォルテナはそう心に決めた。
ハーネットは少し残念そうにすると諦めたのか「では私がいただいてきますね!」と明るく言い、部屋から出て行った。
「ありがとう」
ハーネットが受け取ればメッセージカードなども見つけ次第処分してくれるだろう。もしハーネットが気付かずついたままになっていたとしても、読まずに捨ててしまおう。
トントン……とノックの音がしたので立ち上がる。
「ハーネット?早いわね。もういただいたの?」
フォルテナはそう声を掛けながら扉を開けた。その先にいたのは大きな花束を抱えたクロードだった。
「……あ、旦那様。ハーネットは今いなくて……」もしかしたら自分の為に持ってきてくれた……?そんな思いを振り払うとクロードを部屋に案内した。
クロードは先を行くフォルテナの手をそっと掴んだので驚いたフォルテナはクロードを見た。
すると彼は床に跪いて花束を差し出しているではないか
「え?……わ、私に?」
クロードは頭を縦に振ると顔を真っ赤に染めた。
フォルテナはとても嬉しかった。
旦那様がまたお花をくれるなんて……
とても大きな花束でフォルテは両手でそれを抱えた。「ありがとうございます!」にっこり微笑むと花束を見た。中には小さな封筒が入っていて中のメッセージカードには
『大切に思っています』と書いてあった。
「……ええ!?……わ、私にこれを……!?」
フォルテナが顔を真っ赤にしてクロードを見上げると彼もまた顔を真っ赤ににして俯き小さく頷いた。
花束の中にはジプソフィラと黄色いガーベラ……フォルテナは勘違いでも幸せな気分になれたから良い、と「嬉しいです……ありがとうございます」とクロード以外に聞こえぬよう小さい声で言うと目を潤ませた。
クロードはそんなフォルテナをぼんやりした様子で眺めると彼女を包み込むように抱き寄せた。
「……え?……」
フォルテナは一瞬動揺したものの、クロードがそうしてくれるのなら受け入れるべきだと思い胸に頬を寄せる。
クロードはフォルテナにソファに座るように促すと手を握った。
フォルテナはドキドキと高鳴る胸の音を感じながらクロードを見上げる。二人は見つめ合った。
クロードはフォルテナの頬にそっと触れると唇を寄せてきたので目を瞑る。ドキドキと胸が高鳴る。
二人の唇が合わさってクロードが舌を隙間から差し込んできた。クロードの舌に触れるフォルテナの唇は滑らかでぷにゅぷにゅしている。
フォルテナもそれに応えて口を開けるとお互いの舌が触れ合って背すじに心地よいゾクゾクが駆け抜けていく……フォルテナが抱えたままだった花束はクロードがそっとテーブルの上に置いた。
ソファに押し倒されてフォルテナは舌を絡めるのに集中できるようになった。身を起こしているのが辛い位心地よかったのだ。
クロードも興奮しているからか荒い息を口の端から吐いている。
フォルテナはそれが嬉しいというか喜ばしく感じていた。
クロードが服の上から胸に手を寄せた。
フォルテナの腹部には硬くなった男性器が当たっている。「……ん……」フォルテナは営みを想像してしまい、思わず声を上げてしまった。……早く中に入って来てくれればいいのに……
するとクロードは腰を引き、それが当たらないように身体を離したので「……あ、ち、違います。嫌なわけじゃなくて……あの……なんだか営みを思い出して……変な心地に……」そうフォルテナが言った瞬間、クロードは身体をビクつかせて彼女から離れると俯いた。
「あ……す、すみません。嫌でしたか……?あの……」
「……」
クロードは胸ポケットから手帳を取り出してサラサラとペンを走らせると顔を真っ赤にしてフォルテナの前に突き出した。
「……え?」
フォルテナはそれを読んで変な声を上げてしまった。
その時トントンとノックの音がしてハーネットが入ってきた。「奥様……申し訳ありません。今日は庭師から花を……」そう言いながら入室してきた彼女はクロードとフォルテナが二人でソファに乗っているのに気付いたようで目を丸くしている。
フォルテナは慌てて身を起こすと
「そ、そう?……いいの。今日は旦那様がお花をくださったから……」フォルテナがちらりとクロードを見上げるとクロードはフォルテナを見ておらずハーネットを見ていた。
(……やっぱり旦那様の一番好いてる女性はハーネットのままなのかしら……)フォルテナは胸がキュッと痛むのを無視することができなくてそっと手で押さえた。
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