【R18】フォルテナよ幸せに

mokumoku

文字の大きさ
43 / 43

フォルテナよ、幸せになったね

しおりを挟む
「クロード様!」
「フォルテナ殿!あ、危ないのでは!?淑女が走っては…!」

クロードは慌ててフォルテナに駆け寄る。

「ふふふ…ねえ?野原に行きませんか?」
フォルテナはそんなクロードに抱きつくと彼を見上げて微笑んだ。

「ん?いいぞ!……だが身体が冷えないか?もう肌寒いですよ」
クロードは自分が着ている上着を脱ぐとフォルテナに羽織らせた。「……クロード様が寒いのでは?」
「大丈夫だ。俺は寒くないので」
クロードはフォルテナの肩を抱くと庭へとエスコートする。

フォルテナの着る上着からはフォルテナが贈ったハンカチが胸ポケットから顔を覗かせている。
クロードはそれを貰った時からずっと肌身はなさず身に着けている。宝物だ。
以前は不気味に思えていた蜘蛛もフォルテナが懸命に刺繍したと思えばそんなことはない。

フォルテナはニコニコと幸せそうに笑うと「今はあまりお花が咲いていないかしら?」とクロードを見上げる。
「そうかもしれませんね」
クロードは口の端を上げるとそう言った。
彼は幸せだった。

二人が野原にたどり着くと「まだ葉は枯れていないようですね」とフォルテナが笑う。
クロードはどっかりと地面に胡座をかいて「ほら、ここに」とフォルテナを膝の上に座らせた。


フォルテナはゆっくり周りを見回して「ほら、あったわ」と四葉のクローバーをクロードに差し出した。
「見つけるとね。幸せなことがあるのです。私、今はすぐ見つけることができるの」
「はは、どうして?」クロードはそれを受け取ると質問を返した。フォルテナは恥ずかしそうに笑いーー「……幸せだもの。ずっと……」とクロードに寄りかかった。

クロードは嬉しそうに笑いながら「……俺も」と恥ずかしそうに頭を掻いた。

「これからもっともっと幸せになるのよ私たち……」
フォルテナはもう一つクローバーを摘むと愛おしそうにそれを眺めた。
「……ねえ?私が風邪をひいた時……」
「ん?ああ……フォルテナ殿が死んでしまうのではないかと……」クロードは当時を思い出し眉を下げた。
「私のこと……看てくれていたの?リリーが」
「……すまん」
クロードは思わず謝ってしまった。
あの頃はあまり仲睦まじくなかったのに……
フォルテナは驚いたような顔で振り返り「違います違います!嬉しかったから……」とクロードの胸にそっと手を置いた。
「う……ほ、本当に?」
フォルテナは嬉しそうに笑うクロードを見て、思わず笑みがこぼれてしまう。彼女は彼の笑顔が好きだ。

「愛している人が苦しんでいる時、正しい方法で救いの手を差し伸べることは……なかなか難しいものよね」
「……ん?そ、そうか?」
「難しいわ。人の道を外れたことをすることだって厭わないのかもしれない」クロードはフォルテナを見た。
……なんの話だろう。と

「メイソンは元気?」
「メイソン?ああ、元気だよ」
「いい執事だわ。あなたを助けてくれる。大切にしてあげて?」
「……ははは勿論、メイソンは死ぬまで俺の側にいてもらいたい」

クロードはフォルテナを後ろから抱き締めるとキスをした。
そしてフォルテナの細い指に先ほど貰った四葉のクローバーを結んだ。「ふふ……かわいらしい指輪」
フォルテナはそう言って笑うとクロードの指に四葉のクローバーを結びつけた。「……お揃いですね」
フォルテナがそうニッコリ笑うのを見て、クロードは鼻をフガフガさせて彼女にキスをした。
「……本当は君にはもっと素敵な指輪を……」
「……?素敵ですよ?見て?」
フォルテナはクロードの手の横に自分の手を並べるとそう言った。それぞれの薬指には四葉のクローバーが結ばれている。

「四葉は、普通は三つ葉の葉がストレスを感じると四つになるそうなんです」
「……?ストレスを?」なぜそのようなものが幸せの象徴なのか…?クロードは少しそう思う。ストレスなどない方が幸せではないか?
「みんな……苦労なくして幸せは掴めないのではないでしょうか?苦労して悲しんで努力して……人は幸せになるの」
フォルテナはクロードの手にそっと自分の手を重ね、四葉のクローバーを優しく撫でた。
「この指輪は資産価値はないかもしれませんが、私にとっては世界で一番価値のある指輪です」
フォルテナがクロードを見上げると二人は目が合った。
「……これは……」
「だってあなたと結婚しなければ手に入らない指輪だわ」
「え……」
クロードはこんなものはどこでも手に入るのでは?と思い思わず言葉が口をつく。「だって、私……あなたと結婚するまで見たことがなかったの……四葉のクローバー」
「そ、そう?」自分は探したことがないからわからない。
「ええ、あなたと結婚してから……私、幸せになったもの。今まではそうじゃなかったから……見つけることができなかったのよ」
フォルテナはそう言って愛おしそうにクロードの指を撫でるとクロードがフォルテナを抱き寄せた。


すっかりバッキバキになったクロードの男性器がフォルテナの腹部に当たる……
「……今日はしますか?それとも……我慢する?」
「し、したいが……もし子どもができたら……長い禁欲生活だ」クロードが悩ましい顔をしながら言ったのでフォルテナはクスクス笑った。
「ふふふ…それが明けたとき……さぞ心地よいでしょうね」

フォルテナはうっとりとクロードを見つめるとそう言ったのでクロードはそれを想像してゴクリと喉を鳴らした。
「それも悪くない……」
「はい、子が生まれても二人ずっと一緒に……」
「う、うん!そうだな」

クロードがニッコリ笑ってそう言った時、そよそよと風が吹いてきた。フォルテナもなんだか幸せな心地になり笑う。


「フォルテナ殿幸せか?」
「ふふ…勿論とてもとても幸せでございます」

フォルテナがそう答えた時、床一面のクローバーが嬉しそうに風に揺れた。まるでそれはフォルテナの幸せを一番望む誰かが揺らしたようだった。

フォルテナよ、幸せに。と
しおりを挟む
感想 316

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(316件)

ひのの
2024.02.25 ひのの

完結お疲れ様ですかわいいお話でした♡
ドロドロもあったはずなのになぜか読んでる方も最後までニッコニコのバッキバキでした!!w
お母ちゃんはもうどうしようもないかもだけど義父には幸せになってほしい…

なろう側のアカウント持ってること思い出したのでムーンのほうにもシュッと☆5入れてきました!
フォルテナどの~♡を読み返しながら次回作も楽しみにしてます!

2024.02.25 mokumoku

最後までお付き合いいただきありがとうございます🥹✨なんと嬉しいお言葉😭
私もニッコニコのバッキバキです!
義父は幸せになって欲しいですよね😭
ムーンに☆まで…!😭本当にありがとうございます😭
また次作も楽しんでいただけるように頑張ります🤗✨

解除
まめ
2024.02.25 まめ

完結おめでとうございます!

最後まで二人がふわふわあたたかくて、心から「幸せになってよかったね♥️」と祝福したくなるお話でした。
エッチたっぷりなのに、二人が純粋だからいやらしいというよりエロほほえましいです。
面白かったです。
ありがとうございました!

2024.02.25 mokumoku

最後までお付き合いいただきありがとうございます🥹✨
なんと嬉しいお言葉ばかり……🥹
こちらこそありがとうございました🥹✨✨

解除
もりりん
2024.02.24 もりりん

あああああついに終わってしまったのですね…。私の毎日の楽しみの一つが…。
覚悟はしていたとはいえ、やはり寂しいです。

本当に素敵で可愛くて大好きな作品でした。
義父の真実は、感動しました。
フォルテナとも和解したし、これからは幸せになりますね。

後半は小悪魔なフォルテナとフォルテナに翻弄されるクロードが可愛かったです。

素敵な作品を読ませていただきありがとうございました!

2024.02.24 mokumoku

最後までお付き合いいただきありがとうございます🥹✨
なんと嬉しいお言葉😭
実はこのお話一回ボツになっているんですが…諦めきれず書き直したものになっておりまして…🥹このように言っていただけて本当に書いてよかったです🥹✨✨
後半も楽しんでいただけて本当に嬉しいです🥹私はニッコニコです♡
こちらこそありがとうございました🥹✨✨✨

解除

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

婚約者の番

ありがとうございました。さようなら
恋愛
私の婚約者は、獅子の獣人だ。 大切にされる日々を過ごして、私はある日1番恐れていた事が起こってしまった。 「彼を譲ってくれない?」 とうとう彼の番が現れてしまった。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。