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しおりを挟む夜になり、クロードがフォルテナの中に侵入して口元を緩めていると
「だ……旦那様?私……明日、書庫に行きたいの……駄目ですか?」とフォルテナは掠れた声で言った。
クロードは慌てて口もとを引き締め、彼女が初めてしたお願い事に全力で頷くと我慢ができなくなって腰を激しく打ち付けた。か、かわいらしい。
本当に書庫だけでいいのだろうか?書庫にない本で読みたいものがあったら買いに行こうか……ふ、二人で……
な、なーんて……
そうするとフォルテナが大きく喘ぎ声を上げたのでクロードはできるだけ長持ちするように目をキツく瞑ったけれどその努力虚しく結局その直後彼女の腹部に精をぶちまけることになるのだ。
朝起きてクロードはニッコニコだった。
朝食を食べてからクロードはこの前万が一妻と急にお出かけしたりなんかする予定が入ったときのために……と購入していた一張羅を身につけると執務室に向いメイソンに『妻と書庫に行く』と報告をしたところーー「そうでございますか!本日の執務は私めにお任せを!」と嬉しそうに手を握ってくれた。『もしかすると』『今日一日は』『妻のために動くかも』クロードが次々とそう書くとメイソンはゆっくり頷いて「かしこまりました。旦那様!メイソンは馬車馬のように働きますゆえ!」と胸を叩いた。
ドキドキしながら廊下を歩いた。ガラスに写る自分を何度も確認して(変じゃない、変じゃない……)と言い聞かせた。
すると向こうから軽い足取りのフォルテナが歩いてきたのでクロードは駆け寄った。迎えに行こうと思っていたのに……
フォルテナはニコニコ笑いながら「書庫へ行く許可をくださってありがとうございます!」とクロードに声を掛けた。
(君が望むならなんでも)そう伝えたかったが声が出ない。胸ポケットに入れた手帳を取り出そうとしたが執務室に置いてきてしまったようだ。
クロードは慌ててフォルテナの手のひらに文字を書いたが「く……くすぐったのでやめてください。ふふふ!」と笑うばかりで全然伝わっていない……
クロードは困り果てて執務室まで走った。
「どうしましたか?旦那様」
メイソンが飛び込んできたクロードに目を丸くしている。クロードは机の上の手帳を指さすと「ああ……お忘れだったのですね」とメイソンは言った。
クロードが再び廊下に戻ると案の定フォルテナはそこにもういなかった。クロードは不安で不安で堪らなくなった。
別の使用人が彼女をエスコートしたのでは?
慌てて書庫に向かう。
扉を開けたクロードは使用人達が数名書庫にいる光景を見た。
(ま……まさか……使用人と仲良くしていたわけではあるまいな)醜い嫉妬が沸き上がる。
「どうなさいましたか?旦那様」使用人がクロードの不穏な空気を察し不安そうにしているのを見てクロードは(落ち着け……)と自分の心を静めるように努力した。
自分に自信がないだけで証拠もなく彼らを疑っては……
その時フォルテナは本棚の陰から飛び出してきて「旦那様!もしかして来てくださったのですか!?」とクロードに抱きついてきた。
クロードは喜びに目を見開くとフォルテナを抱き締め返した。
小さくて柔らかい。
「私、まだ本が選べてなくて……」とフォルテナはクロードを見上げた。なんてかわいらしいのだろう。クロードは『一緒に』と書いて手帳を見せた。フォルテナはそれに顔を寄せて真剣な眼差しで読む。目を伏せると彼女の陶器のような肌にまつ毛の陰ができた。クロードがそれをぼんやりと見ているとフォルテナがペンを指さしたので(使いたいのか?)とそれを渡す。
するとフォルテナは『本を一緒に選んでくれるんですか?ありがとうございます』とクロードの書いた文のとなりに書いてくれた。フォルテナの字はとても美しくてクロードは思わず見惚れてしまった。
「これも面白そう……」
フォルテナはそう言うと自分で本を抱えたのでクロードは慌ててそれを受け取ると抱えた。
「ありがとうございます」フォルテナがそうにっこりと笑うものだからクロードは嬉しくて堪らなかった。フォルテナの部屋まで本を運ぶと「ありがとうございます。すみませんでした……」そう彼女は申し訳なさそうにしたのでクロードは扉を一人で開けさせてしまったことやここまで来る時はエスコートができなかったことが悔やまれて何を伝えたらいいのかわからなくなった。
話せれば両手が塞がっていても何か気が効いたことを伝えたり……
できない。
できないかもしれない俺は
クロードは肩を落とすと少し考えて『また行きましょう』と手帳に書いた。クロードの今の気持ちはこれからもフォルテナとこうして二人で過ごす時間が欲しい。ただそれだけだったからだ。
「え?は、はい」
フォルテナは了承してくれたのでクロードはホッとした。
嫌な顔をされてしまったら……と不安だった。
書庫の扉はもう少し軽いものに変えようか……クロードはそんなことをぼんやりと考えていたら部屋に帰ろうとしているフォルテナの手を思わず引いてしまった。
まだ離れたくない。
そう思っていたが身体が動いてしまった。
「……あの……」フォルテナはクロードの振る舞いに驚いたのか少し動揺したような声を出した。こ、困ってる……
クロードは『庭に行きませんか?』と手帳に書いて見せた。
クロードが手を差し出すとフォルテナはそこに手を乗せた。
小さくて柔らかい……
クロードはバックンバックンになった。
硬くなった股間が痛くてクロードは少し猫背になる。
フォルテナが一生懸命足を進めているのに気付いたクロードは慌てて歩幅を小さくしてゆっくりと歩いた。
かわいらしくてかわいらしくて堪らない……
明るい日の光の下にいるフォルテナは光の女神のようだ。
彼女の美しく艷やかな金髪は日の光に当たるとキラキラ輝いている。更に陶器のような肌は透き通るようだ……
クロードはウッキウキだった。
こんなにかわいらしい女性と並んで歩くことなんてないと思っていた。
自分は二男だし、積極性もないし、話だってつまらないし……
クロードはいわゆるモテないタイプの男だと自分自身を評価していた。
しかし実はクロードは見た目がよかったので「無口なところも素敵」と密かに人気があったのだが……
積極性がないクロードと淑女である貴族のご令嬢は相容れない存在同士だったようだ。
クロードはここぞとばかりにフォルテナを見た。
彼女が歩く度にゆら……ゆら……とその美しい髪が揺れる。
幸せだな……とクロードは思った。
好いた女性とこうして昼間、自分の屋敷の廊下を歩き庭に行くのだ。こんなことはそうそうないに違いない。
クロードは庭へ下りる。
「お庭……素敵ですね」
フォルテナはそう呟いた。
(気に入ったのならこれからは毎日でもいいですよ)クロードは
手帳にそう書こうと胸元に手をやろうと顔を上げると庭師が作業をしているのが見えたのでフォルテナの腰を抱き寄せた。
妙な独占欲なのかフツフツと心の底から沸き上がるフォルテナ殿を他の男にあまり見せたくない欲……クロードはちっぽけな自分が恥ずかしい反面、この気持ちに蓋をすることができなかった。
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